著者
日本環境感染症学会ワクチンに関するガイドライン改訂委員会 岡部 信彦 荒川 創一 岩田 敏 庵原 俊昭 白石 正 多屋 馨子 藤本 卓司 三鴨 廣繁 安岡 彰
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Supplement_III, pp.S1-S14, 2014 (Released:2014-12-05)
参考文献数
50
被引用文献数
2 4

第2版改訂にあたって   日本環境感染学会では、医療機関における院内感染対策の一環として行う医療関係者への予防接種について「院内感染対策としてのワクチンガイドライン(以下、ガイドライン第1版)」を作成し2009年5月に公表した。   その後医療機関内での感染症予防の手段としての予防接種の重要性に関する認識は高まり、医療関係者を対象としてワクチン接種を行う、あるいはワクチン接種を求める医療機関は増加しており、結果としてワクチンが実施されている疾患の医療機関におけるアウトブレイクは著しく減少している。それに伴いガイドライン第1版の利用度はかなり高まっており、大変ありがたいことだと考えている。一方、その内容については、必ずしも現場の実情にそぐわないというご意見、あるいは実施に当たって誤解が生じやすい部分があるなどのご意見も頂いている。そこで、ガイドライン発行から4年近くを経ていることもあり、また我が国では予防接種を取り巻く環境に大きな変化があり予防接種法も2013年4月に改正されるなどしているところから、日本環境感染学会ではガイドライン改訂委員会を再構成し、改訂作業に取り組んだ。   医療関係者は自分自身が感染症から身を守るとともに、自分自身が院内感染の運び屋になってしまってはいけないので、一般の人々よりもさらに感染症予防に積極的である必要があり、また感染症による欠勤等による医療機関の機能低下も防ぐ必要がある。しかし予防接種の実際にあたっては現場での戸惑いは多いところから、医療機関において院内感染対策の一環として行う医療関係者への予防接種についてのガイドラインを日本環境感染学会として策定したものである。この大きな目的は今回の改訂にあたっても変化はないが、医療機関における予防接種のガイドラインは、個人個人への厳格な予防(individual protection)を目的として定めたものではなく、医療機関という集団での免疫度を高める(mass protection)ことが基本的な概念であることを、改訂にあたって再確認をした。すなわち、ごく少数に起こり得る個々の課題までもの解決を求めたものではなく、その場合は個別の対応になるという考え方である。また、ガイドラインとは唯一絶対の方法を示したものではなく、あくまで標準的な方法を提示するものであり、出来るだけ本ガイドラインに沿って実施されることが望まれるものであるが、それぞれの考え方による別の方法を排除するものでは当然ないことも再確認した。   その他にも、基本的には以下のような考え方は重要であることが再確認された。 ・対象となる医療関係者とは、ガイドラインでは、事務職・医療職・学生・ボランティア・委託業者(清掃員その他)を含めて受診患者と接触する可能性のある常勤・非常勤・派遣・アルバイト・実習生・指導教官等のすべてを含む。 ・医療関係者への予防接種は、自らの感染予防と他者ことに受診者や入院者への感染源とならないためのものであり、積極的に行うべきものではあるが、強制力を伴うようなものであってはならない。あくまでそれぞれの医療関係者がその必要性と重要性を理解した上での任意の接種である。 ・有害事象に対して特に注意を払う必要がある。不測の事態を出来るだけ避けるためには、既往歴、現病歴、家族歴などを含む問診の充実および接種前の健康状態確認のための診察、そして接種後の健康状態への注意が必要である。また予防接種を行うところでは、最低限の救急医療物品をそなえておく必要がある。なお万が一の重症副反応が発生した際には、定期接種ではないため国による救済の対象にはならないが、予防接種後副反応報告の厚生労働省への提出と、一般の医薬品による副作用発生時と同様、独立行政法人医薬品医療機器総合機構における審査制度に基づいた健康被害救済が適応される。   * 定期接種、任意接種にかかわらず、副反応と思われる重大な事象(ワクチンとの因果関係が必ずしも明確でない場合、いわゆる有害事象を含む)に遭遇した場合の届け出方法等:http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp250330-1.html ・費用負担に関しては、このガイドラインに明記すべき性格のものではなく、個々の医療機関の判断に任されるものではある。 ・新規採用などにあたっては、すでに予防接種を済ませてから就業させるようにすべきである。学生・実習生等の受入に当たっては、予め免疫を獲得しておくよう勧奨すべきである。また業務委託の業者に対しては、ことにB型肝炎などについては業務に当たる従事者に対してワクチン接種をするよう契約書類の中で明記するなどして、接種の徹底をはかることが望まれる。(以下略)
著者
杢野 恵理子 諸角 美由紀 生方 公子 田島 剛 岩田 敏
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.887-898, 2018-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
57
被引用文献数
2

