- 著者
-
岡野 多門
森田 晃
- 出版者
- 社団法人 環境科学会
- 雑誌
- 環境科学会誌 (ISSN:09150048)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.150-157, 2013-03-29 (Released:2014-04-15)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
2
ロープや紐は重大な海浜ごみと言われているが,その量を測ることが困難であった。ここでは直径1mm から6mm 未満を紐,6mm 以上をロープと定義し,複合的な二段階法によってロープ類と他のごみ種との漂着量の比較を行った。すなわち5m より短いロープと紐および中型以下の難分解性素材ごみの堆積量を汀線方向5m 区間で測り,長いロープとペットボトルなどの漂着量を汀線方向500m 区間で測定した。これらの調査は,日本を含めた東アジア地域からごみが漂着し,ロープの漂着量をモニターする適地である鳥取県の砂浜で,堆積量は7年間に198回,漂着量は8海岸で3年間毎月測定した。ただし,長いロープは絡まりやすく,それを解くことは困難であるため,太さと長さを測り,比重を0.67g/cm3として漂着重量を算出した。ロープの年間の平均漂着重量は35.1kg/(hm・Y)で,それに対し1L 未満のペットボトルの年間平均漂着重量は4.0kg/(hm・Y)にすぎなかった。そのうち5~0.3m のロープの年間平均漂着重量は全ロープの漂着重量の半分以下の15.1kg/(hm・Y)であるが,0.5m より短いロープの堆積重量は9.92kg/hm であり,それはレジンペレット,非発泡プラスチック破片,ガラス・金属・紙パック飲料容器の各堆積重量より多かった。この事実はロープが日本海で最も重大な漂着ごみ種であることを示す。さらにロープは劣化すると極めて微細な繊維を生じ,その表面積は同じポリオレフィン素材のレジンペレットより圧倒的に大きい。ロープは日本海だけでなく,太平洋にも流出しているため,この状態を放置すると,日本海だけでなく,将来の北太平洋の生物環境や漁業や観光産業にも深刻な影響を与える恐れがある。このため日本を含めた東アジア諸国でのロープの流出防止対策の導入が緊急の課題であり,その対策の有効性を評価する方法が必要である。ここで開発したロープ類の調査法は流出防止策の実効性を評価できる方法である。