著者
岡野 多門 安東 重樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.232-239, 2012 (Released:2012-11-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

鳥取県の8海岸で撤去を伴う漂着ごみ調査を7年間毎月行い,河口から調査地までの距離と,そこでの由来地別漂着量について分析した。河口近くでは日本ごみが多く,外国ごみは少ない。これは地元のごみを含む河川水が,海表面を河口から扇型に広がる表流水効果で説明できる。日本ごみの量は河口からの距離にほぼ反比例するので,地元ごみと遠方からの日本ごみの量を推算できる。千代川流域圏では日本ごみの半分近くが地元由来となり,それは地名情報を印刷した漂着宣伝ライターの地名割合と一致した。この地域の漂着ごみは長崎県から鳥取県までの範囲から来るが,千代川流域圏の人口は,その地域の約3%にすぎない。これは河口から流出した地元ごみが,その地域の沿岸域に滞留しやすいことを示す。ここで発見した浮遊ごみに対する表流水効果と沿岸域滞留現象は一般的と判断できるので,地元海岸の漂着ごみを減らすためには,地元からのごみの流出を防止することが最も重要である。
著者
岡野 多門 安東 重樹 池田 圭吾
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.285-292, 2011 (Released:2011-11-30)
参考文献数
13
被引用文献数
3

鳥取県の複数の海岸で,飲料用ペットボトルの毎月の漂着数と,中国と台湾由来ボトルの製造年月日を調査した。その分析結果から,東アジアモンスーンがボトル投棄から漂着までの過程に大きな影響を与えていることがわかった。5月から6月頃に中国南部と台湾から海に流出したボトルは7月に漂流経路を日本海方向に変え,8月から9月頃に漂着する。長江流域とそれ以北に由来するボトルは7月から8月頃に河川を経由して流出し,10月から11月頃に漂着する。東南アジア由来ボトルは8月から11月にかけて漂着する。夏に流出した朝鮮半島由来ボトルは日本海の沖合を漂流し,北寄りの風の強まるころから南下を始め,おもに11月から1月に漂着する。東シナ海から日本海への流入可能期間は約3~4ヶ月間で,それ以外の期間は太平洋に流出していると推定される。ただ漂着数は日本由来ボトルが圧倒的に多く,この結果は多量のペットボトルが日本の太平洋側を含む東アジアから太平洋に流出していることを示唆する。
著者
岡野 多門 安本 幹 安東 重樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.94-105, 2010 (Released:2010-04-15)
参考文献数
46
被引用文献数
9 4

難分解性の海洋浮遊ごみの実態を漂着量から推測する適切な方法を開発するために,鳥取県の3海岸で2005年から2008年までに8回の堆積ごみ調査を行った。漂着物の種類は多く,砂浜上で不均一に分布しているため,範囲を500mとして定形物に限り,それを90種に分けて調べた。それらの排出分野を屋外民生,屋内民生,漁業,農業,医療に分類した結果,民生品が最多となった。しかし品目によって再流出や埋没による消失速度が異なるため,品目間の個数比から漂着個数比を推測することはできない。したがって漂着量の測定には漂着物を撤去する定期的なモニターが必須である。また迅速化のためには各排出分野を代表する数品目を選んでモニターすることが不可避である。また精度と効率を上げるために定義が明確で個数が多く見逃しの少ない品目の選択が重要で,水没や分解しやすい品目,および地域固有性の高い品目を選ぶと排出源に偏りを生むことに注意が必要である。
著者
岡野 多門 安本 幹 安東 重樹
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 = Journal of the Japan Society of Material Cycles and Waste Management (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.226-235, 2010-11-30
参考文献数
27
被引用文献数
7 4

海洋浮遊ごみの多くが陸上から流出しているといわれるがそれを分析的に証明した例はない。ここでは台風が多く襲来した2004年と台風の影響がなかった2008年の鳥取県の海浜ごみを比較し,河川から流出したごみの海浜への影響を検討した。2004年5月から12月までの海浜ごみ数は2008年の約1.7倍であるが,これらの台風は中国・台湾由来物を減らし,由来地域不明物と日本由来物を増加させた。8~9月期の台風の降雨は少なかったが,河川から多くの飲料容器が流出し,河口近傍の海浜に漂着した。河口遠方では砂中に埋没していた小型高比重ごみが高波によって洗い出された。10~11月期の台風は豪雨を伴ったが海浜ごみの総数は8~9月期と同程度であり,河川由来ごみは河口からの流出水によって遠方の海岸まで達した。夏期の少雨台風に比べて秋台風では農薬容器や界面活性剤容器が多く,飲料容器とこれらの放置場所に偏りのあることがわかる。
著者
岡野 多門 安東 重樹 安本 幹
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.521-530, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
3

漂着ライターを鳥取県の複数の砂浜で2004年4月から繰り返し調査し,それらの由来地域を調べた。撤去した総数は27,968個で,印刷文字からそれらの27%の排出由来地域を同定した。日本,朝鮮半島,中国・台湾に由来するライターの個数比は約6:11:10である。しかし同時に調査を行った水・清涼飲料用ペットボトルの由来地域個数比は約6:2:1であった。この由来地域比率の著しい相違は消費量の違いだけでなく,日本に比べて朝鮮半島や中国および台湾での印刷文字入りライターの消費率が高いためと推測された。ペットボトルと異なり,ライターを投棄する時期の偏りは小さいが,両者の漂着時期は似ている。ただし排出地によって海への流出や漂流経路が異なることから,由来地域によって漂着時期が異なる。したがって由来地域別漂着量の測定には漂着時期の相違を考慮した適切な時間間隔の定期調査の継続が必要で,由来地域別漂着量の比較は文字入りライターの使用状況の近い地域に限って可能である。このような調査分析によって,韓国の黄海側からの日本海への流入が少なく,日本海に流入できる日本の南西限界が長崎県付近で,また対馬海流に逆行する漂流が少ないことが分かる。また日本の都道府県まで帰属できたライターの68%が鳥取県由来で,それらを鳥取県の東部,中部,西部の3地域由来に分けると,各地域由来ライターの67-88%が同じ地域内の調査海浜に漂着していた。これらの結果は,河口から流出したライターが直線的な海岸地形でも,沿岸域にとどまる傾向の強いことを示す。沿岸域にとどまりやすい現象とライターの詳細な地名情報を組み合わせることで,狭い地域からの民生由来ごみの排出量の比較や,ごみ流出防止策の実効性を評価することが可能である。ただし狭い地域間の比較を行う場合は,人の往来によるライターの印刷地名と投棄地の乱れを確認することが必要である。