肺炎球菌結合型ワクチン (PCV) の世界的な普及は肺炎球菌感染症への劇的効果とともに肺炎球菌自体の変化をもたらした. 肺炎球菌は急性中耳炎 (AOM) の主な起炎菌の1つであり, その動向は AOM 診療にも影響を及ぼす. われわれは, PCV 普及後の AOM の現状を明らかにするため, 2016年7月から全国調査を実施し, 小児 AOM 患者529例 (PCV 接種率97%) を対象に起炎菌, 肺炎球菌血清型, 患者背景等について検討を行った. 検出された菌はインフルエンザ菌が57%と過半数を占め, 次いで肺炎球菌26%, 黄色ブドウ球菌8%, A 群溶血性レンサ球菌3%, モラクセラ・カタラーリス1%であった. 肺炎球菌の血清型は15A 型15%, 35B 型12%, 3型11%の順に多く, 13価 PCV に含まれる血清型の割合は16%と低かった. 患者背景は2歳未満が61%を占め, 重症例81%, 反復・遷延例45%, 保育園児72%, 鼻副鼻腔炎合併例55%と AOM 難治化の危険因子が高率に認められた. ガイドライン推奨抗菌薬が97%の症例に使用され, そのうち67%が一次治療薬で治癒していた. PCV 普及後, 小児 AOM の起炎菌はインフルエンザ菌が優勢となったが, 患者背景や治療効果に明らかな変化は認められなかった. 今後の AOM 診療は, インフルエンザ菌の検出頻度増加を念頭におきながら, 引き続き患者背景や起炎菌の薬剤感受性を考慮した治療選択を行うことが重要と考える.
著者
岩田 敏也
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.552, pp.295-302, 2002-02-28 (Released:2017-02-04)
参考文献数
22

The aim of this research is to clarify the characteristic of the design and construction of beam svstetn in the main halls of the Esoteric Buddhist temple in TOKAl district in the Edo period. The conclusions are as follows. 1) There are some common distinctions of the beam svstem in "Gejin" (the outer chamber) of the Buddhist halls in this district in the Edo period, by which these Buddhist halls can be classified. 2) Some Buddhist halls adopted the Rainbow-beam of 3-pillar spans in the lengthwise direction of it, especially in the eastern part of MIKAWA and TOTOUMl areas. 3) These beam systems has developed still more in the Edo period, inheriting technical skills from the Medieval period. It has become more comnlicated with gigantic beams, in structure.
著者
岩田 敏彰
出版者
一般社団法人 日本写真測量学会
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.292-295, 2019 (Released:2021-01-01)
参考文献数
2

This paper introduces Landsat-8/ASTER/Sentinel-2 unified data global graphic user interface (GUI) developed by AIST. Users can freely browse, search, and download each band and true color image of global Landsat-8 data, global ASTER data, and true color image of global Sentinel-2 data.
著者
新庄 正宜 岩田 敏 佐藤 吉壮 秋田 博伸 砂川 慶介
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.582-591, 2012-09-20 (Released:2013-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
11 14

