著者
瀬尾 威久 松原 義雄
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.320-324, 1980-04-01

近年,航空機による海外との交通が頻繁となるにつれ,日本人も広く世界各地に進出するようになり,本来は日本に存在しないいくつかの感染症まで我が国に移入される機会が増えてきた.予防あるいは治療によい手段のある疾患に関しては比較的問題が少ない.例えば痘瘡には種痘,マラリアには予防内服をすることにより,ほぼ発病を防ぐことができる.しかしながら,よい予防・治療方法がなく,致命率の高い,本来はアフリカ原住民の疾患であると考えられるラッサ熱,マールブルグ病,エボラ出血熱などがヨーロッパ,アメリカなどに移入された事実から,いつこれらの疾患が日本に移入されるかしれない.既に我が国でも1976年2月接触者5人が発生した際に,政府はラッサ熱を指定伝染病とした.その後,東京都は,国の要請に基づき,国庫補助を受け,1979年7月に東京都立荏原病院に高度安全病棟を建設し,ラッサ熱を始めとする危険な感染症を収容することとなった.既にこのための診療班が結成され,患者入院に備え,定期的に研修が実施されている.
著者
越本 幸彦 山崎 祥光
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.812-815, 2018-10-01

■宿日直許可とは 連載第1回で記述した通り,「労働時間」とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり注1,例えば,宿直の際に仮眠中の時間があっても,「労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである」とされ注2,実労働が発生していなくても,指示に従い,業務への即応が求められる場合には仮眠時間も労働時間と判断されることになる. そのため,宿日直の中で,軽微な業務であっても,労働からの解放が保障されていると言えなければ,それは労働時間であり,(仮眠時間も含めて)日勤時間帯と同じ賃金が発生し,宿直時間が時間外労働や深夜労働に該当する部分は,所定の割増賃金を支払わなければならない.
著者
副島 秀久
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.789-792, 2016-10-01

熊本地震から4か月が経とうとしている.復興は徐々に進みつつあるが,主要インフラである幹線道路,特に国道57号線の再建は相当の時間を要すると思われ,このため市内の渋滞も激しく,さらに建築関係の資材高騰と人手不足が重なり,熊本人にとってはひときわ厳しく暑い夏となっている.こうした中で被害状況や災害対策の検証がさまざまな視点で進められつつあるが,現時点での経過と検証の一部を私見を交えて報告したい.
著者
M.O
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.114-115, 1971-10-01

保険医総辞退に至るまでの経過 中医協の診療報酬体系の適正化に関する‘審議用メモ’に端を発し,7月1日から突入した日本医師会の保険医総辞退は,7月28日の佐藤総理,斎藤厚相,武見日木医師会長の三者会談でようやく収拾され,木年の2月18日以来審議を中止していた中央社会保険医療協議会が約半年ぶりの8月5日にようやく開かれ,軌道に乗ってきた. そこでこの間のおもな動きをあげてみた.
著者
福永 肇
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.833-837, 2006-10-01

今月は診療報酬債権を担保にして資金調達をするスキーム,病院の不動産証券化スキーム(REIT),不動産担保と将来の診療報酬を信託受益権にして借入をした徳洲会グループの病院全事業証券化,自治体病院の民間資金調達スキームである PFI の 4 つの概要を解説します. ■診療報酬債権を担保にするスキーム 1.診療報酬債権譲渡担保融資 9 月号では診療報酬債権を証券化方式またはファクタリング方式にて流動化するファイナンスを解説しました.診療報酬債権を活用する病院ファイナンスには,この “流動化” に加え,診療報酬債権を “譲渡担保” にして資金調達を行う方法もあります.譲渡担保では,債権を担保するために,売掛金である診療報酬の所有権を病院から金融機関に法律形式に従って移転登記します.そして被担保債権の弁済をもって,その権利を返還する形式の担保となります.譲渡担保は民法上の担保権ではなく,判例法上での担保権です.
著者
佐藤 暢
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.864-868, 1988-10-01

はじめに 昨年12月22日と24日に国立嬉野病院(佐賀県)で起きた医療ガス配管ミスによる死亡事故について,その原因を巡って様々な報道がなされてから既に半年が経過して,警察の調査も終わり厚生省も漸く対応策をまとめたので,この際,問題点を振り返ってみた上で,このような悲惨な事故がなぜ繰り返されるのか,もう二度と起こさないための方策を探りたい. この事故は,手術室の天井裏にある換気用通気管の工事に伴って,邪魔になった医療ガス用の配管を移設した際,酸素と笑気の配管をつなぎ間違えた単純なミスによる(図1).しかし,2本の配管を逆に連結する工事ミスが起きて,しかも3日間も気づかなかったので,2人も患者が死亡した裏には複雑な背景がある.
著者
山田 あすか
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.838-843, 2018-11-01

葉山ハートセンターは,重度の心臓疾患の外科手術による治療を目的として,循環器外科とその後方病床に特化した心臓病の最先端治療センターとして開設された.開設当時は,それまでの病院建築の典型を払拭した敷地選定や建物形状,質の高いインテリアデザインや眺望との一体感など「病院らしくない病院」は話題を集め(図1),心臓手術を受ける患者に配慮した環境が高く評価され,グッドデザイン賞金賞(2000年),日本医療福祉建築賞(2001年)を受賞している1).
著者
宇賀 勇夫 真下 弘 中里 弘 西尾 友三郎 安藤 隆彦 大島 侑
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.59-68, 1975-09-01

精神病院にPSW (精神科ソーシャルワーカー),CP (臨床心理士)が登場してから幾多の歳月が流れた.しかし,業務の不明確さ,法的経済的裏づけの不備からか,依然として不安定な待遇にあるようである.今回は特に,「現場」での経験豊かな方々にお集まりいただき,日頃抱いている悩みや問題点を,ざっくばらんに語っていただいた.それは結局,精神病院のかかえる悩みや問題を明らかにすることになったが,「現場」で苦労を続ける多くの方々のご意見をいただき,新たな議論をまき起こす材料になれば幸いである.