著者
清水 克彦
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

本年度は、研究の最終年度として、次のことを行った。1)数量的なリテラシーを育成するために役立つソフトウエアの開発イスラエルの数学教育学者であるイェルシェルミーが開発し、世界的に定評のあるソフトウエアであるCalculus Unlimitedに着目し、その日本語化を行うこととした。このソフトウエアは、代数・関数・微積分の統合的な学習環境であるとともに、現実現象とグラフ化による数学的な解析を可能にしたものであり、高等学校における数量的なリテラシーの育成にとって有効であると思われた。そこで、研究協力者として、垣花京子(東京家政学院筑波女子大)、福田千枝子(白鵬大学)を依頼し、共同のもとに、日本語化を進めた。それは次のように行った。(1)イェルシェルミーに日本における版権放棄の交渉:これによって、日本では基本的にローヤリティーのない開発が可能となった。(2)実際のソフトウエアの日本語化:中山良一(高千穂商科大学情報メディアセンター)の協力を得て、日本語化を完成させた。(3)実際の授業開発:福田千枝子が中心となって、実際に高等学校で使用し、日本での使用方法について検討を行った。(4)マニュアルの作成:使用法のみならず授業例を挙げたマニュアルを完成させた。(5)頒布:21世紀教育研究所の協力を得え、手数料のみで教員に配布を開始した。2)研究成果の発表垣花、福田、中山の3名と清水が連名で、アジア数学テクノロジー会議で発表した。
著者
清水 克彦
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.13-20, 2002-11-29 (Released:2014-12-25)
被引用文献数
2

初等中等教育段階の算数・数学教育において電卓の活用が注目され推進されている。本稿では、算数・数学教育用に開発された諸電卓の機能をまとめ、その教育的可能性を指摘する。さらに、その活用の実際について、外国のカリキュラム・ドキュメント、国際調査の結果、日本の指導要領、教科書、算数・数学教育研究の点から検討し、日本での活用が遅れていることを同定した。さらに、活用の推進を遅らせている要因について、外的・内的の2面から指摘した。
著者
中島 さち子 田中 香津生 清水 克彦 山田 浩平 山羽 教文
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.45-59, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
24

本研究の目的は,小学校「体育」で取り扱うゴール型ボール運動「タグラグビー」の新たな学習指導計画として,プログラミング的思考をとりいれた,STEAM化されたタグラグビーの学習指導計画を開発し,その学習効果を調査することである.まずは,タグラグビーを数理モデル化した碁盤ゲームを開発し,局面での認知・判断要素を抽出したAIシミュレーションツールを開発,スポーツにプログラミング的思考を導入し,多角的に戦術を考えさせる計9時間の学習指導計画を立案した.その後,公立小学校第5学年2クラス計52名を対象に本学習指導計画を実施し,事前事後の児童のライフスキルやパフォーマンスの向上,学習や運動への態度の変化,情意や認知の形成などを調査した.結果,タグ取得数やパス回数の有意な増加 (p<0.01),問題解決力や対人関係力などの有意な向上 (p<0.05) などパフォーマンスやライフスキルの向上が見られた.従って,本学習指導計画は,平成29年公示の小学校学習指導要領 (文部科学省,2018a) にて奨励されているプログラミング的思考を用いた教科等横断的な学習指導計画の一例であり,体育でも学習効果があると示唆された.
著者
原 健太郎 渡辺 雄貴 清水 克彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.239-252, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
22
被引用文献数
1