2009 年1 月から2010 年12 月までの2 年間に全国95 施設から小児細菌性髄炎314 症例(男児186,女児124,性別未報告4 例)が報告された.年齢別では0 歳児が51.2%(161/314)と半数を占めた.原因菌として,Haemophilus influenzae(1 カ月~5 歳)が53.2%(167/314)と最も多く,次いでStreptococcus pneumoniae (1 カ月~12 歳)が24.2%(76/314),Streptococcus agalactiae(4 カ月以下のみ),Escherichia coli(3 カ月以下のみ)と続いた.耐性菌の率は,H. influenzae で50.1%(78/153),S. pneumoniae で63.0%(46/73)であった.初期治療薬は,4 カ月未満ではampicillin(ABPC)+セフェム系薬ならびにカルバペネム系薬+その他のβ ラクタム系薬の2 剤を併用した症例が77.8%(42/54)と多く,4 カ月以降ではカルバペネム系薬+その他のβ ラクタム系薬の併用が76.4%(198/259)を占めた.最終治療薬としては,H. influenzae でcefotaxime(CTX)もしくはceftriaxone(CTRX),S. pneumoniae でカルバペネム系薬の単剤が最も多かった.致死率は2.0%(6/305)であった.インフルエンザ菌b 型ワクチン(以下,Hib ワクチン)を接種したのは 5 名のみで,いずれもH. influenzae 髄膜炎以外の髄膜炎を発症した.7 価肺炎球菌結合型ワクチン(以下, PCV7)の接種者はいなかった.Hib ワクチン,PCV7 の普及していない現時点では,小児細菌性髄膜炎の特徴に,ここ数年間大きな変化はなかった.
著者
岡田 隆文 松原 啓太 松島 崇浩 込山 修 濱野(長谷川) 恵子 諸角 美由紀 千葉 菜穂子 生方 公子 砂川 慶介 岩田 敏
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-47, 2010-01-20 (Released:2017-08-16)
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

2004 年7 月1 日から2005 年12 月31 日の間に,独立行政法人国立病院機構東京医療センター小児科を受診し,肺炎と診断された720 症例を対象とした.それらの症例から採取された上咽頭拭い液から,real time PCR 法でrespiratory syncytial virus(RSV)は75 例(10.4%),human metapneumovirus(hMPV)は19例(2.6%)検出された.RSV は11 月から1 月にかけて,hMPV は3 月から6 月にかけて多く検出された.平均年齢および標準偏差はRSV が1.3±1.4 歳,hMPV が3.0±3.1 歳で,両ウイルスの平均罹患年齢に有意差を認めた(p<0.05).臨床所見上,RSV 陽性例では鼻汁と喘鳴を来たす症例,hMPV 陽性例では高体温と喘鳴が遷延する症例が多く,両ウイルス間で有意差を認めた.発熱,咳嗽,嘔吐と下痢,有熱期間,初診時のCRP 値では,両ウイルス間に有意差を認めなかった.合併症の発生率はRSV 陽性例で49.3%,hMPV 陽性例で42.1%であった.RSV では急性中耳炎(32.0%),hMPV では熱性痙攣(15.8%)が多い傾向であった.以上の成績は,RSV あるいはhMPV に起因する小児市中肺炎例の鑑別診断上,有益な情報となり得ると考えられる.
著者
海野 隆哉 大植 英亮 岩田 敏雄 村上 生而 武田 寿一 入沢 賢一
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, 1984-03-15

橋梁のスパンの長大化などにより, 基礎構造も大規模なものが要求されてきている。ケーソン基礎を用いる場合が多くなっているが, その欠点を補うため, 地下連続壁井筒が開発されてきている。地下連続壁井筒は継手に不安があったが, ここでは, 鋼製函型継手の実験による信頼度と地下連続井筒について, そして設計と施工の紹介をしている。掘削の精度の進歩, 鉛直継手の試験項目, 載荷方法またその継手の, 総曲げ, 曲げせん断, せん断などの試験の結果を示している。次に, 地下連続壁井筒について, これは東北新幹線福島市内での工事例について述べている。設計の基本的な考え方について示し, 設計計質の結果を示している。そして配筋についても述べている。次に施工について, 施工順序を図に示し, 掘削については, 写真を用いて示している。掘削機としては, ロッド式クラムシェルバケット掘削機を用いている。鉄筋かごは, 基礎形からL形になっている。その組立て, 建込みについて述べ, 最後にコンクリートの打設について述べている。工期も短縮できるとしている。
著者
砂川 慶介 生方 公子 千葉 菜穂子 長谷川 恵子 野々山 勝人 岩田 敏 秋田 博伸 佐藤 吉壮
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.187-197, 2008-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
11 10

