著者
森田 道 曽山 明彦 高槻 光寿 黒木 保 安倍 邦子 林 徳真吉 兼松 隆之 江口 晋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.483-487, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
8
被引用文献数
5 7

59歳,女性.主訴はなし.検診目的の腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され当科紹介となった.腹部造影CTでは肝外側区域から肝外に突出する造影効果に乏しい腫瘤を認めた.肝腫瘍の他,肝胃間膜内発生の悪性リンパ腫や胃GIST,炎症性腫瘤との鑑別が困難であり,診断的意義も含め腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.術中所見では腫瘤は肝胃間膜内に肝外側区域背側に接するように存在していた.腫瘤と接する肝外側区域を一部合併切除し腫瘤を摘出した.病理組織所見は変性壊死を中心とした好酸球性肉芽腫で,内部にアニサキス虫体を認め消化管外アニサキス症と診断した.アニサキス症の多くは消化管に発生し激烈な腹痛を特徴とするが,初回感染では本症例のように無症状で消化管壁を穿通し消化管外アニサキス症として発見される例の報告もある.発見契機としては,絞扼性イレウス,膵腫瘤などの報告があるが,肝腫瘤として発見された例は国内では5例と稀である.
著者
安倍 邦子 小路 武彦 林 徳眞吉
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ACTH受容体蛋白質から15アミノ酸配列を選び,合成ペプチドを作製し,KLHをキャリアー蛋白として,家兎に免疫した.抗血清はELISA法で,各々のペプチド抗原に対し25600倍希釈で陽性で,人副腎で,希釈倍率の検討および抗原賦活化の方法を検討し,1血清は副腎皮質の細胞膜に陽性で,ウェスタンブロット法で副腎のホモジネートと60kDのバンドを形成し,いずれもペプチドにより吸収された.副腎皮質癌,腺腫,過形成の手術例のパラフィン切片を用いて免疫染色した.PCNA,Ki-67陽性率は,癌で3.43-20.08,0-20.9と陽性率が高値で,腺腫で0.14-1.33,0-1.03と低く,過形成で0.19-0.7,0-0.05で腺腫よりもさらに低い傾向を示し,生物学的悪性度と増殖能の相関が明らかだった.ACTHR抗体では,腺腫や過形成に比較し,癌は陽性率が低下している.p53は腺腫や過形成では陰性,癌で3例のみ陽性,p53と副腎癌の発癌との関連が考えられるが,発癌には他の多数の因子の関与が考えられる.Rasは全体に陰性であった.Mycは,抗体9E10では,正常副腎皮質は核のみ陽性で,過形成や腺腫も核が陽性で,一部胞体も陽性だが,癌では胞体が優位である.3ヶ所の塩基配列を選択し,ATTを5個付加した60merのオリゴDNAを合成し,dot blot hybridizationで10pgまで検出できた.さらにピロニン染色や28srRNAでRNAの保存が確認された人副腎パラフィン切片を用い,種々の条件,T-T dimer法にて染色して検討した.球状帯と束状帯のcompact cellに陽性像を認めるが,弱く,定量的に検討するためには強い染色を得る必要があり,別の2ヶ所の塩基配列を選択し,ジゴキシゲニン標識で検討したが,同様の結果だった.腫瘍については特異的な染色はまだ得られていない.