著者
江川 裕人 尾形 哲 山本 雅一 高原 武志 若林 剛 藤山 泰二 高田 泰次 保田 裕子 八木 孝仁 岡島 英明 海道 利実 上本 伸二 伊藤 孝司 吉村 了勇 吉住 朋晴 調 憲 前原 喜彦 阪本 靖介 猪股 裕紀洋 篠田 昌宏 板野 理 北川 雄光 川岸 直樹 石山 宏平 井手 健太郎 大段 秀樹 水野 修吾 伊佐地 秀司 浅岡 忠史 永野 浩昭 梅下 浩司 日髙 匡章 江口 晋 小倉 靖弘
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.062-077, 2015-03-10 (Released:2015-03-31)
参考文献数
12

【Objective】To estimate a standard dosage of rituximab prophylaxis for ABO incompatible living donor liver transplantation (ABO-I LDLT), we retrospectively investigated rituximab dosage, efficacy and safety in 37 patients including 4 children undergoing ABO-I LDLT with rituximab prophylaxis in 15 centers in 2013.【Methods】We analyzed the data collected by questionnaire that were sent to registered surgeons or hepatologists of the Japanese Liver Transplantation Society.【Results】Doses of rituximab in adult patients were 500 mg/body in 16 cases (48%), 375 mg/m2 in 12 cases (36%) and 300 mg/body or 100 mg/body in 5 cases. The number of administration was one in 29 cases (89%). The scheduled timing of initial administration was 2 weeks of operation or earlier in 14 centers (93%), and the median of actual timing was 14 days prior to transplantation. One-year patient survival rate was 82%, and the incidence of antibody-mediated rejection (AMR) was 9%. Patients with a standard regimen consisting of 500 mg/body or 375 mg /m2 rituximab 2 weeks before operation or earlier had significantly better one-year survival rate compared to a non-standard regimen consisting of 100mg/body or 300mg/body rituximab later than 2 weeks (100% vs. 70%, p = 0.009) and a lower incidence of AMR (0% vs. 15%, p=0.074). ABO-I LDLT with rituximab prophylaxis was well tolerated.【Conclusion】The recommended regimen for rituximab prophylaxis is a single dose of 375 mg/m2 body surface area 2 weeks before transplantation or earlier. The dose should be reduced carefully according to patient condition.
著者
山下 万平 曽山 明彦 高槻 光寿 日髙 匡章 宮明 寿光 黒木 保 中尾 一彦 江口 晋
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.325-331, 2015-02-05 (Released:2015-02-05)
参考文献数
30

症例は60代女性.C型肝硬変に対して生体肝移植,脾臓摘出術を施行.C型肝炎再発に対するインターフェロン療法中に発熱,下痢,嘔気が出現,ショックとなり脾摘後劇症型感染症と診断されたが,集中治療により救命した.脾摘後劇症型感染症は生命予後が不良であり,救命率の改善には予防の徹底,症状が軽度の段階から劇症化する可能性があることを念頭において,きわめて迅速に治療を開始することが必要である.
著者
濵田 隆志 藤田 文彦 山下 万平 虎島 泰洋 黒木 保 江口 晋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.1706-1709, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
11

Ehlers-Danlos syndrome(以下EDS)は皮膚過伸展,関節過可動性,皮膚と血管の脆弱性を3主徴とする遺伝性結合織疾患である.今回,癒着性イレウスにより多発小腸憩室を形成したEDSの1例を経験したので報告する.症例は50代,男性.開腹術後の癒着性イレウスで入院中,状態悪化し当院紹介.腹部CTで遊離ガスを認め消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.前回の手術創直下に癒着による小腸狭窄あり.狭窄部口側小腸は拡張し多発憩室を認め,そのうち一つは腸間膜に穿通し炎症性に硬化していた.EDSによる組織脆弱性から小腸切除および吻合は不適と判断し,癒着剥離によるイレウス解除術のみ行った.本症例は組織の膨張に対する歯止めの役割をもつIII型コラーゲンの減少が特徴であるEDS IV型と考えられた.そのため,組織脆弱性から閉塞部より口側腸管の内圧上昇によって組織が膨張し,多数憩室を形成したと推測された.
著者
布下 裕基 曽山 明彦 福本 将之 原 貴信 丸屋 安広 松島 肇 今村 一歩 足立 智彦 日髙 匡章 金高 賢悟 岡野 慎士 江口 晋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.19-24, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
11

2019年末に中国武漢で報告され,流行した新型コロナウイルス(以下COVID-19)感染症により,移植医療はレシピエントのCOVID-19感染,移植のための人の往来による感染伝播,移植後患者のCOVID-19感染のリスクなど様々な問題に直面した.実際に,それらの問題のため,COVID-19流行前の2019年と流行後の2020年以降2022年末までの臓器提供数,脳死肝移植症例数を比較すると,減少している.今回COVID-19感染下に発症した急性肝不全患者に対して,診断早期から多職種間,施設間で連携をとり,適切なタイミングで脳死肝移植を施行した一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
篠原 彰太 山根 裕介 大関 圭祐 吉田 拓哉 田浦 康明 小坂 太一郎 江口 晋 永安 武
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.986-990, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
10

