- 著者
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宮内 貴之
佐々木 祥太郎
佐々木 洋子
最上谷 拓磨
白濱 勲二
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.3, pp.335-344, 2021-09-30 (Released:2022-07-04)
- 参考文献数
- 21
脳卒中後は, 高い頻度で注意障害が生じる。注意障害は Activities of Daily Living (ADL) に影響を与えるが, 机上検査を用いた検討が多く, 行動観察評価である Moss Attention Rating Scale 日本語版 (MARS-J) を用いた検討はされていない。本研究の目的は急性期脳卒中患者における行動観察評価と ADL の関連を明らかにすることとした。対象は急性期脳卒中患者 64 名とし, 行動観察評価と机上検査および ADL を退院前 1 週間以内に評価した。評価指標は, 行動観察評価は MARS-J, 机上検査は Clinical Assessment for Attention (CAT) , ADL は Functional Independence Measure (FIM) を用い, 各指標の関連を検討した。Spearman の順位相関係数の結果, FIM と MARS-J は高い相関関係があった。また, FIM と CAT の Visual Cancellation Task (VCT) の所要時間, Symbol Digit Modalities Test (SDMT) の達成率も相関があった。一方, FIM と VCT の正答率と的中率は低い相関を示した。これらのことから, 急性期脳卒中患者では注意機能の行動観察評価と ADL は関連があり, ADL 上の注意障害を捉える上で MARS-J が有用である可能性が考えられた。