- 著者
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呉 繁夫
大浦 敏博
鈴木 洋一
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
グリシン脳症は、グリシン解裂酵素系の遺伝的欠損により引き起こされる先天代謝異常症の一つで、体液中グリシンの蓄積を特徴とする。本症には、新生児期にけいれん重積や昏睡などの症状を示す古典型と乳児期以降に精神発達遅滞、行動異常、熱性けいれんなどを主な症状とする軽症型が存在する。本研究では、軽症型グリシン脳症モデルマウスを用い、治療法の開発を行った。軽症型モデルマウスは、野生型であるC57BLマウスと比べ、多動、攻撃性の亢進、不安様行動の増加、及び易けいれん性の亢進などの行動の異常を示す。本研究では、多動と易けいれん性を指標として有効な薬物を検索した。薬物としては、抑制性グリシン受容体のアンタゴニストとNMDA型グルタミン酸受容体のグリシン結合部位のアンタゴニストの2種類を検討した。これは、グリシンは、中枢神経系で大きく分けて2種類の神経伝達に関わっていおり、一つは、抑制性グリシン受容体を介した神経伝達で、もう一つは、NMDA型グルタミン酸型受容体のグリシン結合部位を介したこの受容体の興奮調節である事に基づいている。これらの薬剤をモデルマウスに腹腔内投与し、多動の改善を検討した。その結果、NMDA受容体のアンタゴニストでは、野生型の行動量を変化させない薬量で、増加していた行動量を正常化した。次に、けいれん抑制効果を電気ショックを与えた後の誘発されるけいれんの長さを指標に検索した。その結果、モデルマウスで延長していたけいれん持続時間が治療で正常化していた。この結果は、NMDA受容体のグリシン結合部位のアンタゴニストがグリシン脳症の治療に応用可能であることを示している。