2005年1月から2006年12月迄の2年間に96施設から小児細菌性髄膜炎246症例 (男児138, 女児108) が報告された.年齢別では28日以下が25例, 1カ月~12カ月が114例, 1歳以上は107例であった.原因菌はH.influenzaeが136例と最も多く, 次いでS.pneumoniae 48例, streptococcus agalactiae (GBS) 19例, Escherichia coli6例の順で, GBS, E.coliは低年齢での発症が多く, H.influenzaeは多くは4カ月~5歳に分布していた.S.pneumoniaeは3カ月~12歳に分布していた.H.influenzae, S.pneumoniaeともに耐性化が進み, H.influenzaeは2003年に70.4%, S.pneumoniaeは2004年に83.0%と耐性株が高い割合を占めていたが, 今回の調査では, H.influenzaeは2005年65.2%, 2006年59.3%, S.pneumoniaeは2005年71%, 2006年69.3%と若干減少の方向を示した.細菌性髄膜炎の初期治療に使用した抗菌薬の種類は, 4カ月未満では, 従来の標準的治療法とされているAmpicillin+セフェムならびにカルバペネム+β-lactamの2剤を併用した症例が多く, H.influenzaeやS.pneumoniaeが原因細菌として多くなる4カ月以降に関しては, 耐性菌を考慮したカルバペネム+セフェムの併用が増加し, ampicillin+セフェムをはるかに上回る使用頻度であった.
著者
岩田 敏
出版者
ヴァン メディカル
巻号頁・発行日
pp.9-16, 2021-03-10

新型コロナウイルスワクチンのうちファイザー社/ビオンテック社,モデルナ社,アストラゼネカ社,ジョンソン&ジョンソン社/ヤンセン社などのワクチンは既に海外で承認され,国内にも導入あるいは導入されようとしている。接種に当たっては,被接種者との十分なリスクコミュニケーションをとり,各施設や地域では安全・円滑に接種できる体制を確保した上で,適切な方法で筋肉内に接種する必要がある。いずれのワクチンも長期的な有効性・安全性については明らかでないことから,注意深いフォローアップが必要である。
著者
岩田 敏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2009-01-15

Virusはラテン語で「毒」を意味する言葉である.医療倫理の根幹を成す患者の生命・健康保護の思想,患者のプライバシー保護,専門家としての尊厳の保持などを謳った「ヒポクラテスの誓い」で有名なヒポクラテスは,病気を引き起こす「毒」という意味でこの言葉を使ったとされている.日本では最初,日本細菌学会によって「病毒」と呼ばれていたが,1953年に日本ウイルス学会が設立され,本来のラテン語発音に近い「ウイルス」という表記が採用された.感染症の発症に細菌以外の病原体が関与していることを最初に示したのはロシアのディミトリ・イワノフスキーで,彼は1892年にタバコモザイク病の病原が細菌濾過器を通過しても感染性を失わないことを発見し,それが細菌よりも微小な,顕微鏡では観察できない存在であることを示した.その後1935年にアメリカのウェンデル・スタンレーがこのタバコモザイク病の病原であるタバコモザイクウイルスの結晶化に成功し,この結晶が感染能を持っていることを示した.こうした発見や研究に端を発し,ウイルスに関する様々な研究が進められてきた訳である. ウイルスは,他の生物の細胞を利用して,自己を複製させることのできる微小な構造体で,蛋白質の殻とその内部に詰め込まれた核酸から成っており,細胞をもたないことから,生物学上は非細胞性生物または非生物として位置づけられている.ウイルスは持っている核酸の違いから,大きくDNAウイルスとRNAウイルスに分けられる.ウイルスはそれ自身単独では増殖できず,他の生物の細胞内に感染して初めて増殖可能となる.また,他の生物の細胞が2分裂によって対数的に数を増やすのに対し(対数増殖),ウイルスは1つの粒子が感染した宿主細胞内で一気に数を増やして放出される(一段階増殖).ウイルスの増殖は通常,ウイルスの細胞表面への吸着→細胞内への侵入→脱殻(だっかく)→部品の合成→部品の集合→感染細胞からの放出,というようなステップで行われる.ウイルスの細胞表面への吸着は細胞表面のレセプターを介して行われ,インフルエンザウイルスが気道上皮に高い親和性を持つのは,気道上皮細胞のシアル酸糖鎖がインフルエンザウイルスのレセプターとなっているからである.
著者
守殿 貞夫 松島 敏春 岡本 了一 青木 信樹 小田切 繁樹 荒川 創一 相川 直樹 岩田 敏 坂巻 弘之 石田 直文 池田 俊也 矢島 秀一 池上 直己 森 和彦 紺野 昌俊
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.517-553, 2002-08-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
28

