著者
子島 潤
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.410-419, 1991
被引用文献数
5

392例の急性心筋梗塞 (AMI) 患者の集中治療室入院中の心電図モニター所見にもとづき, AMIに伴う心室頻拍 (VT) の臨床像について検討し, 以下の結果を得た.<BR>1) AMIにおけるVT発生率は23.5%であった.<BR>2) VT群では非VT群に比し心室細動の発生率および死亡率が高かった.<BR>3) VTの発生頻度はAMIに合併する心不全が重症なほど高かった.<BR>4) VTの発生頻度は前壁梗塞群よりも下壁梗塞群で高かった.<BR>5) VT発作はAMI発症当日に最も多くみられたが, 前壁梗塞群ではVT発作のピークが, AMI発症後第4週目にも認められた.<BR>6) AMI発症後14日以降に発生した遅発性VTの症例では, VT発作時心拍数が高く, VF移行率が高く, 重症心不全を伴い, 予後がきわめて不良であった.<BR>7) VT発生直前にVPCがみられたのは, 20.5%にとどまった. 上室性不整脈も23.1%に認められた.<BR>8) VTに対し, 前胸部叩打は60.9%, lidocaineは57.1%の奏功率であった.