著者
大瀧 雅之
出版者
岩波書店
雑誌
科学 (ISSN:00227625)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.549-556, 2012-05
著者
大瀧 雅之
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.141-159, 2006-01-31

本稿では日本政策投資銀行(以下政投銀と略)を例として公的金融の役割と民営化問題について考察した.特に政投銀の情報生産能力に注目した.これについては,多くの実証研究が.政投銀が民間銀行の融資を引出すという,いわゆる「カウベル効果」の存在を認めている.すなわち政投銀の審査情報を利用し民間銀行も協調融資すると考えられている.政投銀の情報生産能力の淵源は日本政策投資銀行法にある「中立性」と「公共性」にあると考えられる.どの企業グループにも属さないという「中立性」は,借り手に安心感を与え,融資に当たっての情報収集を容易にする.ところで協調融資は,「クラブ財」と見なせる.融資に関する情報を生産提供するのが政投銀(クラブ)であってこれを共有し使用するのが民間銀行であると考えるわけである.そして政投銀の利潤を「クラブ」の使用料と捉える.このとき利潤極大化ではなく収支相償を前提とする「公共性」は,情報生産の本来の目的である民間銀行(「クラブ員」)の共同利潤を最大化できるという意味で優れている.
著者
大瀧 雅之
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.171-194, 2007-12

この論文の目的は,官公庁による景気動向判断の「政治性」について議論する.まず「デフレ脱却論」に象徴されるように,なぜ景気動向判断において,これほどまでになぜ物価指数動向が異様にウエイトを持つようになったか,その政治的背景を経済理論から分析する.そのうえで昨今のデフレには,日本経済としてなんら憂慮すべきものはなく,むしろ現時点では景気・資産価格の過熱を憂慮して,引き締め気味の政策が必要であることを,新たに構築された理論をもとに明らかにする.
著者
大瀧 雅之
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.11-23, 2006

本稿では貨幣を保蔵手段とした世代重複モデル(OGモデル)と独占的競争均衡を用いて,動学的な乗数理論を構築した.従来のMankiw (1988), Startz (1989), Reinhorn (1998)らの乗数理論では増税が負の所得効果を通じて労働供給を増加させる効果が支配的であった.このため浪費的な財政政策は却って経済厚生を低下させるという結論が得られていた.モデルの動学化により,Mankiwらには存在しない二つの相乗効果が生まれ,浪費的であっても不完全雇用下の拡張的財政政策が経済厚生を改善するという命題を得た.二つの相乗効果とは,貨幣発行益による財政支出のファイナンスと貨幣の非中立性である.まず貨幣発行益によるファイナンスは,税負担なしに財政拡張が可能になり,経済厚生を低下させる経路が遮断される.さらに本稿モデルでは相対価格であるインフレ率は名目貨幣供給量から独立に決定され,現在の物価水準もそこから独立となる.したがって政府は実質貨幣残高をコントロールが可能で,貨幣は非中立的となり,財政拡張に伴う貨幣増は有効需要を刺激し,独占利潤の増加を通じて経済厚生を高めるのである.