著者
谷川 久一 瀬田 勝雄 町井 彰 伊藤 進
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.414-419, 1961-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11

28才女子例.数カ月にわたりノリを1~2帖毎日食べていたところ,重症の柑皮症となつた.血清ビリルビンその他の肝機能は正常なるも,血清カロチン448γ/dlと上昇し,ノリ中に含まれるカロチンによる柑皮症と診断す.柑皮症の発来は,カロチンを含む食品の多食といつた外因のみならず,個体側の内因も重要と考える.多汗体質,甲状腺機能低下などは,同症の発来を助けるもので,同患者にも自律神経失調によると思われる多汗体質および甲状腺機能低下おあつたのは興味深い.本症の皮膚黄染のメカニズムは,組織学的検討から,いつたん汗とともに出たカロチンが外から体表を染めるものと思われる.肝生検によりカロチンと同定し得た顆粒が肝細胞内,特にその周辺部に多くみられ,電子顕微鏡でみるとこの顆粒は滑面小胞体とゴルジー体と形態学上密接に関連していると思われる所見であつた.
著者
伊藤 進一郎 窪野 高徳 佐橋 憲生 山田 利博
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.170-175, 1998-08-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
31
被引用文献数
8

1980年以降,日本海側の各地において,ナラ類(コナラとミズナラ)の集団的な枯死が発生して問題となっている。枯死木には,例外なくカシノナガキクイムシの穿入が認められるのが共通した現象である。このナガキクイムシは,一般的には衰弱木や枯死木に加害するとされており,枯死原因は現在まだ明らかでない。この被害に菌類が関与している可能性を検討するため,野外での菌害調査と被害木から病原微生物の分離試験を行った。被害発生地における調査では,枯死木の樹皮上にCryphonectoria sp.の子実体が多数形成されているのが観察された。しかしながら,日本海側の6県にわたる調査地に共通する他の病害,例えばならたけ病や葉枯•枝枯性病害の発生は観察されなかった。そこで,枯死木やカシノナガキクイムシが穿入している被害木から病原微生物の分離試験を行った。その結果,変色材部,壊死した内樹皮,孔道壁から褐色の未同定菌(ナラ菌と仮称)が高率で分離されることが明らかとなった。この菌は,各地の被害地から採集した枯死木からも優占的に分離されることがわかった。また本菌は,カシノナガキクイムシ幼虫,成虫体表や雌成虫の胞子貯蔵器官からも分離された。分離菌を用いたミズナラに対する接種試験の結果,ナラ菌の接種において枯死したのに対し,他の処理では枯死は認められなかった。これらの結果から,この未同定菌は,ナラ類集団枯損被害に深く関与しているものと判断した。本菌は,母細胞に形成された孔口から出芽的(Blastic)に形成されるポロ(Polo)型分生子を持つことがわかったが,現在その所属については検討中である。

2 0 0 0 OA 小児脳波

著者
伊藤 進 小国 弘量
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.378-386, 2014-12-01 (Released:2016-02-25)
参考文献数
14

小児の脳波検査においては, 体動や啼泣などのアーチファクトが混入しやすく, 電極の装着や維持が困難であることも多々あるが, 十分な検査時間の確保と検査方法の工夫とにより, アーチファクトの混じらない睡眠期のみの“きれい”な脳波よりも, 覚醒期と睡眠期の両者を含む“十分”な脳波を記録することが重要である。また, 乳児期から幼児期, 小児期になるにつれ, 覚醒期の基礎律動や睡眠期の生理的な睡眠波が大幅に変化していくため, 各年齢における正常な脳波所見を理解する必要がある。さらに, 小児てんかんにおいては, てんかん症候群 (脳波・臨床症候群) が大きな割合を占めるため, ウエスト症候群, 早発良性小児後頭葉てんかん (パナイオトポロス) 症候群, 中心側頭部棘波を示す良性てんかん, レノックス・ガストー症候群, 小児欠神てんかん, 若年ミオクロニーてんかんなど, 代表的なてんかん症候群に特徴的な脳波所見を熟知しておくことも重要である。
著者
伊藤 進一郎 福田 健二 中島 千晴 松田 陽介
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1980年以降、日本ではブナ科樹木に萎凋枯死が発生し、被害は拡大している。この被害は、カシノナガキクイムシが伝搬するRaffaelea quercivoraによって発生することが明らかとなった。本研究では、アジア地域でカシノナガキクイムシ科昆虫に随伴するRaffaelea 属菌を調べ、それらの病原性を明らかにすることを目的とした。その結果、タイ、ベトナム、台湾で採集したカシノナガキクイムシ科昆虫からはRaffaelea属菌類が検出された。それらの菌類は、ミズナラに対して親和性があること、またタイの1菌株がミズナラに対して病原性を示すことが明らかとなった。
著者
小林 正秀 伊藤 進一郎 野崎 愛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.60, 2003 (Released:2003-03-31)

