著者
清水 邦夫 南 美穂子 宮岡 悦良 高際 睦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

完全データが与えられた場合の多変量正規分布の母数推定論は、多変量解析の多くの書物において取り上げられている題材である。本研究では、主に不完全データもしくはミッシング(結測)のあるデータを含む場合の統計解析法について研究し、つぎの結果を得た。(1)2つの多変量正規分布にしたがう完全データから松下の類似度の最尤推定法および制限付き最尤法を利用する推定法について調べ、3つの偏り修正法の比較を行った(Minami and Shimizu, 1999)。本研究の結果は不完全データに対して発展する余地が残されている。(2)2地点降雨量の積モーメントと共分散のしきい値法による推定について調べた(Hossain and Shimizu, 1999)。降雨量データは、レーダにより降雨量を推定する状況を考えると、あるダイナミックレンジ内のデータから分布のパラメータを推測せざるを得ないという意味で不完全なデータである。しきい値法はそのような不利な状況を軽減する方法の一つと考えられる。(3)2つの2変量正規分布にしたがう不完全データから松下の類似度の最尤推定法および制限付き最尤法を利用する推定法について調べた(Minami. Shimizu, and Mishra, to appear)。(4)つくばで得られた地上ライダー雲底データについて分布の検討した(Takagiwa et al., to appear)。雲の鉛直分布は、もし下層に光学的に厚い雲があると地上ライダーからのデータはミッシングを含む構造になっていると考えられるので、衛生ライダーデータによる今後の検討が必要である。
著者
中根 允文 田崎 美弥子 宮岡 悦良
出版者
医療と社会
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.123-131, 1999
被引用文献数
25

生活の質(Quality of life,QOL)を測る尺度が近年数多く開発されてきている。それらの被験者となる人たちを特定のグループ(ある疾病に罹患した患者におけるなど)に限定するか,全般的なものに限定するかによって,その尺度のあり方は変わってくる。われわれは,健康に関連したQOLを広く測定できるものとして開発されたWHOQOL短縮版(26項目版)についていくつかの状態について検討してきたが,今回多数の一般住民におけるQOLスコア値を把握する調査を行ったので報告する。対象は東京都・大阪府・長崎市の住民1,410人(男性679人,女性731人)で,彼らの平均QOL値は3.29(男性3,24,女性3,34)であった。調査地域による差はなく,性差も有意なものではなかった。年齢群で見ると,60歳以上の高齢者が30歳代より有意に高いQOL値を示した。同時に行った全般健康調査票(GHQ)の結果と比較対照したとき,精神身体的健康度が低下するとQOL値も低下していた。<BR>多数の一般住民における平均的なQOL値を評価しておくことは,さまざまな負荷のもとにある対象のQOL値の問題を探る上で必須である。今回の資料を前提にして,これから各種の状態,例えば慢性疾患の患者,長期的な障害に悩む人たち,あるいは彼らの介助者などにおけるQOLの実状が明らかにされ,より適切な対応が図られるようになることを期待したい。