過去5年間に当院で入院治療を行った市中肺炎, 院内肺炎の経験をふまえて, 呼吸器感染症 (肺炎) に対する抗菌薬治験の進め方について発表し, 以下の結論を得た。80歳以上の高齢者および重症感染症に対する抗菌薬の治験はまったく実施されていないといえるが, もっとも抗菌薬が必要とされる対象であり, 有効性安全性の検討が第III相までにある程度なされるべきであろう。市中肺炎のみの臨床治験の実施で薬剤が製造承認され, 院内肺炎に対して使用されている。院内肺炎に対する臨床治験も今後必要となろう。内服βラクタム薬の投与量は体内動態, ブレイクポイントMICなどを考慮し再考を要する。
著者
日本環境感染症学会ワクチンに関するガイドライン改訂委員会 岡部 信彦 荒川 創一 岩田 敏 庵原 俊昭 白石 正 多屋 馨子 藤本 卓司 三鴨 廣繁 安岡 彰
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.S1-S14, 2014
被引用文献数
4

第2版改訂にあたって<br>   日本環境感染学会では、医療機関における院内感染対策の一環として行う医療関係者への予防接種について「院内感染対策としてのワクチンガイドライン(以下、ガイドライン第1版)」を作成し2009年5月に公表した。<br>   その後医療機関内での感染症予防の手段としての予防接種の重要性に関する認識は高まり、医療関係者を対象としてワクチン接種を行う、あるいはワクチン接種を求める医療機関は増加しており、結果としてワクチンが実施されている疾患の医療機関におけるアウトブレイクは著しく減少している。それに伴いガイドライン第1版の利用度はかなり高まっており、大変ありがたいことだと考えている。一方、その内容については、必ずしも現場の実情にそぐわないというご意見、あるいは実施に当たって誤解が生じやすい部分があるなどのご意見も頂いている。そこで、ガイドライン発行から4年近くを経ていることもあり、また我が国では予防接種を取り巻く環境に大きな変化があり予防接種法も2013年4月に改正されるなどしているところから、日本環境感染学会ではガイドライン改訂委員会を再構成し、改訂作業に取り組んだ。<br>   医療関係者は自分自身が感染症から身を守るとともに、自分自身が院内感染の運び屋になってしまってはいけないので、一般の人々よりもさらに感染症予防に積極的である必要があり、また感染症による欠勤等による医療機関の機能低下も防ぐ必要がある。しかし予防接種の実際にあたっては現場での戸惑いは多いところから、医療機関において院内感染対策の一環として行う医療関係者への予防接種についてのガイドラインを日本環境感染学会として策定したものである。この大きな目的は今回の改訂にあたっても変化はないが、医療機関における予防接種のガイドラインは、個人個人への厳格な予防(individual protection)を目的として定めたものではなく、医療機関という集団での免疫度を高める(mass protection)ことが基本的な概念であることを、改訂にあたって再確認をした。すなわち、ごく少数に起こり得る個々の課題までもの解決を求めたものではなく、その場合は個別の対応になるという考え方である。また、ガイドラインとは唯一絶対の方法を示したものではなく、あくまで標準的な方法を提示するものであり、出来るだけ本ガイドラインに沿って実施されることが望まれるものであるが、それぞれの考え方による別の方法を排除するものでは当然ないことも再確認した。<br>   その他にも、基本的には以下のような考え方は重要であることが再確認された。<br> ・対象となる医療関係者とは、ガイドラインでは、事務職・医療職・学生・ボランティア・委託業者(清掃員その他)を含めて受診患者と接触する可能性のある常勤・非常勤・派遣・アルバイト・実習生・指導教官等のすべてを含む。<br> ・医療関係者への予防接種は、自らの感染予防と他者ことに受診者や入院者への感染源とならないためのものであり、積極的に行うべきものではあるが、強制力を伴うようなものであってはならない。あくまでそれぞれの医療関係者がその必要性と重要性を理解した上での任意の接種である。<br> ・有害事象に対して特に注意を払う必要がある。