著者
神谷 俊輔 大泉 匡史
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.73-83, 2023-06-05 (Released:2023-07-05)
参考文献数
27

脳はその状態を柔軟に変化させることで様々な機能を果たす.この意味で脳は自らの状態を望みの状態に制御する制御システムとみなすことができる.脳を制御システムとして数理的に解析する上で問題となるのが,脳の高次元性であり,適切に次元を削減したモデルを考えることが肝要となる.高次元ダイナミクスの次元削減法として近年急速に注目を集めている方法の一つに,動的モード分解(Dynamic Mode Decomposition: DMD)と呼ばれる手法がある.この方法は,高次元時系列データから,その時空間的振る舞いのモードを取り出す方法であり,制御システムへの応用も可能である.本稿ではDMDと関連する話題を簡単に紹介した後,DMDを制御システムに応用したDMD with control(DMDc)について触れ,最後に神経科学におけるDMDの活用についてレビューする.
著者
大泉 匡史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.460-467, 2018-07-01 (Released:2020-09-29)
被引用文献数
1
著者
大泉 匡史 小村 豊 笹井 俊太朗
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

左脳と右脳をつなぐ脳梁がてんかんの治療のために切断された脳は「分離脳」と呼ばれ、患者はあたかも左脳と右脳に2つの独立した意識が生じているかのような行動をとる。分離脳を理解することは、我々がなぜ左脳と右脳とで統合された1つの意識を持ち得るのかということを理解する上で重要である。本研究では、この分離脳の神経メカニズムの理解を目標として、サルのECoGデータの記録及び、神経活動データから神経ネットワークの構造を抽出するアルゴリズムの開発を行った。このアルゴリズムは情報の統合が最大となるサブネットワークを効率的に探索することが可能で、これによって脳活動からネットワークの分離を判定することが可能となる。
著者
大泉 匡史
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経ネットワークにおける情報の統合を測る指標である、「統合情報量」を情報理論、情報幾何学の枠組みから新たに導出した。これまで提案されてきた統合情報量の指標は、いくつかの数学的な問題点を抱えていたが、本研究において導出した新しい指標はそれらの問題点を解決したことになる。また、神経ネットワークの解析などで良く使われる、移動エントロピーやGranger因果性などの因果性を測る指標と統合情報量との関係性が明らかになり、統合情報量の直観的な理解が進んだ。提案した新しい指標をヒトのfMRIデータに適用し、意味のない刺激を見ている時は、意味のない刺激を見ている時に比べて統合情報量が低くなることを示した。