著者
稲垣 克哲 森 奈美 本田 洋士 髙木 慎太郎 辻 恵二 茶山 一彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.448-454, 2017-08-20 (Released:2017-08-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 15

症例は20歳,男性.社交不安障害の治療中に全身倦怠感と黄疸が出現し,入院した.自己判断で抗ストレス・強壮目的にアシュワガンダと複数の処方箋薬を併用していたが,入院1カ月前からアシュワガンダを過剰摂取していた.DDW-J 2004薬物性肝障害診断基準では8点「可能性が高い」となり,アシュワガンダによる肝細胞障害型の薬物性肝障害と診断したが,本製品及び併用薬の中止後,肝酵素は低下するも高ビリルビン血症は増悪し,中止1カ月後にT-Bil 31.3 mg/dLとなった.肝生検では類洞内に限局して多数の胆汁栓を認め,ウルソデオキシコール酸(UDCA)とフェノバルビタールにて利胆を図り,改善した.薬物性肝障害において,起因薬物中止後も肝内胆汁鬱滞が増悪することは少なく,またアシュワガンダによる肝障害の報告事例はない.アシュワガンダは無承認無許可医薬品であり,販売実態の調査や不適切使用について注意喚起が必要である.
著者
木村 友希 兵庫 秀幸 石飛 朋和 鍋島 由宝 有広 光司 茶山 一彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.586-588, 2010 (Released:2010-11-05)
参考文献数
5

The glucose tolerance was evaluated in 136 nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) patients without overt diabetes mellitus. All patients underwent liver biopsies and 75-g oral glucose tolerance tests. Plasma glucose and insulin levels were analyzed periodically for 3 h after oral glucose loading. Irrespective of the hemoglobin A1c levels, impaired glucose tolerance, including diabetes mellitus, was detected in 61% of the NAFLD patients. While the secretion pattern of glucose after glucose loading was similar among the NAFLD patients, postprandial insulin levels increased in parallel with the aggravation of histological findings (fibrosis stages and NAFLD activity scores). In conclusion, the present data shows the importance of performing the glucose tolerance test in NAFLD patients without overt diabetes mellitus.
著者
阿部 敏紀 相川 達也 赤羽 賢浩 新井 雅裕 朝比奈 靖浩 新敷 吉成 茶山 一彰 原田 英治 橋本 直明 堀 亜希子 市田 隆文 池田 広記 石川 晶久 伊藤 敬義 姜 貞憲 狩野 吉康 加藤 秀章 加藤 将 川上 万里 北嶋 直人 北村 庸雄 正木 尚彦 松林 圭二 松田 裕之 松井 淳 道堯 浩二郎 三原 弘 宮地 克彦 宮川 浩 水尾 仁志 持田 智 森山 光彦 西口 修平 岡田 克夫 齋藤 英胤 佐久川 廣 柴田 実 鈴木 一幸 高橋 和明 山田 剛太郎 山本 和秀 山中 太郎 大和 弘明 矢野 公士 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.384-391, 2006-08-25
被引用文献数
18 56

極く最近まで殆んど不明状態にあった我国のE型肝炎の実態を明らかにする目的で,我々は全国から総数254例のE型肝炎ウイルス(HEV)感染例を集め,統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴を求めてこれを解析した.その結果,[i]HEV感染は北海道から沖縄まで全国津々浦々に浸透していること;[ii]感染者の多くは中高年(平均年齢約50歳)で,且つ男性優位(男女比約3.5対1)であること;[iii]我国に土着しているHEVはgenotype 3とgenotype 4であるが,後者は主に北海道に偏在していること;[iv]年齢と肝炎重症度との間に相関があること;[v]Genotype 3よりはgenotype 4による感染の方が顕性化率も重症化率も高いこと;[vi]発生時期が無季節性であること;[vii]集積症例全体の約30%は動物由来食感染,8%は輸入感染,2%は輸血を介する感染に帰せしめ得たものの,過半の症例(約60%)に於いては感染経路が不明のままであること;等の知見を得た.<br>
著者
後藤 力 東 幸仁 佐々木 正太 中河 啓吾 木村 祐之 野間 玄督 原 佳子 茶山 一彰 河村 光俊 奈良 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-91, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
12

