著者
山下 万平 曽山 明彦 高槻 光寿 日髙 匡章 宮明 寿光 黒木 保 中尾 一彦 江口 晋
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.325-331, 2015-02-05 (Released:2015-02-05)
参考文献数
30

症例は60代女性.C型肝硬変に対して生体肝移植,脾臓摘出術を施行.C型肝炎再発に対するインターフェロン療法中に発熱,下痢,嘔気が出現,ショックとなり脾摘後劇症型感染症と診断されたが,集中治療により救命した.脾摘後劇症型感染症は生命予後が不良であり,救命率の改善には予防の徹底,症状が軽度の段階から劇症化する可能性があることを念頭において,きわめて迅速に治療を開始することが必要である.
著者
濵田 隆志 藤田 文彦 山下 万平 虎島 泰洋 黒木 保 江口 晋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.1706-1709, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
11

Ehlers-Danlos syndrome(以下EDS)は皮膚過伸展,関節過可動性,皮膚と血管の脆弱性を3主徴とする遺伝性結合織疾患である.今回,癒着性イレウスにより多発小腸憩室を形成したEDSの1例を経験したので報告する.症例は50代,男性.開腹術後の癒着性イレウスで入院中,状態悪化し当院紹介.腹部CTで遊離ガスを認め消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.前回の手術創直下に癒着による小腸狭窄あり.狭窄部口側小腸は拡張し多発憩室を認め,そのうち一つは腸間膜に穿通し炎症性に硬化していた.EDSによる組織脆弱性から小腸切除および吻合は不適と判断し,癒着剥離によるイレウス解除術のみ行った.本症例は組織の膨張に対する歯止めの役割をもつIII型コラーゲンの減少が特徴であるEDS IV型と考えられた.そのため,組織脆弱性から閉塞部より口側腸管の内圧上昇によって組織が膨張し,多数憩室を形成したと推測された.
著者
近藤 理恵 黒木 保博 朴 志先 桐野 匡史
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.87-94, 2015-03-12

本研究は、2013 年12 月に韓国において行った面接調査をもとに、近年の韓国の養子縁組政策の動向について明らかにすることを目的とした。面接対象は、「中央養子縁組センター」、「ホルト児童福祉会」、「東方社会福祉会」、「未婚母子家族福祉施設」であった。韓国では、民間団体による養子斡旋が活発であるが、2011年の養子縁組特例法の全面改正以降、①裁判所が養子縁組に関与したり、②子どもが自らの出自を知ることができるシステムがより一層整備されたり、③養子縁組に関わるケース・マネジメントが確立されたことにより、以前よりも養子縁組をされる子どもの権利が擁護されるようになったことが明らかとなった。また、韓国では、非婚の母親と子どもへの差別が強いため、彼女たちが生きにくい状況があるが、今後、養子縁組政策と並行して、非婚の母親と子どもが安心して暮らせるシステムづくりを推進していく必要があることが明らかとなった。
著者
森田 道 曽山 明彦 高槻 光寿 黒木 保 安倍 邦子 林 徳真吉 兼松 隆之 江口 晋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.483-487, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
8
被引用文献数
5 6

59歳,女性.主訴はなし.検診目的の腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され当科紹介となった.腹部造影CTでは肝外側区域から肝外に突出する造影効果に乏しい腫瘤を認めた.肝腫瘍の他,肝胃間膜内発生の悪性リンパ腫や胃GIST,炎症性腫瘤との鑑別が困難であり,診断的意義も含め腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.術中所見では腫瘤は肝胃間膜内に肝外側区域背側に接するように存在していた.腫瘤と接する肝外側区域を一部合併切除し腫瘤を摘出した.病理組織所見は変性壊死を中心とした好酸球性肉芽腫で,内部にアニサキス虫体を認め消化管外アニサキス症と診断した.アニサキス症の多くは消化管に発生し激烈な腹痛を特徴とするが,初回感染では本症例のように無症状で消化管壁を穿通し消化管外アニサキス症として発見される例の報告もある.発見契機としては,絞扼性イレウス,膵腫瘤などの報告があるが,肝腫瘤として発見された例は国内では5例と稀である.
著者
山下 万平 黒木 保 佐伯 哲 北里 周 三原 裕美 三浦 史郎
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.758-763, 2020

<p>症例は64歳男性,検診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に隆起性病変を指摘された.精査にて粘膜下に限局する10mm大の副乳頭部腫瘍を疑うもEUS下穿刺吸引細胞診で確定診断には至らなかったため,内視鏡的副乳頭部切除術による切除生検を行った.病理組織診にてInsulinoma-associated 1(INSM1)陽性,核分裂像0/10HPF,Ki-67<1%で副乳頭部神経内分泌腫瘍(NET)G1の診断,筋層への浸潤と腫瘍細胞の断端露出を認めたため,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本は断端陰性,No.6,14,17bリンパ節への転移を認めた.副乳頭部NETは腫瘍径が小さくてもリンパ節転移を高率に認めるため,腫瘍径にかかわらず膵頭十二指腸切除術と標準的リンパ節郭清を基本とした術式が妥当である.</p>
著者
尹 靖水 百瀬 英樹 黒木 保博 中嶋 和夫
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.1-18, 2011-03

本調査研究は,台湾の多文化家族の夫が日常生活の中で妻から受けるHusband Abuseの頻度(潜在的ストレッサー)と夫の妻に対する否定的感情(ストレス認知)との関連性を明らかにすることを目的とした。調査には,台北市,高雄市,台北県,桃園県に在住する多文化家族の夫が参加した。調査内容は,属性(夫の現在と結婚時の年齢,宗教,学歴,収入,家族構成,結婚継続期間,妻の現在と結婚時の年齢,国籍,宗教,コミュニケーション能力),夫が妻から被る虐待(Husband Abuse)の頻度,妻に対する否定的な感情で構成した。回収された186人のデータ(回収率93.0%)を基礎に,多文化家族の夫が妻から被る虐待(7因子)を独立変数,夫の妻に対する否定的感情を従属変数とする因果関係モデルのデータへの適合性を,構造方程式モデリングで解析した。このとき,統制変数として夫の収入と妻のコミュニケーション能力を投入した。その結果,前期の因子別に検討した因果関係モデルはそれぞれデータに適合した。また,前記Husband Abuseの妻に対する否定的感情に対するパス係数は,「性的虐待」が0.704,「社会的虐待」が0.641,「心理的虐待」が0.597,「言語的暴力」が0.576,「身体的虐待」が0.496,「経済的虐待」が0.412,「ネグレクト」が0.358となっていた。潜在的ストレッサーがストレス認知に影響するというラザルスのストレス認知理論を前提にするなら,多文化家族のHusband Abuse問題を,社会福祉学的な生活ニーズと位置づけ,積極的に解消することの必要性が示唆された。