著者
高橋 麻衣子 巌淵 守 河野 俊寛 中邑 賢龍
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.521-533, 2011 (Released:2012-03-09)
参考文献数
35

There are some children with reading difficulties in the regular class. They seem to have some problems in their perceptual or cognitive skills involved with reading process. In this study, we developed the multi-media learning support system “Touch & Read” for assisting their reading process. The system can zoom up the text, highlight the line in it, and read out it to present the information auditorily. Introducing this system to the regular class, we investigated the way of the learning support for the children with reading difficulties. Ahead of the introduction, we conducted the test to survey the children's decoding skills and visuoperceptual functions and identified the causes of reading difficulties. We provided the Touch & Read to children for their learning in the regular class, and observed how the children with reading difficulties used the system. As a result, it was suggested that children could use the system to compensate their perceptual or cognitive skills and achieve more efficient learning outcomes.
著者
福本 理恵 平林 ルミ 中邑 賢龍
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.379-388, 2017-06-01 (Released:2019-08-21)
参考文献数
13
被引用文献数
1

ICT機器の普及はLD児の障害機能の代替を可能にしている。それと同時に法律と社会インフラの整備により,教科書など子どもたちが使用する紙の印刷物をアクセシブルな形でLD児に提供可能になった。これによりLD児の読み書きの負担は低減してきている。しかし,こういった技術発展と制度整備があるにも関わらず,特別支援教育やリハビリテーションは,治療訓練するアプローチが中心でICTを活用した代替に移行できないでいる。治療訓練は子どもによっては大きく効果を上げる場合もあるが全ての子どもに有効な訳ではない。効果のない訓練が学習の遅れをさらに拡大し,それが子どものモチベーションを低下させ,自己効力感を消失させることになる。一方,ICTを早期から導入することでLD児が高等教育に進学する事例が出てきている。ただし,ICT活用にも限界はある。それは,学習に大きな遅れが生じ,学習へのモチベーションを失っている場合は,ICTを導入したところで問題が解決するわけではない。こういった子ども達を学習に戻す事は容易ではなく,別のアプローチが必要となる。本稿では彼らのモチベーションを高め,現状の能力で学べる教材と場所を提供する取り組みを紹介し,今後のLD児への教育に求められる視点を展望した。
著者
平林 ルミ 河野 俊寛 中邑 賢龍
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.275-284, 2010
被引用文献数
1

書字障害の評価は、これまで書字速度と正確さを測度とする方法が中心であり、書字困難の要因を特定するには不十分であった。そこで本研究では、デジタルペンを用いて小学1年生から6年生までの618名に対し、文章の書き写し課題を実施し、書字行動を運動フェーズと停留フェーズに分けて分析した。その結果、運動に関しては、仮名は小学2・3年生間で、漢字は4・5年生間で急激に書字運動速度が増加すること、停留に関しては、仮名は1年から3年にかけて、漢字は4年から5年にかけて停留時間が短くなることが明らかとなった。停留は運動よりも発達変化がゆるやかであり、また仮名と漢字では発達の過程が異なっていた。運動フェーズは視覚運動協応と、停留フェーズは文字の形態分析や音・意味との結びつきと関連していると考えられ、デジタルペンを用いた新たな書字評価の方向性が示された。
著者
熊谷 晋一郎 綾屋 紗月 武長 龍樹 大沼 直紀 中邑 賢龍
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.234-242, 2013-06-30 (Released:2013-12-05)
参考文献数
32
被引用文献数
1