症例は在宅中心静脈栄養を行っているヒルシュスプルング病類縁疾患の1歳11か月の男児.中心静脈カテーテル関連血流感染症(catheter related blood stream infection: CRBSI)を繰り返しており,定期外来で予防的エタノールロック療法を行っていた.受診4日前の定期外来時に,中心静脈カテーテル接続部のぬぐい培養を提出した.受診前夜に高熱が出現し,翌朝当科外来を受診した.ぬぐい培養でKlebsiella spp.が検出されていたこと,家庭環境から入院が困難であったことからセフトリアキソンナトリウム水和物(CTRX)による外来抗菌薬静注療法(outpatient parenteral antimicrobial therapy: OPAT)を選択した.外来でCTRX 60 mg/kgの静注及び2時間のエタノールロックを施行し,10日間の治療で治癒し得た.児の全身状態が保たれ,使用する抗菌薬が決定している場合は,OPATはCRBSIの治療選択の一つとなる可能性が示唆された.
著者
森田 道 曽山 明彦 高槻 光寿 黒木 保 安倍 邦子 林 徳真吉 兼松 隆之 江口 晋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.483-487, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
8
被引用文献数
5 6

59歳,女性.主訴はなし.検診目的の腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され当科紹介となった.腹部造影CTでは肝外側区域から肝外に突出する造影効果に乏しい腫瘤を認めた.肝腫瘍の他,肝胃間膜内発生の悪性リンパ腫や胃GIST,炎症性腫瘤との鑑別が困難であり,診断的意義も含め腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.術中所見では腫瘤は肝胃間膜内に肝外側区域背側に接するように存在していた.腫瘤と接する肝外側区域を一部合併切除し腫瘤を摘出した.病理組織所見は変性壊死を中心とした好酸球性肉芽腫で,内部にアニサキス虫体を認め消化管外アニサキス症と診断した.アニサキス症の多くは消化管に発生し激烈な腹痛を特徴とするが,初回感染では本症例のように無症状で消化管壁を穿通し消化管外アニサキス症として発見される例の報告もある.発見契機としては,絞扼性イレウス,膵腫瘤などの報告があるが,肝腫瘤として発見された例は国内では5例と稀である.
著者
藤田 文彦 江口 晋
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

①ドナーラットより採取した脂肪幹細胞を肛門機能不全ラットの肛門周囲へ投与し、一定期間肛門内圧を測定する。最後に犠牲死させ、肛門周囲の組織からドナー由来の細胞を検証する。②肛門機能不全ラットの肛門周囲に脂肪幹細胞を直接注入し、さらには肛門周囲へ電気刺激を加えた肛門内圧の改善を観察する。③臨床にて肛門温存手術を受けた患者のうち、排便障害のある症例に対して十分なインフォームドコンセントを行った上で、肛門周囲組織へ自己脂肪由来幹細胞の移植を行う。腹部皮下あるいは大腿部の脂肪組織を吸引法にて採取し、閉鎖回路を用いて脂肪由来幹細胞のみを採取・濃縮させ、それを肛門周囲組織へ移植する。術後、創部の安定したころより電気刺激による肛門部リハビリを開始し、定期的に肛門機能の評価を行う。平成29年度は上記①に取り組み、長期間にわたり安定した肛門機能不全ラットモデルを作成することができた。さらに脂肪幹細胞を注入したところ、肛門内圧が上昇し肛門機能の改善が認められた。しかし、HE染色やαSMA染色などにより再生した筋組織の解明には至らなかった。結局のところbulking効果を示すような組織が存在している可能性がある。平成30年度は肛門機能改善を目指し、脂肪幹細胞をシート状にして塗布した試みを行った。この実験でも肛門内圧の上昇を示すことができたが、筋組織再生の証明には至っていない。注入した脂肪幹細胞から放出された物質の影響により、レシピエントに残存している筋組織が肥大していることが仮設として立てられた。
著者
小林 慎一朗 南 恵樹 崎村 千香 山之内 孝彰 林田 直美 江口 晋
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.23-26, 2013-01-25
参考文献数
12

乳房切除後疼痛症候群(PMPS)とは乳癌術後の神経障害性疼痛である.今回われわれはPMPSに対してプレガバリン(PGB)を投与し著効した2症例を報告する.症例1は52歳女性,2008年6月に前医で両側乳癌に対して右腋窩郭清および左乳房部分切除,センチネルリンパ節生検施行した.術直後より左胸部痛を認め,下着など接触時に痛みを感じていた.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与も症状は持続した.その後当科に紹介受診となり,疼痛外来に紹介,PGB投与開始後,症状は著明に改善した.症例2は82歳女性,2011年3月に当科で左乳癌に対して左乳房切除術および腋窩郭清を施行.術後1カ月後から創部痛増悪し,疼痛で不眠の状態であった.NSAIDs投与も軽減傾向なく,疼痛外来に紹介,PGB投与開始後,症状は著明に改善した.PMPSに対し,PGB投与は症状緩和の効果がある可能性が示唆された.