夜間定時制高校は,算数・数学の基礎学力に課題を抱える生徒が多く在籍している.本研究では,夜間定時制高校でのアクティブ・ラーニング型の授業設計の検討を見据え,数学科での反転授業の有効性について検証することを目的とした.そのためにADDIE モデルに従って開発した授業に対し,ID の目指す価値としての効果・効率・魅力の観点から検証し,以下の結果を得た.授業前に動画を視聴しない状況,動画を視聴していてもそれを前提とした授業展開は厳しい状況が見られた.学習形態の変容により学習に困難を抱える生徒は取り組みやすくなり,教え合いの対話的活動での動画活用や,復習として主体的な動画利用の状況が見られた.定期考査等の得点が低かった生徒でも得点が増加し,効果的な習得が確認された.学習場面での必要時間が短縮され,効率的な学習が行われた.反転授業によって,基礎学力に課題を抱える生徒において大きな効果が得られる可能性が示唆された.
著者
石坂 和夫 加藤 幸次 浅沼 茂 清水 克彦 高浦 勝義 樋口 信也
出版者
国立教育研究所
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、日米の「初等・中等カリキュラム」の実態を把握するための事前準備研究である。そのため、将来、科学研究費補助金(国際学術研究)の申請をするために必要な情報・資料を収集し、日米の協力研究が円滑に実施できるような準備資料を作成することである。1 研究遂行に必要な研究協力校として、研究分担者加藤が、愛知県の公立小学校2校、岐阜県の公立小学校1校、東京都の公立小学校2校、愛知県の公立中学校2校を対象校として研究の協力いただいてきた。これらの学校教師ならびに個性化・個別化に取り組んでいる教師・教育関係者の研究協力をいただき、必要な情報を収集・整理してきた。2 アメリカ側の研究協力者との情報交換を行った。たとえば、米国教育省のロバート・リースマ博士、イリノイ大学のジャック・イーズリ教授、ミシガン州教育委員会のジョン・チャブマン博士、オハイオ州教育委員会のケント・マイナー博士、ペンシルバア州立大学のジェイコブ・サスカインド博士、ボストンの教育開発センター(EDC)等との情報交換を行った。3 日本の教育に関するアメリカ側の代表的なものとして、次の研究物を検討した。【.encircleda.】 R.Leestma &H.Walberg,“Japanese Educational Productivity"【.encircledb.】 H.W.Stevenson & J.W.Stigler,“The Learning Gap"【.encircledc.】 Jack & Elizabeth Easley,“Kitamaeno school* as an Environment in which Children Study Mathematics Themselves"4 ワークショップに必要な日英両文の調査票を作成し、将来の共同研究の準備をした。以上の研究実績を発展させた研究を今後進めたいと考えている。
著者
清水 克彦
雑誌
靴の医学 (ISSN:09155015)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.131-132, 2006-03-01
著者
鈴木 克明 市川 尚 向後 千春 清水 克彦
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、教材や授業の動機づけの側面を評価して問題点を見つけ出し、授業や教材の改善作業を支援するためのツール群を開発した。J・M・ケラーが提唱するARCS動機づけモデルに基づいて、ARCSモデルの枠組みである注意・関連性・自信・満足感の4要因それぞれ4項目ずつ、合計16項目からなる「ARCS評価シート」を設計した。それを複数の大学における学生による授業評価で試用し、因子分析などの手法により信頼性と妥当性を検討するデータを収集して改良し、「ARCS評価シート」最終版を提案した。さらに、「ARCS評価シート」をWeb上で実施し、データの回収及び統計的処理を自動的に行う機能を備えた「Web版ARCS評価シート」を開発し、大学における学生による授業評価の実践場面で操作性と実用性を確認した。また、様々な領域で提案されている動機づけに関する教授方略を収集し、ARCSの4要因をもとに分類・整理した「ARCS改善方略ガイドブック」をブックレット形式にまとめた。その内容を「ARCS評価シート」での診断結果と連動させて動的に提示する「Web版ARCS改善方略ガイドブック」を開発し、その簡便性などを調査した。「ARCS評価シート」で得点が低かった項目についての改善方略を選択して表示し、問題点に特化した改善方略を組み合わせて授業の再設計を支援する機能を備えていることが好意的に評価された。以上の成果をWeb上に公開し、教材や授業のデザインに関係する実践者の参考に供した。
著者
高浦 勝義 河合 久 有本 昌弘 清水 克彦 松尾 知明 山森 光陽
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、従来の標準テストに代わる新たな評価法としてのポートフォリオ評価(portfolio assessment)に着目し、その理論的検討を行うとともに実践レベルにおける具体化方策を探ることを目的にした。その結果、理論面においては、問題解決評価観なる新たな評価観を提唱し、このもとで(1)指導と評価の一体化、(2)自己学習力の向上及び、(3)保護者等外部への説明責任に向けた評価という3つの評価のねらいを同時に、かつ統一的に実現するための基本モデルを開発した。また、実践レベルにおいては、これら(1)〜(3)の基本モデルの具体化のために、公立小・中学校からの研究協力を得ながら、すべての教科、道徳、特別活動において「生きる力」より導かれた評価の4観点(「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」)を基にルーブリック(rubric)を含む単元指導計画を作成するとともに、授業と評価の実際に取り組んだ。
著者
小松 彦三郎 清水 克彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この間の精力は、ほとんど2008年8月に東京で開催した関孝和三百年祭記念数学史国際会議の組織とこの会議録編集に費やされた。研究代表者自身は、関による連立代数方程式の未知数消去の理論(1683)及びその後の日本人数学者による研究の詳細とその独自性を明らかにした。これらは、従来、江戸時代の関流数学の伝統と、これをほぼそのままに受け入れた近代の数学史家の解釈によって理解されてきたが、今日の目では批判に堪ええない。この他、ケルビン卿(1855)とヘヴィサイド(1887)の電信方程式に対して新しい解法を与えることができた。