要旨: 本研究では一般大学生を対象に, カルファの聴覚過敏尺度日本語版 (6件法) による質問紙票調査を行い, スコアの平均は16.9点, 標準偏差は11.6点で, 上位5%のカットオフ値はおよそ40点であること, さらに聴覚過敏尺度が 「選択的聴取の困難」 「騒音への過敏と回避」 「情動との交互作用」 の3因子構造を持つことがわかった。また, 聴力異常の既往, 抑うつ症状, 性別, 顔面神経麻痺などよりも, 「不安症状」, 「睡眠障害」, 「頭頸部手術の既往」 の3つの危険因子が有意に聴覚過敏と相関していることが明らかとなった。また重回帰分析の結果, 前2者は各々独立に聴覚過敏と相関していた。このことは, 聴覚過敏を主訴とする患者の診療において, 不安障害や睡眠障害の合併に目を向けることと, 頭頸部手術後のフォローアップにおいて聴覚過敏に目を向けることの重要性を示唆している。
著者
江田 裕介 平林 ルミ 河野 俊寛 中邑 賢龍
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.257-267, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
29
被引用文献数
1

特別支援学校(知的障害)高等部に在籍する軽度障害の生徒201名を対象として、視写書字速度とその正確さを測定した。生徒は漢字の含有率が異なる小学3年生水準と6年生水準の文章を、有意味文と無意味文の条件で3分間ずつ書き写した。生徒の書字数の平均を、課題の (1) 学年要因、(2) 意味要因、および (3) 生徒の性別の3要因で分析した。その結果、3年生水準では有意味文の視写が無意味文の視写より速いが、6年生水準では意味要因による差を生じなかった。生徒の性別では、どの条件でも女子の書字数が男子より多かった。また、同時に調査を実施した障害のない成人の平均書字数を2標準偏差下回った。視写速度と正確さについてエラーを調べたところ、エラーのない生徒の書字速度はエラーのある生徒より遅かった。一方、エラーのある生徒のエラー率は書字速度と負の相関がみられた。文の意味を記憶しながら書く方略が弱く、1文字ずつ転写する傾向があり、特別支援学校生徒には正確だが速度が遅いという特徴が多くみられた。
著者
小野 史典 岡 耕平 巖淵 守 中邑 賢龍 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.119, 2011 (Released:2011-10-02)

我々の感じる時間の長さは様々な要因によって実際よりも長く、もしくは短く感じられる。これまでの研究で朝と夕方で主観的時間の長さが異なることが知られている。しかしこの結果はあくまで実験室で得られたデータであり、実際の生活リズムを反映しているとは言いがたい。そこで本研究では携帯電話で実験できるよう、実験プログラムを組み込んだ専用アプリを開発することで、普段の生活の中で感じる時間の長さを調べた。実験では1時間に1度、アプリが自動で立ち上がり、実験協力者はストップウォッチ課題(3秒経過したと感じたらボタンを押す)を行った。実験の結果、時間帯によって作成時間の長さ(ストップボタンを押すまでの時間)に変動が見られた。特に正午と夕方の時間帯で作成時間が有意に短くなっていた。この結果は実験室で得られた知見とは異なり、我々の感じる時間の長さが食事や仕事などの生活リズムによって変動することが明らかになった。
著者
高橋 麻衣子 川口 英夫 牧 敦 嶺 竜治 平林 ルミ 中邑 賢龍
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 = Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.296-312, 2009-09-01
参考文献数
52
被引用文献数
6

This study proposes a new framework for teaching programs, introducing the practice of “Reciprocal Observation of Thought”, and subsequently examines its effect on fostering children's practice of observing others' thought reciprocally, we used the “Digital Pen” system, an ICT (Information and Communication Technology) system used to share information between all children in a classroom. Using this system, we conducted a five-day program for 35 fourth-graders. In each class, lectures about how to read and write critically were provided first; then, students worked independently on the given questions, presented their ideas to the others, and observed others' work using the Digital Pen system. After the program, it was found that the students who had evaluated others' ideas effectively during the program developed their skills to write essays with more objective and effective arguments, and also to make appropriate counterarguments against others' essay including problems of logical structure. These results were interpreted in terms of the function fo the meta-cognition framework.
著者
中邑 賢龍 坂井 聡 苅田 知則 近藤 武夫 高橋 麻衣子 武長 龍樹 平林 ルミ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、デジタルペンを用いて小学生の読み書きデータを取得し、読み書き速度の標準データを明らかにした。同時に、書字プロセスを時系列的に分析する事で、書き困難を3つのタイプに分類することが出来た。それぞれの困難さに対応した支援技術は即効的であった。支援技術を早期から導入する事で学習の遅れを防ぐ事が出来ると考えられ、その利用を前提にした教育が必要である。
著者
中邑 賢龍
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.33-41, 1997-09-30
被引用文献数
2 2