本研究では有酸素運動を行うことで一酸化窒素(NO)産生増加を介する血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。対象は運動習慣を持たない健常男性8名(平均年齢:27±3歳)とした。血管内皮依存性拡張物質としてアセチルコリン(ACh)を使用し,血管内皮非依存性拡張物質として 硝酸イソソルビド(ISDN)を使用した。また,NO合成酵素阻害薬としてNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を使用した。運動方法は最大酸素摂取量の50%とし,1日30分,5回/週の頻度で3ヶ月間行った。前腕血流量の変化はプレチスモグラフにて測定した。ACh投与では運動後に有意な増加を認め,NO合成酵素阻害薬であるL-NMMA投与下では消失した。血管内皮非依存性拡張反応では有意な変化を認めなかった。これらより有酸素運動による血管内皮機能の増強は,NO産生増加を介することが示唆された。
著者
児玉 健一郎 河岡 友和 相方 浩 若井 雅貴 寺岡 雄吏 稲垣 有希 盛生 慶 中原 隆志 平松 憲 柘植 雅貴 今村 道雄 川上 由育 岡田 友里 森本 恭子 織田 麻琴 木村 修士 有廣 光司 茶山 一彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.162-170, 2018-03-20 (Released:2018-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

63歳,男性.20年前,検診にて肝腫瘤を指摘されたが詳細不明であった.4年前の40×35 mmから60×50 mmと増大傾向となり,紹介入院となった.腹部超音波検査では肝S6/7に60×50 mm大の不整形,境界不明瞭,内部不均一,低エコー腫瘤を認めた.造影CT検査では肝S6/7に60×50 mm大の病変は共に単純CTで等吸収,造影早期相で濃染,後期相で淡い低吸収となった.ソナゾイド造影超音波検査では動脈優位相では全体が不均一に濃染された.門脈優位相ではhypo echoicとなりpost-vascular phase(Kupffer phase)ではdefectを呈した.病理組織検査では肝原発濾胞性リンパ腫と診断され,外科手術にて完全著効となり12カ月生存中である.肝原発濾胞性リンパ腫は非常に稀な疾患であり報告する.
著者
茶山 一彰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.765-767, 2018-09-10 (Released:2018-09-10)
参考文献数
9

肝硬変,肝細胞癌の原因となるB型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルスの治療は近年格段に改善し,C型では100%に近い症例でウイルス排除が可能となった.しかし,ウイルス排除後の肝細胞癌の発症はある程度の頻度で認められるため,慎重な経過観察が必要である.また,ウイルス排除にともなう肝細胞癌の急速な進展,B型肝炎ウイルスの活性化にも注意が必要である.一方B型肝炎は核酸アナログの投与によりウイルス増殖の抑制,病態の進展の抑制は可能となった.しかし,肝細胞癌の発症はなくなるわけではなく,この点にも注意が必要である.最近非B非Cの肝細胞癌が急速に増加してきており,その原因となる自己免疫性肝炎,脂肪性肝炎,アルコール性肝障害などが新たな課題となっている.
著者
日山 亨 田中 信治 茶山 一彰 吉原 正治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1437-1443, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
22

判例データベースで検索可能で,かつ,判決文が入手可能な上部消化管内視鏡・X線検査が関係した民事訴訟事例は,13事例(内視鏡検査関連9事例およびX線検査関連4事例)認められた.内視鏡検査が関係した9事例の内訳は,前処置後のショックが関係したものが4事例,胃癌の見落としおよび生検後の大量出血に関係したものがそれぞれ2事例,鎮静後の交通事故に関係したものが1事例であった.X線検査が関係した4事例の内訳は,胃癌の見落としとバリウムによる腸管穿孔に関係したものがそれぞれ2事例であった.5事例で医療機関側が勝訴しており,患者に悪い結果が生じたからといって,必ずしも医療機関側の責任とされてはいなかった.医療機関側の責任が認められるためには,3つの要件(患者側の損害,医療機関側の過失,因果関係)が揃う必要がある.事故時には,速やかに上記3要件について検討し,患者側に対する医療機関側の態度を決定する必要がある.
著者
中村 太一 斎藤 聡 池田 健次 小林 正宏 鈴木 義之 坪田 昭人 鯉田 勲 荒瀬 康司 茶山 一彰 村島 直哉 熊田 博光
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.157-162, 1997-03-05 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12

