著者
佐々木 洋子 佐々木 祥太郎 宮内 貴之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.532-538, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
15

今回,上位頚髄後索に多発性硬化症を再発し,利き手である右上肢の表在および深部感覚が脱失した症例を経験した.症例の感覚障害は免疫吸着療法で改善したが,治療経過において静的2点識別覚や立体覚の障害を認め,手指の巧緻動作が拙劣となるUseless hand syndromeを呈していた.作業療法では,手の機能を細分化した能動的な感覚再学習と,実生活に汎化を促す介入を実施した.治療効果に合わせて,感覚障害に対するアプローチを行うことで,免疫吸着療法開始3週間で,スムーズに実用的な右上肢機能を再獲得することができたと考えられた.
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.263-269, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
27

本研究はBox and Block Test(以下,BBT)が,急性期脳損傷患者に対して評価可能な食事動作に関連する評価指標となりうるかを明らかにすることを目的とした.対象は78名(食事動作自立群:54名,非自立群:24名)であった.その結果,2群間でBBTに有意な差があり,その効果量も大きいことが確認された.また,BBTは食事動作の自立度と高い相関関係を示し,Receiver Operating Characteristic曲線のArea Under the Curveでは良好な判別能を示した.そのため,BBTは急性期脳損傷患者の食事動作の自立度に関連する上肢パフォーマンスの評価指標となることが示唆された.
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨 白濱 勲二
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.335-344, 2021-09-30 (Released:2022-07-04)
参考文献数
21

脳卒中後は, 高い頻度で注意障害が生じる。注意障害は Activities of Daily Living (ADL) に影響を与えるが, 机上検査を用いた検討が多く, 行動観察評価である Moss Attention Rating Scale 日本語版 (MARS-J) を用いた検討はされていない。本研究の目的は急性期脳卒中患者における行動観察評価と ADL の関連を明らかにすることとした。対象は急性期脳卒中患者 64 名とし, 行動観察評価と机上検査および ADL を退院前 1 週間以内に評価した。評価指標は, 行動観察評価は MARS-J, 机上検査は Clinical Assessment for Attention (CAT) , ADL は Functional Independence Measure (FIM) を用い, 各指標の関連を検討した。Spearman の順位相関係数の結果, FIM と MARS-J は高い相関関係があった。また, FIM と CAT の Visual Cancellation Task (VCT) の所要時間, Symbol Digit Modalities Test (SDMT) の達成率も相関があった。一方, FIM と VCT の正答率と的中率は低い相関を示した。これらのことから, 急性期脳卒中患者では注意機能の行動観察評価と ADL は関連があり, ADL 上の注意障害を捉える上で MARS-J が有用である可能性が考えられた。
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨 榊原 陽太郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.487-493, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
21

本研究の目的は,Bálint症候群を呈した患者1名を対象に日常生活活動(ADL)で用いられる代償手段を明らかにすることとした.事例は左後頭葉出血で急性期病院に入院中の80歳代女性とした.急性期病院入院中に事例のBálint症候群の重症度に変化はなかったが,ADLは向上し,セルフケアが発症から4週間で自立した.向上したADLでは非利き手を用いた視覚的な手がかりと体性感覚による代償手段を用いていた.このことから,Bálint症候群を呈した患者のADLの再獲得には非利き手を用いた視覚的な手がかりと体性感覚を活用した代償手段の練習が有効であると示唆された.
著者
佐々木 洋子 高橋 香代子 佐々木 祥太郎 宮内 貴之 榊原 陽太郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.683-690, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,急性期脳卒中片麻痺患者の日常生活における麻痺側上肢の使用頻度に影響を及ぼす要因について,基本特性や身体機能,麻痺側上肢の使用方法に対する理解度の観点から,明らかにすることである.対象は発症から1週間以内の急性期脳卒中患者56名とした.多変量ロジスティック回帰分析の結果,麻痺側上肢の日常生活における使用頻度には,上肢麻痺の程度と理解度が影響することが明らかになった.この結果から,急性期の作業療法では,麻痺側上肢の機能改善を図ることに加え,麻痺側上肢の使用方法に対する理解度を評価し,日常生活での使用を促す介入が必要であると考えられた.
著者
奥乃 博 中臺 一博 公文 誠 糸山 克寿 吉井 和佳 佐々木 洋子 昆陽 雅司 合原 一究 鈴木 麗璽 加賀美 聡 田所 諭
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究では,ロボット聴覚ソフトHARKの「聞き分ける技術」を基に,自然環境・災害現場でも通用するように,豊富な機能拡充・高性能化と応用に取り組んだ.HARKはWindows版提供により9万件弱のダウンロードがあった.多人数インタラクション,音楽共演ロボットの可能性を示し, iGSVD-MUSICの開発によるUAV用音源定位の頑健化,索状ロボット用に姿勢推定・音声強調の開発により,レスキューロボットへの音利用の可能性を示し,さらに,カエルの合唱の解明,野鳥の鳴交解析のためのHARKBirdの開発と実地検証により音響生態学への可能性を実証し,ロボット聴覚の多面的展開のための基礎技術が確立できた.
著者
佐々木 洋子 金吉 雅人 加賀美 聡 溝口 博 榎本 格士
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp."1P1-C13(1)"-"1P1-C13(4)", 2009-05-25

This paper proposes a sound identification method for a mobile robot in home and office environment. We propose a simple sound database called Pitch-Cluster-Maps(PCMs) based on Vector Quantization approach. Binarized frequency spectrum is used for PCMs codebook generation. It can describe a variety of sound sources, not only voice, from short term sound input. The proposed PCMs sound identification requires several tens(msec) of sound input, and is suitable for a mobile robot application which condition is dynamically changing. We implemented the proposed method on our mobile robot audition system equipped with a 32ch microphone array. Robot noise reduction using proposed PCMs recognition is applied to each input signal of a microphone array. The performance of daily sound recognition for separated sound sources from robot in motion is evaluated.
著者
弘末 雅士 鈴木 信昭 唐沢 達之 貴堂 嘉之 高橋 秀樹 荷見 守義 石川 禎浩 清水 和裕 土田 映子 大石 高志 疇谷 憲洋 佐々木 洋子 遠藤 正之 久礼 克季
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

地中海世界・イスラーム世界・欧米・中南米・南アジア・東南アジア・東アジアにおける奴隷の歴史を比較検討することができ、地域相互間の奴隷取引や奴隷をめぐる観念の展開を広域的に解明できた。また移住者の広域ネットワークの形成に果たす役割とともに、移住先の社会の秩序構築に積極的に関わったことが明らかとなった。そうした移住者を迎えた現地人妻妾のアジアにおける事例が比較検討され、彼女らやその子孫が、前近代において商業活動や港市の社会統合に重要な役割を担ったことが解明された。さらに近現代社会における新たな仲介者や媒体の存在に注目する必要性を認識した。