著者
長崎 栄三 西村 圭一 二宮 裕之
出版者
日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.11-20, 2015

2014(平成26)年7月にイギリスで「算数・数学教科書の研究と開発に関する国際会議(ICMT2014)」が開催された.算数・数学教科書の研究と開発に焦点を当てた国際会議としては初めてのものである.本稿においては,このICMT2014を通して,国際的な視野から,算数・数学教科書のあり方,開発状況,ICT活用などについて考察する.この会議では,3日間に,全体講演・シンポジウムが4件,口頭発表が79件あった.口頭発表は,次の七つの分科会に分けられていた.1)教科書研究,2)教科書分析,3)教科書比較,歴史,4)教科書使用,5)教科書開発,6)教科書へのICTの統合,7)数学教科書における他学科,他学科の教科書における数学.これのうち,全体講演,教科書の開発,ICT活用などについて紹介するとともに,算数・数学教科書とその研究のあり方,すなわち,算数・数学教科書は知識だけではなく思考の材料としても構成されることがあり,デジタル教科書を考える視点は協働と相互作用にあるということ,そして教科書のグローバル化などについて論じた.
著者
長崎栄三
出版者
日本数学教育学会
雑誌
数学教育論文発表会論文集
巻号頁・発行日
no.24, pp.305-310, 1991-11-21
被引用文献数
1

戦前の数学教育再構成運動の成果として昭和18年から19年にかけて発行された中学校数学科の1種検定教科書『数学第一・二類』は、生徒が数学を作り出すという発想のもとで作成されたという。本研究は、この教科書の題材などに焦点を当てて、この生徒が数学を作り出すという発想を量的に分析したものである。その結果、次のことが分かった。(1)理科、社会、保健、技術などの他教科や実社会に関連した題材などが多く取り入れていること。(2)図的表現には、実際の情景を描写した図的表現、少し数学化された中間的な図的表現、数学化された図的表現の3種類があり、しかも、前者2者の図的表現が多い。(3)一般的な求答活動に加え、考ヘヨ、シラベヨ、ドンナ関係ガアルカ、工夫セヨなどが多く求められている。
著者
酒折 文武 西村 圭一 竹内 光悦 田村 義保 深澤 弘美 渡辺 美智子 長崎 栄三
出版者
日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.20-28, 2010-01-01
参考文献数
15
被引用文献数
2

学習指導要領の改訂が告示され,中学校数学科に「資料の活用」領域が設けられるなど,中高において統計の内容が充実されたことで,数学教育における統計の学習のあり方に注目が集まっている.しかし同時に,新しく「活用」という視点が入った統計の学習の実践を効果的に展開するための教材および授業モデルの開発研究が喫緊の課題である.本研究では,科学技術振興機構(JST)の「初等中等教育における統計的能力の育成を目的としたデジタル教材」により,「算数・数学における資料の活用とデータ分析のための複合デジタル教材『科学の道具箱』」を開発した.その背景や概要,授業での活用方法について述べた.