著者
宗像 惠
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.37, pp.36-57, 1987
著者
宗像 惠
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

ピエ-ル・ガッサンディは、古代原子論の復興者として近代科学の成立に貢献すると同時に、古代懐疑論との対決を通して認識論上、実証主義的立場を切り開したことで知られる。他面、彼は人文主義者として、また正統カトリック教会の僧として、近代思想とヨ-ロッパの思想的伝統との調停を図った。本研究の目的は、西洋近代科学の成立の哲学的背景、並びに哲学的意義を、ガッサンディの思想的営為に即して解明することにあった。この研究目的に到題するために、まず、ガッサンディが同時代の思想家達と行った論争を介して、時代の哲学史的・科学史的状況を浮き上がらせることを試みる同時に、古代原子論や懐疑論等の検討を行い、最後に、彼の主著『哲学集成』の検討を、哲学史的・科学史的文脈において行う、という方針を立てた。また、ガッサンディの思想が後代に与えた影響の検討をも併せて行うことにした。以上の研究課題は、短期間で全体的に達成することの困難な、多大なものであったが、デカルトやフラッド等の論争相手との思想の比較、古代原子論者エピクロスの哲学なでに関して、研究を深めることができた。また、ガッサンディ自身の主著の研究も着実に進行中である。未だ論文として発表するには至っていないものの、これらの研究の成果によって、西洋近代哲学全体の流れを展望することが、一段と容易になったと考える。本研究の成果のいわば副産物として、西洋近代哲学の歴史を概観する単行本の計画が現実化しつつあること、また、ガッテンディと並び、形而上学的志向を以て、西洋近代の初めに体系的に自然主義的立場を押し進めたスピノザの倫理政治思想についての研究が進み、発表段階に至っていることを、最後に御報告しておきたい。
著者
光末 紀子 宗像 惠 曽根 ひろみ 須藤 健一 山崎 康仕 三浦 伸夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度には、各研究領域に内在するジェンダー問題の摘出と分析が行われ、平成13年度には、研究会の開催と討議によってジェンダーに関する本格的な共同研究が進められた。平成14年度はこれをさらに推し進め、「現代社会における文化的性差を支える価値観と諸規範を根底から問い直す」という共通テーマに対する各人の研究成果を持ち寄って数回の研究会で意見交換を行い、共同討議を通じて研究の成果を統合することがめざされた。この研究計画にもとづき、3年間に合計9回の研究集会が開かれた。それぞれの報告者とテーマは以下のとおりである。第1回 曽根ひろみ「公娼制と梅毒」、桜井徹「『女としての自然』の収奪」。第2回 ブライディ・アンドリュース(ハーバード大学科学史・科学哲学科助教授)「アメリカにおけるジェンダー研究」。第3回 藤目ゆき(大阪外国語大学助教授)「公娼制度と日本軍慰安婦制度」。第4回 ロバート・フローデマン(コロラド鉱業大学教授)"Corrosive Effects : Environmental Ethics, Eco-feminism, and the Metaphysics of Acid-mine Drainage"。第5回 カリーム・ベナマル"Theory of Abundance and Scarcity"、土佐桂子「ミャンマーにおけるトランスヴェスタイト-男装者(ヤウチャシャー)のジェンダー論」。第6回 金野美奈子「性別職務分離研究再考-ジェンダー分析の方法論的リスク」。第7回 三浦伸夫「『レディーズ・ダイアリー』にみる18世紀英国の女性と数学」。第8回 光末紀子「B.パッペンハイムの思想と行動-ドイツにおける第一波フェミニズムの一動向」。第9回 曽根ひろみ「日本近世の法制とジェンダー」。いずれの研究集会においても、濃密な内容の報告をめぐって活発な討論が交わされ、本科研の共通テーマに関する研究分担者間の共通認識はいっそう深められた。その結果、新たな性差規範に基づく個々人のジェンダー・アイデンティティの確立と、あるべき「両性の共同性」への展望とを獲得するための基礎が築かれたと言えよう。さらに、各々の研究分担者における研究の進展の一部を紹介すれば、以下のごとくである。(1)光末は、19世紀末から20世紀初頭にわたるフェミニズム第一波の時代に、多くのフェミニストたちがジェンダーをめぐる様々な論争に参加したが、それらの論争を「母性」というキーワードのもとに検証した。(2)曽根は売買春についての歴史学、民俗学、社会学の研究史を批判的に検討し、それを一冊の単著にまとめた。(3)阪野は、ブレア政権の家族政策が、就労促進型給付の拡大や選別主義の強化といった点で保守党政権との連続性が強いことを明らかにした。(4)宗像は、フロイトのセクシュアリティ論を再検討し、男根中心主義とされるフロイト理論に伏在する、女性的セクシュアリティの始原性の契機を探求した。(5)土佐は、90年代のミャンマーの主要な雑誌に見られるジェンダー関係の記事を収集調査した。(6)上野はフランクフルト学派にみられる家父長制批判の論理とその逼塞を検討し、塚原はハーディングとハラウェイの観点観測論および強い客観性の概念を吟味した。