不測の事態を出来るだけ避けるためには、既往歴、現病歴、家族歴などを含む問診の充実および接種前の健康状態確認のための診察、そして接種後の健康状態への注意が必要である。また予防接種を行うところでは、最低限の救急医療物品をそなえておく必要がある。なお万が一の重症副反応が発生した際には、定期接種ではないため国による救済の対象にはならないが、予防接種後副反応報告の厚生労働省への提出と、一般の医薬品による副作用発生時と同様、独立行政法人医薬品医療機器総合機構における審査制度に基づいた健康被害救済が適応される。<br>   * 定期接種、任意接種にかかわらず、副反応と思われる重大な事象(ワクチンとの因果関係が必ずしも明確でない場合、いわゆる有害事象を含む)に遭遇した場合の届け出方法等:http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp250330-1.html<br> ・費用負担に関しては、このガイドラインに明記すべき性格のものではなく、個々の医療機関の判断に任されるものではある。<br> ・新規採用などにあたっては、すでに予防接種を済ませてから就業させるようにすべきである。学生・実習生等の受入に当たっては、予め免疫を獲得しておくよう勧奨すべきである。また業務委託の業者に対しては、ことにB型肝炎などについては業務に当たる従事者に対してワクチン接種をするよう契約書類の中で明記するなどして、接種の徹底をはかることが望まれる。<br>(以下略)<br>
著者
岩田 敏
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.903-920, 1984-09-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
21 3

抗生剤投与中の出血傾向は重要な副作用の一つであるが, 特に最近では, 新しいCephem系薬剤の使用に伴い問題視されている. そこで, 抗生剤投与中の小児について, ビタミンK欠乏の際特異的に出現する異常プロトロンビンであるProtein induced by vitamin K absence or antagonist (PIVKA II) を主な指標として血液凝固系の変動を調べ, 腸内細菌叢, 経口的食餌摂取, 下痢との関係, 及び抗生剤別, 年齢別, 疾患別の差異について検討した. その結果160例中37例 (23%) がPIVKAII陽性を呈した. このうち2/3以上の症例は. 抗生剤の投与開始後7日以内に陽性化した. 出血傾向は160例中11例 (7%) に認められ, 全例でPIVKAIIは陽性を呈した. 腸内細菌叢の変動は124例について検討したが, 腸内細菌叢が抑制された83例のうち, 23例 (28%) がPIVKAII陽性を呈し, さらに経口的食餌摂取量の減少が重なった23例については15例 (65%) が陽性を示して, 腸内細菌叢の抑制と経口的食餌摂取の不足により, 高率にビタミンK欠乏を生ずる可能性が示唆された. 年齢別の検討では, 乳児例においてPIVKAII陽性例が少なかった. 疾患別のPIVKAII陽性率は, 敗血症, 胎内感染, 中枢神経感染症例で高く, 尿路感染症例で低い傾向が認められた. 抗生剤別の検討では, LMOX, CMZ, CPZ等の3位に1-methyl-1-H-tetzazole-5-y1-thiomethyl基を有するCephem系薬剤にPIVKAII陽性例が多く認められ, この基とビタミンK依存性凝固因子の関係について, 今後検討の必要があると考えられる.以上より, 腸内細菌叢に大きな影響を及ぼす広域抗生剤, 特に新しいCephem系薬剤のような抗生剤を投与する際には, PIVKAIIも含めた血液凝固系の注意深い観察が必要であり, 新生児や経口的食餌摂取の不足している症例など, 症例によってはビタミンKの予防投与が必要である.
著者
岩田 敏和 中井 照夫 ホサイン シャヒン 菊本 統 石井 健嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.I_33-I_44, 2011 (Released:2012-03-26)
参考文献数
11

