著者
竹久 和志 本田 真也 日比 隆太郎 杉丸 毅 樋口 智也 松井 智子 井上 真智子 大磯 義一郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.2-11, 2023-03-20 (Released:2023-03-24)
参考文献数
30

目的:患者は医療機関選択の際にインターネット上の情報を参考にしている.本研究ではGoogleレビュー上の医療機関に対する評価内容を分析した.方法:静岡県の医療機関のGoogleレビューの評点とクチコミを用いた.クチコミはあらかじめ設定した12の評価項目でコード化した上で,ポジティブ,ネガティブ,分類不能,記述なしに分類し,修正ポアソン回帰分析で評点との関連を分析した.結果:対象の医療機関は2,044施設,クチコミ数は13,769件であった.「医師の応対」に触れたクチコミが最も多く(5,035件),ポジティブなクチコミは高評価(偏回帰係数:0.76,95%信頼区間:0.70~0.82)と,ネガティブなクチコミは低評価(-4.65,-5.24~-4.06)と有意な関連があった.結論:Googleレビューにおいては,医師の応対に関するクチコミが評点に影響を与えていた.
著者
平山 陽示 大磯 義一郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.140-144, 2021-04-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
5
被引用文献数
1

医療倫理は生命倫理の一分野であり, その中に研究倫理と臨床倫理がある. 医療倫理学自体は学説や原理に基づいて, 普遍妥当的あるいは一般的な価値判断を示すのに対し, 臨床倫理学はそのケースに合った暫定的蓋然的価値判断を示すケーススタディであり, 応用倫理である. 一方, 研究倫理については「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」や「臨床研究法」が制定されている. 「医療法学」は, 古くから医学部教育の中に存在していたが, 「その他諸規則」扱いにとどまっていた. 近年の社会情勢の変化を受け, 独立した領域として適切な専門家による教育がなされるべきとの要請の下, 「医療法学」としてモデル・コア・カリキュラムに示されることとなった. 現在, 「医療の法化」が過度に進んでおり, 医療現場に弊害が生じている. 「医療法学」教育においても, プロフェッショナル・オートノミーが重要である.
著者
大磯 義一郎 井上 真智子
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.49-52, 2018-01-01

■医療事故当事者に対する考え方の変遷 医療安全の推進は,近年の医療界における最重要課題である.医療事故に対する考え方は,1999年に米国立科学アカデミー医学研究所が“To err is human”を発表した1)ことを契機にパラダイムシフトが起きた.すなわち,かつては医療事故の原因は,医療事故当事者個人の不注意や技術的な未熟さであると考えられていた.そのため,再発防止策は,当事者となった個人に対し,処罰や再教育をすることと考えられていた.しかし,当たり前のことではあるが,個人処罰を繰り返したところで医療現場の安全性の向上は得られるはずもなかった.その結果,現在では,医療事故の原因はシステムの脆弱性により一定の確率で発生するものと考えられるようになり,再発防止策としては,人は間違えることを前提に,人が間違えたとしても第三者に損害が発生しないようシステムの安全性を高めることと考えられるようになった(図1). そして,この医療安全におけるパラダイムシフトは,医療事故当事者に対する捉え方を大きく変えることとなった.すなわち,かつては,医療事故当事者は「被疑者」として取り扱われていたが,現在では,システムの脆弱性を明らかにした存在であり,他の誰もが経験しうることに遭遇したにすぎないと考えられるようになった.しかし,わが国では,いまだに個人に責任を負わせる風潮が根強く残っており,医療事故当事者は罰せられるべき罪人であるとする誤った姿勢で医療事故が取り扱われることが,しばしば見受けられる.その結果,わが国の医療安全の推進が大きく阻害されている.