- 著者
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山元 良
藤島 清太郎
上野 浩一
宮木 大
栗原 智宏
堀 進悟
相川 直樹
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.7, pp.390-396, 2009-07-15 (Released:2009-09-04)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
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塩素ガスへ暴露すると上気道粘膜の刺激症状や急性肺損傷acute lung injury(ALI)などの呼吸器系障害が生じるが,ALI発症までには数時間以上を要するという報告が散見されている。今回我々は,塩素ガス吸入後に遅発性のALIを発症した 2 症例を経験したので報告し,ALI発症までの時間と症状出現から増悪までに要する時間について検討した。症例 1 は26歳の女性で,自殺目的で 3 種類の洗剤を混合し,発生した塩素ガスを吸入した。来院時無症状であったが,受傷10時間後に低酸素血症が出現し,胸部X線撮影・胸部CTで両側肺の浸潤影が出現した。ALIの診断でsivelestat sodium hydrateを投与し,受傷 6 日目に軽快退院した。症例 2 は64歳の男性で,塩素含有化学物質を誤って混合し,発生した塩素ガスを吸入した。来院時より上気道症状や低酸素血症を認めたが,受傷35時間後に病態が増悪し,胸部CTでのスリガラス状陰影の出現を認め,ALIと診断した。ステロイドを経口投与し,PaO2/FIO2 ratioは改善した。本 2 症例の経過と,塩素ガス暴露による症例報告や動物実験の報告から検討すると,症状の出現までに10時間程度の時間を要し,受傷後48時間程度で病態が最も増悪することが予測された。以上より,塩素ガスに暴露した患者では,来院時無症状であったとしても10時間程度の経過観察を行い,有症状の患者に対しては48時間程度の慎重な経過観察が必要と考えられた。