カシノナガキクイムシ(以下カシナガ)の穿入に伴うナラ類集団枯死被害について、カシナガの天敵に関する報告はほとんどない。筆者らは、カシナガが繁殖に失敗している坑道内で、ある種の線虫が増殖していることを発見した。そこで、この線虫がカシナガの密度抑制要因、つまり天敵である可能性を明らかにするための予備実験を行った。被害発生年度が異なる4林分で、健全木、穿入生存木、穿入枯死木から線虫を分離したところ、被害発生初期の林分からは線虫がほとんど分離できなかった。また、有意差はなかったが、健全木と穿入生存木からの線虫の分離数は少なく、穿入枯死木からの分離数が多かった。この線虫は、カシナガ生存成虫から分離できたが、死亡個体や他のキクイムシからは分離できなかった。また、カシナガ成虫を解剖したところ、線虫は鞘翅裏側に存在することが判った。線虫はカシナガ孔道内から分離した酵母でよく増殖した。線虫のカシナガ繁殖に及ぼす影響を調べるため、増殖させた線虫を穿入枯死木と健全木に接種した。その結果、枯死木からは再分離されたが健全木からは再分離されなかった。また、再分離数が多かった木ではカシナガの死亡率が高い傾向が見られた。以上のことから、この線虫はカシナガと共に移動し、カシナガが繁殖した坑道内で、カシナガの餌と考えられる酵母を搾取して間接的にカシナガの密度を低下させることが示唆された。
著者
武内 重五郎 奥平 雅彦 高田 昭 太田 康幸 藤沢 洌 伊藤 進 辻井 正 蓮村 靖
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2178-2185, 1979-11-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
20

わが国の肝疾患の病態の特徴を反映し,臨床的に広く使用できるようなアルコール性肝疾患(脂肪肝,肝炎,肝硬変,および肝障害)の診断基準案を提示した.次いで,近年のわが国におけるアルコール性肝疾患の実態を把握する目的で,1968年から1977年までの10年間を調査対象に,この基準に合致した症例を全国の病院内科94施設からアンケート方式によつて集め解析した.その結果,肝疾患による入院患者のすべての症例のうち,アルコール性肝疾患症例の占める割合が1968年の5.1%から1977年10.7%へと直線的に有意に増加したこと,さらに肝硬変の入院症例のうちアルコール性肝硬変の占める割合も有意な増加をみた結果,1977年には16.9%であつたことが判明した.この成績は,わが国でもアルコールに起因した肝疾患に充分注目する必要があることを示している.
著者
松田 陽介 伊藤 由佳 伊藤 進一郎
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.165-173, 2010-10-31 (Released:2020-11-04)
参考文献数
23

コナラの葉内に生息する内生菌の伝播・感染様式を明らかにするため,展葉段階と展葉期の異なる葉から内生菌の分離を行った.2007年4月の一次展葉期の展葉状態を5段階に大別し,段階別に内生菌相とその分離率を調べた.さらに,2008年4月の一次展葉期,6月と8月の二次,三次展葉期の葉から検出された内生菌相やその分離率も同様に調べた.その結果,一次展葉期では2007年に10タイプ,2008年に15タイプの内生菌タイプが得られ,2008年の二次,三次展葉期ではそれぞれ11,13タイプの内生菌タイプが得られた.得られた内生菌のうちDiscula sp.の分離率は最も高く,一次展葉期の葉身拡大時に増加したが,二次,三次展葉期の新葉では減少傾向を示した.二次,三次展葉期ではPhomopsis sp.が増加傾向を示した.これらの結果から,Discula sp.は胞子により一次展葉期に感染を行い,葉内で優占するものと考えられた.また,二次,三次展葉期の新葉では,Discula sp.の胞子飛散量が減少したためか,Phomopsis sp.の感染が増加する可能性が示された.
著者
伊藤 進 黒岩 ルビー 浅川 奈緒子 本田 香織 森 祐子 林 優子
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.42-51, 2018-06-30 (Released:2018-06-29)
参考文献数
7

