著者
岡野 多門 安本 幹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.97-104, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
20

海岸に漂着する医療や衛生用品ごみは感染の危険だけでなく,見た人に強い嫌悪感を与える。その投棄実態を知るために,アジア地域の海流の下流に位置する鳥取県で毎月の漂着数を調べた。医療用瓶と注射器の年間平均漂着数は24.5個/(hm・y) で,中国由来が大半で,日本と朝鮮半島由来は少ない。しかし浣腸や痔薬容器,タンポンアプリケーターの大半は日本由来で,合計は2.5個/(hm・y) で,これは日本文字のあるライターの値と大きく相違しない。漂着数/消費数を漂着からみた投棄率とするなら,浣腸とタンポンの投棄率はペットボトルや栄養ドリンク瓶の投棄率と同程度である。これは屋内消費の医療衛生用品ごみが,あえて屋外に持ち出されて投棄されていることを示す。これは投棄者の責任であるが,在宅医療廃棄物と一般家庭の衛生用品ごみの収集体制の相違にも起因する。このように漂着量や投棄率は隠れた投棄の防止策を考える上で重要である。
著者
岡野 多門 安本 幹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 = Journal of the Japan Society of Material Cycles and Waste Management (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.97-104, 2013-09-30
参考文献数
16

海岸に漂着する医療や衛生用品ごみは感染の危険だけでなく,見た人に強い嫌悪感を与える。その投棄実態を知るために,アジア地域の海流の下流に位置する鳥取県で毎月の漂着数を調べた。医療用瓶と注射器の年間平均漂着数は24.5個/(hm・y) で,中国由来が大半で,日本と朝鮮半島由来は少ない。しかし浣腸や痔薬容器,タンポンアプリケーターの大半は日本由来で,合計は2.5個/(hm・y) で,これは日本文字のあるライターの値と大きく相違しない。漂着数/消費数を漂着からみた投棄率とするなら,浣腸とタンポンの投棄率はペットボトルや栄養ドリンク瓶の投棄率と同程度である。これは屋内消費の医療衛生用品ごみが,あえて屋外に持ち出されて投棄されていることを示す。これは投棄者の責任であるが,在宅医療廃棄物と一般家庭の衛生用品ごみの収集体制の相違にも起因する。このように漂着量や投棄率は隠れた投棄の防止策を考える上で重要である。
著者
岡野 多門 安本 幹 安東 重樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.94-105, 2010 (Released:2010-04-15)
参考文献数
46
被引用文献数
9 4

難分解性の海洋浮遊ごみの実態を漂着量から推測する適切な方法を開発するために,鳥取県の3海岸で2005年から2008年までに8回の堆積ごみ調査を行った。漂着物の種類は多く,砂浜上で不均一に分布しているため,範囲を500mとして定形物に限り,それを90種に分けて調べた。それらの排出分野を屋外民生,屋内民生,漁業,農業,医療に分類した結果,民生品が最多となった。しかし品目によって再流出や埋没による消失速度が異なるため,品目間の個数比から漂着個数比を推測することはできない。したがって漂着量の測定には漂着物を撤去する定期的なモニターが必須である。また迅速化のためには各排出分野を代表する数品目を選んでモニターすることが不可避である。また精度と効率を上げるために定義が明確で個数が多く見逃しの少ない品目の選択が重要で,水没や分解しやすい品目,および地域固有性の高い品目を選ぶと排出源に偏りを生むことに注意が必要である。
著者
岡野 多門 安本 幹 安東 重樹
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 = Journal of the Japan Society of Material Cycles and Waste Management (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.226-235, 2010-11-30
参考文献数
27
被引用文献数
7 4

海洋浮遊ごみの多くが陸上から流出しているといわれるがそれを分析的に証明した例はない。ここでは台風が多く襲来した2004年と台風の影響がなかった2008年の鳥取県の海浜ごみを比較し,河川から流出したごみの海浜への影響を検討した。2004年5月から12月までの海浜ごみ数は2008年の約1.7倍であるが,これらの台風は中国・台湾由来物を減らし,由来地域不明物と日本由来物を増加させた。8~9月期の台風の降雨は少なかったが,河川から多くの飲料容器が流出し,河口近傍の海浜に漂着した。河口遠方では砂中に埋没していた小型高比重ごみが高波によって洗い出された。10~11月期の台風は豪雨を伴ったが海浜ごみの総数は8~9月期と同程度であり,河川由来ごみは河口からの流出水によって遠方の海岸まで達した。夏期の少雨台風に比べて秋台風では農薬容器や界面活性剤容器が多く,飲料容器とこれらの放置場所に偏りのあることがわかる。
著者
岡野 多門 安東 重樹 安本 幹
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.521-530, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
3

漂着ライターを鳥取県の複数の砂浜で2004年4月から繰り返し調査し,それらの由来地域を調べた。撤去した総数は27,968個で,印刷文字からそれらの27%の排出由来地域を同定した。日本,朝鮮半島,中国・台湾に由来するライターの個数比は約6:11:10である。しかし同時に調査を行った水・清涼飲料用ペットボトルの由来地域個数比は約6:2:1であった。この由来地域比率の著しい相違は消費量の違いだけでなく,日本に比べて朝鮮半島や中国および台湾での印刷文字入りライターの消費率が高いためと推測された。ペットボトルと異なり,ライターを投棄する時期の偏りは小さいが,両者の漂着時期は似ている。ただし排出地によって海への流出や漂流経路が異なることから,由来地域によって漂着時期が異なる。したがって由来地域別漂着量の測定には漂着時期の相違を考慮した適切な時間間隔の定期調査の継続が必要で,由来地域別漂着量の比較は文字入りライターの使用状況の近い地域に限って可能である。このような調査分析によって,韓国の黄海側からの日本海への流入が少なく,日本海に流入できる日本の南西限界が長崎県付近で,また対馬海流に逆行する漂流が少ないことが分かる。また日本の都道府県まで帰属できたライターの68%が鳥取県由来で,それらを鳥取県の東部,中部,西部の3地域由来に分けると,各地域由来ライターの67-88%が同じ地域内の調査海浜に漂着していた。これらの結果は,河口から流出したライターが直線的な海岸地形でも,沿岸域にとどまる傾向の強いことを示す。沿岸域にとどまりやすい現象とライターの詳細な地名情報を組み合わせることで,狭い地域からの民生由来ごみの排出量の比較や,ごみ流出防止策の実効性を評価することが可能である。ただし狭い地域間の比較を行う場合は,人の往来によるライターの印刷地名と投棄地の乱れを確認することが必要である。