著者
上ヶ谷 友佑 大谷 洋貴
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.49-62, 2020 (Released:2021-07-11)
参考文献数
67

本稿の目的は,所産( プロダクト) としての教科教育学が成立しないことを示し,教科教育研究を過程( プロセス) として捉える新しい研究観を提起することで,佐藤学氏の教科教育学批判に応えることである。このため,本稿では主として次の4点に取り組む。1) 国内における教育心理学や一般教育学の動向を踏まえ,教科教育学の領域固有性について検討する。2) 数学教育研究において国際的に論じられる「数学者の役割」論と「教えるための数学的知識」論から,教科教育研究者の役割について検討する。3) 教科の領域固有性の追究それ自体を否定する国際的な論調や,学校教育の枠に留まらない数学の成人教育論を参照しながら,プロセスとしての教科教育研究という新しい研究観を提起する。4) 推論主義の視座を踏まえ,教科教育研究が学際的活動として既存の一般教育学と特定の主題の学問領域に新しい洞察や視座を提供する創造的過程となり得ることを示す。
著者
上ヶ谷 友佑 白川 晋太郎 伊藤 遼 大谷 洋貴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.535-538, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
10

本稿の目的は,「推論主義」と呼ばれる現代哲学に基づき,生徒達にとって既知の概念をさらに発達させていくような数学的タスクのデザインの原理を開発することである.より具体的には,推論主義の示す資格保存的推論/コミットメント保存的推論といった実質推論の考え方を用いて,数学の授業における問題解決の様相を特徴付けることを試み,生徒達がどんな場面でどんな風に推論することが概念発達に寄与するのかを検討した.結果,次の3点が原理として導出された.[1] より概念化させたい既知の概念を2つ以上定める.[2] 本来はある概念の適用が有効であるにもかかわらず,思わず別の概念を適用してしまうようなタスクを設計する.[3] 生徒同士でなぜ自分がそのアプローチを選んだのかを議論させたならば,自分がどんな条件の下でどんなアプローチを使用しているのかを明示化する必要性が生じ,概念化が促進される.
著者
大谷 洋貴
出版者
全国数学教育学会
雑誌
数学教育学研究 : 全国数学教育学会誌 (ISSN:13412620)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-10, 2015-01-31 (Released:2019-01-17)
参考文献数
28

The purpose of this paper is to clarify curriculum issues concerning the development from descriptive statistics to inferential statistics based on an epistemological perspective of negation, and to refer to perspectives about solving the issues.  For achieving this purpose, three tasks are worked on.  The first task is to analyze history of statistics based on Otaki’s conception model so that the static conception of descriptive and inferential statistics is interpreted.  The second task is to make clear the dynamic conception of descriptive and inferential statistics based on Iwasaki’s framework on the negation theory in concept formation.  A framework about the development to inferential statistics is made by solving these tasks.  The third task is to analyze mathematics textbooks from the perspective of the framework.  As a result, it is found out that the development to inferential statistics is not necessarily intended.   In the development to inferential statistics three steps of negation are required.  The first step is negation of statistic and construction of substance of a statistic, which is not the same of one in descriptive statistics. The next step is analytic negation in which substance of a statistic is negated by viewpoint of decision, and it is regarded as a random variable in inferential statistics.  The final step is synthetic negation in which a random variable is negated by viewpoint of a parameter, and the relation between descriptive and inferential statistics is made clear.  This sequence of negation is shown below (Fig.).Fig. the development from descriptive statistics to inferential statistic