著者
袴田 綾斗 上ヶ谷 友佑 早田 透
出版者
全国数学教育学会
雑誌
数学教育学研究 : 全国数学教育学会誌 (ISSN:13412620)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.161-168, 2018-03-23 (Released:2019-09-09)
参考文献数
17

The purpose of this paper is to elaborate effects of definitions of logical implication on the unit structure of logic in mathematics textbooks.  Especially, this study focuses on the effects of their definitions on indirect proof. For this purpose, we carried out praxeological analysis of a Japanese high school mathematics textbook within Anthropological Theory of the Didactic.  The analysis consists of two parts.  First, we briefly review a definition of implication by inclusive relationships of sets.  Second, we identify what types of tasks appear how many tasks each type has respectively.  As a result, we found that the definition of logical implication justified solutions for almost all of tasks.  Especially, we can explain and justify the validity of proof by contrapositive by using the definition.  On the other hand, we showed that the definition did not validate of the method of proof by contradiction.  Furthermore, we suggested that above differences were caused by the following three reasons: 1) The current conception of implication based on the concept of set in Japanese school mathematics does not subsume the conception of non-implicational proposition, that is, singular proposition; 2) As long as following the description of the textbook, we cannot define negation for any propositions (we can define negation only for open sentences); nevertheless, 3) The textbook does not explicitly describe some other concepts, such as a logical consequence, required for explaining the validity of proof by contradiction.
著者
上ヶ谷 友佑 大谷 洋貴
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.49-62, 2020 (Released:2021-07-11)
参考文献数
67

本稿の目的は,所産( プロダクト) としての教科教育学が成立しないことを示し,教科教育研究を過程( プロセス) として捉える新しい研究観を提起することで,佐藤学氏の教科教育学批判に応えることである。このため,本稿では主として次の4点に取り組む。1) 国内における教育心理学や一般教育学の動向を踏まえ,教科教育学の領域固有性について検討する。2) 数学教育研究において国際的に論じられる「数学者の役割」論と「教えるための数学的知識」論から,教科教育研究者の役割について検討する。3) 教科の領域固有性の追究それ自体を否定する国際的な論調や,学校教育の枠に留まらない数学の成人教育論を参照しながら,プロセスとしての教科教育研究という新しい研究観を提起する。4) 推論主義の視座を踏まえ,教科教育研究が学際的活動として既存の一般教育学と特定の主題の学問領域に新しい洞察や視座を提供する創造的過程となり得ることを示す。
著者
服部 裕一郎 上ヶ谷 友佑
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.59-64, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

ユーモアを取り入れた数学教育の研究が,一般に,ユーモアが数学学習の情意的側面に肯定的な影響を与えることを期待する中,本研究は,ユーモアが数学学習の認知的側面に与える影響を検討する.とりわけ本稿の目的は,中等教育の文脈で「ユーモア」を意図的に取り入れた数学授業において,生徒達の数学的活動が真正となるためのユーモアの役割を明らかにすることである.理論的枠組みとして,ユーモアにおける不一致理論の立場に依拠し,中学校数学でユーモアを取り入れた数学授業の実践の具体から,生徒達の活動の様相を分析した.分析の結果,数学教育にユーモアを取り入れることにより,「生徒個々人の数学的な問題解決における思考の自由性の保障」,「授業者と生徒達によって交わされる教授学的契約の更新」,「生徒達の批判的思考の誘発」の3点をユーモアの役割として特定し,ユーモアが生徒達の真正な数学的活動の実現に貢献することを指摘した.
著者
上ヶ谷 友佑 白川 晋太郎 伊藤 遼 大谷 洋貴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.535-538, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
10

本稿の目的は,「推論主義」と呼ばれる現代哲学に基づき,生徒達にとって既知の概念をさらに発達させていくような数学的タスクのデザインの原理を開発することである.より具体的には,推論主義の示す資格保存的推論/コミットメント保存的推論といった実質推論の考え方を用いて,数学の授業における問題解決の様相を特徴付けることを試み,生徒達がどんな場面でどんな風に推論することが概念発達に寄与するのかを検討した.結果,次の3点が原理として導出された.[1] より概念化させたい既知の概念を2つ以上定める.[2] 本来はある概念の適用が有効であるにもかかわらず,思わず別の概念を適用してしまうようなタスクを設計する.[3] 生徒同士でなぜ自分がそのアプローチを選んだのかを議論させたならば,自分がどんな条件の下でどんなアプローチを使用しているのかを明示化する必要性が生じ,概念化が促進される.
著者
上ヶ谷 友佑
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 37 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.428-429, 2013-09-06 (Released:2018-05-16)

本稿は,大学数学の教育研究でのみ指摘されていた「非標準コンセプション」を抱く学習者が,小学2年生にも見られたため,報告するものである.本稿は,その事例に基づいて,非標準コンセプションとミスコンセプションの特徴の違いを比較検討した.