乳児期発症難治性てんかんにおける保育所就園及び保護者就業についての実態を明確とするため、ドラベ(Dravet)症候群及びウエスト(West)症候群の患者家族会は共同で実態調査を実施した。ドラベ症候群患者120名中70名(58.3%)及びウエスト症候群患者244名中136名(55.7%)よりウェブアンケートを回収した。保育所就園率は5歳以下児各25.0%及び36.8%(医療的ケア児0%、本邦乳幼児42.4%)であり、入通園制限は各66.7%及び19.6%にあった。抗てんかん薬の定時内服は各10.5%及び19.6%、発作時坐剤頓用は各36.8%及び16.7%で対応不可であった。通園中のてんかん発作は各85.0%及び44.0%、重積発作は各20.0%及び4.5%にあった。保護者就業率は、母親が各20.8%及び26.4%(本邦母親47.3~61.2%)、父親が各98.0%及び95.2%であった。難治性てんかんのある乳幼児においては、保育所の就園は低率、入通園制限は高率であり、その保護者、特に母親の就業率は低率であった。
著者
伊藤 進一郎 山田 利博
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.229-232, 1998-08-16
参考文献数
9
被引用文献数
14
著者
伊藤 進
出版者
京都産業大学マネジメント研究会
雑誌
京都マネジメント・レビュー (ISSN:13475304)
巻号頁・発行日
no.20, pp.17-33, 2012-03

Ⅰ.序言Ⅱ.リコールか自主改修か 1.リコールの経緯 2.リコールか自主改修かⅢ.リコール発生原因 1.品質評価の甘さ・気の緩み 2.設計・開発期間の短縮化と開発担当者への負荷の増大 3.車の複雑化・技術の高度化と総合的品質診断・評価力の低下 4.規模急拡大と人員不足,人材育成不足 Ⅳ.リコール大量化の背景 1.設計での不具合 2.部品共通化 3.生産開始からリコール届出までの期間Ⅴ.安全・品質改善への取り組み 1.安全・品質優先の車づくり 2.品質改善体制の強化と安全面での改善・取り組みⅥ.リコール対応の遅れ・まずさと対応改善 1.消費者対応の遅れ・まずさと販売台数減 2.リコールへの対応改善Ⅶ.結語
著者
鳥居 正人 松下 知世 松田 陽介 伊藤 進一郎
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.119-122, 2012-07-31

ブナ科樹木の萎凋病菌Raffaelea quercivoraに対する外国産コナラ属樹種の感受性を明らかにするため,Quercus palustris, Q. robur, Q. rubra,日本産アラカシの各種苗木に対して,多点・1点接種を行った.その結果,多点接種における対照,無処理木では枯死が確認されなかったが,接種木ではQ. rubraのみで枯死が確認され,その枯死率は42%であった.また,枯死率は樹種間で有意に異なった.1点接種の接種木においてQ. rubraの接種部横断面における変色域の割合は,アラカシのものに比べ,有意に高かった.以上の結果から,R. quercivoraは外国産のQ. rubraに対して病原性を有することが明らかとなった.
著者
鳥居 正人 松下 知世 松田 陽介 伊藤 進一郎 Masato Torii Tomoyo Matsushita Yosuke Matsuda Shin-ichiro Ito 三重大学大学院生物資源学研究科 三重大学生物資源学部 三重大学大学院生物資源学研究科 三重大学大学院生物資源学研究科 Graduate School of Bioresources Mie University Faculty of Bioresources Mie University Graduate School of Bioresources Mie University Graduate School of Bioresources Mie University
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.119-122, 2012-07-31

ブナ科樹木の萎凋病菌Raffaelea quercivoraに対する外国産コナラ属樹種の感受性を明らかにするため,Quercus palustris, Q. robur, Q. rubra,日本産アラカシの各種苗木に対して,多点・1点接種を行った.その結果,多点接種における対照,無処理木では枯死が確認されなかったが,接種木ではQ. rubraのみで枯死が確認され,その枯死率は42%であった.また,枯死率は樹種間で有意に異なった.1点接種の接種木においてQ. rubraの接種部横断面における変色域の割合は,アラカシのものに比べ,有意に高かった.以上の結果から,R. quercivoraは外国産のQ. rubraに対して病原性を有することが明らかとなった.