著者
宮中 文子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.173-180, 2001
被引用文献数
2

中高年女性(祖母)が孫との関わりを持つことは心の健康にプラスに影響するかどうかを明らかにするため,3〜5歳の幼児の母親と祖母に対して質問紙調査を行い,祖母と母親528組について,抑鬱度と主観的幸福感の満足度を心理的健康として分析した.その結果,心理的健康にプラスに影響していた因子は,「健康と感じている」,「日常活動に自立している」,「配偶者が健在である」,「子育てに疲れを感じていない」,「母親との育児方針の相違がない」,「子どもの世話が好き」,「遊びなどを中心とした社会・文化的な子育て参加が多い」などであった.これらのことから,中高年女性では,孫と関わるライフスタイルを主体性に選択すること,母親との豊かな人間関係,遊びを中心とした子育て参加をすることなどを通して,その中で幸福感を見いだしていくことが,心の健康にプラスに影響すると考えられる.
著者
宮中 文子 松岡 知子 五十嵐 稔子 本庄 英雄 北脇 城
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.63-72, 2008
被引用文献数
1

女性の妊娠・出産・育児期において生じるストレスの度合いを,客観的に評価するため尿中ストレス関連物質を測定した.研究方法は,妊娠経過に異常なく,経膣自然分娩した初妊婦8人について,妊娠35〜36週,産後4〜6日,産後3〜4週の3つの時期に,ストレスに関する質問紙調査と尿中ストレス関連物質の測定を行い解析した.その結果,5事例における6場面のストレスの内容は,出産や育児への不安,出産体験の不満,児のリスクへの不安,育児上の不安などの情動であった.その6場面でストレスに一致して,尿中アドレナリン値,ノルアドレナリン値,ドーパミン値,コルチゾール値,17-OHCS,17-KS-Sのすべてで高値が認められたのは2場面で,アドレナリン値,ノルアドレナリン値を含む5項目の高値がみられたのは1場面,4項目の高値は3場面でみられた.出産への不安がストレスだった2事例ではストレスがなくなった出産後も高値を示したことから,生理的側面での,ストレスからの修復が遅れている可能性が考えられた.これらのことから,尿中アドレナリン値とノルアドレナリン値については,妊娠・出産・育児期のストレスを評価できることが示唆された.その他の尿中ストレス関連物質との関係についてはこの事例のみでは明らかにならなかった.今後,事例を重ねて検討していきたい.