著者
奥村 昭博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.15-25, 2010-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
27

組織学会の活動を振り返り,それが日本企業の経営にどのように貢献してきたかを,戦略論及び組織論の研究と経営実務との関係から考察した.経営知が経営実務家と研究者およびコンサルタントとの交流から発展するとすれば,日本は米国に比べるとその創出性は薄い.今後,日本の組織学会はさらに経営実務との交流を深め,新たな日本の経営理論を作り出すことに努力すべきである.
著者
石田 英夫 重里 俊行 奥村 昭博 佐野 陽子
出版者
慶応義塾大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

金融機関といっても、機関によって特性の異なることも確認された。本研究では、(1)銀行、(2)保険、(3)証券、(4)外資系、と4つに分けた。金融全体で見ると私たちがすでにおこなった化学・エネルギ-大企業の本社事務職男子に比べて、総じて仕事の満足度が高いことがわかった。とくに、昇進、能力発揮、給与について満足しているが、労働時間や心身疲労では化学・エネルギ-より不満が多かった。定着性向、つまり定年までいるかという問いに、化学・エネルギ-は、59%がイエスであった。金融平均はそれより低いが、銀行は64%、外資系は11%という開きがあり、機関別に大きな差があることがわかる。HRMの重要な成果たる帰属意識についても、興味深い結果がえられた。内部化ともっとも関係の深いと思われる「運命共同体型」と「安定志向型」は、銀行がもっとも多く、次いで保険であった。反対に「希薄型」は、外資系と証券に多い。しかし、証券には「モ-レツ型」も多いし、外資系は「安定型」と「運命共同体」も多いというように、二分化の傾向が見られるから、単純に1つのモノサシで4つの機関の色分けはできないだろう。製造業を対象とした他の研究と比べると、革新型の帰属意識は見られず、金融機関の伝統的な意識構造の傾向が見られる。金融機関の給与が高いことも、従業員の定着や帰属意識に作用しているが、これは「支払能力」にあずかるところが大きい。しかしそれは、長期勤続者に大きく傾斜した高給与が多いから、利潤分配の性格があるだろう。さらにまた、銀行、証金、保険の各社は、1社のみ突出するのをきらうから、企業間のバランスという「相場」要因も重要である。この「相場」というのは、企業の「格」と言いかえることができる。このような所得配分メカニズムは、金融の特徴ではなく日本の大企業における中核的労働力に共通なものと思われる。
著者
奥村 昭博
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.133-152, 1973-04-30

組織は,生存しつづけるためには,常にその環境に適応してゆかねばならない。その適応の過程で組織は,環境の不確実性を処理する機構となる。よって,組織の環境への適応行動の理解には,まず組織と環境との相互関係を検討する必要がある。本稿は,前に紹介,説明したハーバード大学のローレンス・ローシュによって開発された「組織の"条件"理論(Contingency theory of organizations)」に基づいて,日本の企業でその実証研究を試みたもののまとめである。この調査の対象となったのは,小規模の繊維の販売会社であった。われわれは,この企業の重役3名(各地域の支店長)と商品別の課長10名に対してインタビューおよび質問用紙を試みた。