従来より肝性脳症合併肝硬変症例では頭部MRIT1強調画像にて淡蒼球に高信号域を認めるとされる. 今回各種慢性肝疾患で頭部MRIを施行し若干の知見を得た. T1強調画像の淡蒼球の高信号は慢性肝炎では21例中1例 (4.8%), 肝硬変では41例中32例 (78%) に出現し, Child分類別ではA59%, B78%, C100%であり, 出現率は肝機能と相関がみられた.この所見は経過観察により不可逆性であった.さらに脂肪抑制画像では高信号域はより明瞭となり, その原因が脂肪沈着でないことが示唆された. MRIの所見は慢性肝炎ではほとんどみられず, 肝硬変では脳症を発症する以前より病変を認め, 慢性肝疾患の重症度の予測に役立つと考えられた.
著者
小南 陽子 相方 浩 平松 憲 田中 未央 苗代 典昭 中原 隆志 本田 洋士 長沖 祐子 村上 英介 宮木 大輔 三木 大樹 河岡 友和 高木 慎太郎 平賀 伸彦 柘植 雅貴 芹川 正浩 今村 道雄 兵庫 秀幸 川上 由育 高橋 祥一 佐々木 民人 茶山 一彰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.456-464, 2013 (Released:2013-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は61歳男性.毎年,検診にて40mm大の肝嚢胞を指摘されていたが,2011年の腹部超音波検査にて肝嚢胞の増大を指摘.造影CT検査などの各種検査を行ったが確定診断に至らず,嚢胞周囲の軽微な胆管拡張の精査目的にてERCPを施行.その際の胆汁細胞診にて多量の肝吸虫卵を認め,肝吸虫症と診断.プラジカンテルの内服により肝嚢胞の縮小と血中肝吸虫抗体価の陰性化が得られ,肝吸虫の駆虫が確認された.
著者
日山 亨 田中 信治 茶山 一彰 吉原 正治
出版者
The Japanese Society of Gastrointestinal Cancer Screening
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.393-400, 2011-05-10
被引用文献数
2

今回, 上部消化管内視鏡検査(生検を含む)に伴う稀な偶発症に関する報告について, レビューを行った。1990年から2009年末までに英語(抄録を含む)で医学雑誌に発表されたものをMedline を用いて検索した。これら報告からデータを抽出し, 検討を行った。該当する偶発症としては,(1)出血:食道粘膜内血腫および十二指腸血腫,(2)空気塞栓症,(3)気腫・気胸・緊張性気腹:皮下気腫, 後腹膜気腫等,(4)腹部コンパートメント症候群,(5)横隔膜ヘルニア,(6)内視鏡嵌頓,(7)口蓋垂炎,(8)膵炎,(9)感染症関連:敗血症等,(10)び漫性脳浮腫があった。報告の中には死亡例もあった(十二指腸血腫や空気塞栓症等)。上部消化管内視鏡検査に伴う稀な偶発症の中には迅速な対応が必要なものもあり, 内視鏡医はこれらについて, 十分な知識を持っておく必要があると思われた。
著者
日山 亨 田中 信治 茶山 一彰 吉原 正治
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.393-400, 2011-05-10
参考文献数
37
被引用文献数
2

今回, 上部消化管内視鏡検査(生検を含む)に伴う稀な偶発症に関する報告について, レビューを行った。1990年から2009年末までに英語(抄録を含む)で医学雑誌に発表されたものをMedline を用いて検索した。これら報告からデータを抽出し, 検討を行った。該当する偶発症としては,(1)出血:食道粘膜内血腫および十二指腸血腫,(2)空気塞栓症,(3)気腫・気胸・緊張性気腹:皮下気腫, 後腹膜気腫等,(4)腹部コンパートメント症候群,(5)横隔膜ヘルニア,(6)内視鏡嵌頓,(7)口蓋垂炎,(8)膵炎,(9)感染症関連:敗血症等,(10)び漫性脳浮腫があった。報告の中には死亡例もあった(十二指腸血腫や空気塞栓症等)。上部消化管内視鏡検査に伴う稀な偶発症の中には迅速な対応が必要なものもあり, 内視鏡医はこれらについて, 十分な知識を持っておく必要があると思われた。
著者
楠 裕明 春間 賢 鎌田 智有 原 睦展 眞部 紀明 田中 信治 茶山 一彰 青木 信也
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
Journal of smooth muscle research. Japanese section (ISSN:13428152)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.J-163-J-168, 2002-12-27

非侵襲的な固形食の胃排出検査法として^<13>C-octanoic acid呼気試験が用いられつつある.われわれはこれまで超音波法を,非侵襲的な胃運動機能検査法として臨床応用してきたが,今回呼気試験と超音波法の二つの結果を比較した.17名のFunctional dyspepsia (FD)患者と10名の健常人を対象とした. ^<13>C-octanoic acid 100 mg を加えた卵黄でスクランブルエッグを作り,ご飯の上にのせた後市販の親子丼の素をかけて424 kcalの固形試験食とした.試験食を摂取後,超音波法は座位で3時間まで15分間隔で観察し排出曲線を描いた.呼気試験は3時間までを超音波法と同じ15分間隔で,3時間から6時間までを30分間隔で呼気を採取し,赤外線分光機を用いて^<13>C0_2を測定した.両試験の共通した排出動態指標であるT_<1/2>とlag phase を比較検討したが,呼気試験のT_<1/2>と超音波法のT_<1/2>はr^2=0.638と強い相関を示したが,両者の結果が一致する訳ではなかった. T_<1/2>とlag phase は共にFD患者で健常人より延長していた.呼気試験と超音波法の胃内残存率曲線は一致する傾向にはあったが,超音波法でのばらつきが大きかった.