コミュニケーションの拡大にVOCA(音声出力コミュニケーションエイド)が有効であるとする研究がある。本研究では、VOCAを利用可能な児童・生徒が2つの養護学校にどの程度存在するかを検討した。2つの養護学校に在籍する知的障害及び自閉的傾向を持つ児童・生徒163名(男子98名,女子65名)に対して、言語表出能力、言語理解能力を測定すると同時に、VOCAを用いたコミュニケーション遊びを実施した。その結果、言語表出能力に問題があるが言語理解能力は高く、VOCAを用いることによってコミュニケーションが改善されるであろうと考えられる児童・生徒が21名(12.9%)存在した。また、実用的に利用することは困難であるが、VOCAを用いてコミニュケーション遊びが可能であろうと思われる児童・生徒が4名(2.5%)存在した。さらに、絵画語彙検査で高い得点を示すだけの視覚言語理解が無ければ実用的VOCA利用は困難であることが明らかになった。
著者
中邑 賢龍
出版者
日本生活支援工学会
雑誌
日本生活支援工学会誌 (ISSN:13471724)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.10-16, 2005-03
被引用文献数
1
著者
中邑 賢龍
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.220-226, 1998-05-01
著者
伊福部 達 中邑 賢龍 福島 智 田中 敏明 畑一 一貴
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本課題の目的は、筋・神経系障害(筋萎縮や失語症・発話失行)により発話が困難になった障害者のために、テキスト情報に加えて、リズム、抑揚、笑い、怒りなどのノンバーバル情報を表出できるような実用的な発話支援機器を開発するところにある。平成22年度は、21年度に提案した実施項目に従って遂行し、以下のような成果が得られた。実施項目:昨年度はウェアラブルPCとポインティング・デバイス(P.D)を用いて、音声を生成するパラメータを直接的に指やペンの動きで制御できる「構音障害者の音声生成器」を試作した。本年度は、これを利用して家庭内やリハビリ現場を想定し、生成された連続音声や感情音がどこまで正確に認識され得るのかを評価し、誰もが利用できるようにios上でプログラムをダウンロードできるようにした。評価結果:(a)昨年度の評価結果から、摩擦音(サ行)が出だしにあるような連続音声の認識率が低かったことから、P.D上に摩擦音を出せる領域を設け、音声の認識率と操作性の複雑さの観点からその有用性を評価した。その結果、操作性はそれほど負担にならないこと、全ての連続音声を認識させえることなどを確認した。(b)イントネーションやアクセントも付加できるように、表面圧センサの付いたRDを用いて、筆圧や指の押圧により非言語音を生成できるようにした。その評価から、「急ぎ」、「笑い」、「怒り」などを表わす抑揚を30分程度の訓練で単語に付加できるようになった。以上から、使用頻度の高い音声ほど何かを緊急にリアルタイムで伝えたいときに有用であることを確認した。(c)本インタフェースを同時に、多くのユーザに利用してもらうために、歌を生成できるような「音声楽器」へ拡張するとともに、本プログラムをウェブ上でダウンロードすることによって、スマートフォンにより誰もが利用できるようにできるようにした。
著者
布川 清彦 伊福 部達 井野 秀一 中邑 賢龍 井手口 範男 大河内 直之
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全盲者の白杖利用を対象として対象認知のために必要となる感覚情報を特定し,感覚情報と機器の身体化との関係を明らかにするために,マグニチュード推定法を用いて,利き手で握った白杖を用いた場合のゴムの硬度と硬さ感覚の関係を実験的に明らかにした.これにより白杖ユーザの移動支援のために,1)触覚と聴覚というマルチモーダルな情報提供を行う道具としての白杖に関する基礎的知見と,2)それに対応する環境側のデザインを考察するための手がかりが得られた.