双設トンネルの掘削に伴う周辺地盤とトンネルへの影響を予測することは重要である.しかしながら,従来の設計法や数値解析,モデル実験は地盤-構造物の相互作用を必ずしも適切に評価しているとはいえない.そこで,本研究では変位・応力混合制御型のトンネル掘削模型装置を2連用いた2次元モデル実験と有限要素解析の両面からトンネル-地盤の相互作用の解明を試みた.両トンネルの位置関係と距離を変化させた検討の結果から,後続トンネルを掘削する位置の違いによって先行トンネルに異なるモードの偏土圧が作用することや,掘削に伴う両トンネルの移動を確認できた.また,解析は実験の傾向をよく捉え,双設トンネル掘削時の挙動を予測する有効なツールとなると考えられる.
著者
藤井 良知 阿部 敏明 田島 剛 寺嶋 周 目黒 英典 森 淳夫 佐藤 肇 新納 憲司 砂川 慶介 横田 隆夫 秋田 博伸 岩田 敏 佐藤 吉壮 豊永 義清 石原 俊秀 佐野 友昭 中村 弘典 岩井 直一 中村 はるひ 宮津 光伸 渡辺 祐美 久野 邦義 神谷 齊 北村 賢司 庵原 俊昭 桜井 實 東 英一 伊藤 正寛 三河 春樹 久保田 優 百井 亨 細井 進 中戸 秀和 西村 忠史 杉田 久美子 青木 繁幸 高木 道生 小林 陽之助 東野 博彦 木野 稔 小林 裕 春田 恒和 黒木 茂一 大倉 完悦 岡田 隆滋 古川 正強 黒田 泰弘 武田 英二 伊藤 道徳 松田 博 石川 純一 貴田 嘉一 村瀬 光春 倉繁 隆信 森田 秀雄 森澤 豊 浜田 文彦 辻 芳郎 横尾 哲也 林 克敏 冨増 邦夫 木戸 利彦 上原 豊 森 淳子 森 剛一 内田 哲也 大塚 祐一 本廣 孝 半田 祥一 山田 秀二 沖 眞一郎 吉永 陽一郎 荒巻 雅史 織田 慶子 阪田 保隆 加藤 裕久 山下 文雄 今井 昌一 鈴木 和重 岡林 小由理 金子 真也 市川 光太郎 曽田 浩子 清水 透子 長田 陽一 木葉 万里江 石橋 紳作 高橋 耕一 杉山 安見児 三宅 巧 荒木 久昭 垣迫 三夫 前野 泰樹 下飛田 毅 高岸 智也 松隈 義則 平田 知滋 田中 信夫 永山 清高 安岡 盟 林 真夫 天本 正乃 津村 直幹 小野 栄一郎 神薗 慎太郎 中嶋 英輔 永光 信一郎 野正 貴予 松尾 勇作 樋口 恵美 長井 健祐 末吉 圭子 橋本 信男 弓削 健 久保田 薫 川上 晃 渡辺 順子 藤澤 卓爾 西山 亨 岩永 理香子 牛島 高介 山川 良一 山村 純一 富永 薫 臺 俊一 安藤 寛 久田 直樹 藤本 保 元山 浩貴 丸岡 隆之 伊達 是志 杉村 徹 西依 淳 朝木野 由紀 山田 克彦 是松 聖悟 早川 広史 佐々木 宏和 木村 光一 山田 孝
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.921-941, 1995-07-01
被引用文献数
19