著者
倉田 真由美 宮田 久枝 樋口 善之 松浦 賢長
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.468-475, 2009-01-01
参考文献数
14

【目的】本研究は現代の高校生と大学生の男女を対象にダイエットの実施状況について調査し,「ダイエットの経験の有無とその結果」と「自己肯定感」との関係を明らかにすることを目的に調査研究を行った。【方法】高校生235人,大学生305人の男女合計540名(有効回答数511名)を対象に,ダイエットの状況とあわせて,4つの下位領域からなる自己肯定感尺度を用いて質問紙調査を実施した。【結果】(1)学校別,性別のいずれも「ダイエットの有無とその結果」と「自己肯定感得点」との交互作用が有意であり,(2)高校生・大学生の「ダイエットに成功した」と答えた群の自己肯定感得点と他の2群(ダイエットをして失敗した・ダイエットをしたことがない)との間に有意な差は認められず,ダイエットの成功が自己肯定感得点を高める要因となるということは示されなかった。また,ダイエットの失敗が自己肯定感得点を引き下げるという逆効果も認められなかった。(3)男性の「ダイエットに成功した」と答えた群の「自己肯定感得点」が,他の2群(ダイエットをして失敗した・ダイエットをしたことがない)よりも有意に大きく,男性にのみ,ダイエットに成功した者の自己肯定感得点が高い傾向にあることが示された。以上の結果から,男性の体重変動に基づいた,健康目的のダイエットの成功経験のみ,自己肯定感得点を高める効果をもたらすことが示されたが,高校生・大学生のダイエットの結果(成功・失敗)のいずれも,自己肯定感を変動させる要因にはならないことが示唆された。
著者
阿部 正子 中島 通子 宮田 久枝
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は女性不妊症患者と自然妊娠女性の生活習慣を比較検討し,女性の妊孕力を予測するアセスメント指標ならびに妊孕力に影響を及ぼす予測因子を探索することであり,この成果を活かし看護介入プログラムへの示唆を得ることにある。そのために平成20年度は質問紙調査の実施および分析を行った。調査期間は平成20年7月〜平成21年2月,調査票は関東および関西の不妊治療クリニックならびに総合病院産婦人科に受診している妊婦700名に配布し615部回収した(回収率87.8%)。調査内容はフェースシートとして年齢,職業,妊娠前の体重や体温,不妊治療の有無などを尋ねた。妊孕力を左右する変数としてダイエットの経験,嗜好品の摂取状況の他に生活習慣,食習慣等39項目を採用し,(1)高校(18歳)まで,(2)高卒後〜結婚,(3)結婚〜妊娠,(4)現在の各時点での経験頻度を4段階で測定した。分析はSPSSver.15を使用し,記述統計と多重ロジスティック回帰分析でステップワイズ法による変数選択を行った。対象の年齢は29.8歳(SD5.0),今回の妊娠が不妊治療による者は73名(11.9%),自然妊娠は537名(87.3%)であった。今回の妊娠が不妊治療による妊娠であることに有意に関連を示したのは次の7変数であった(Hosmer Lemeshow検定x2(8)=5.89,p=0.66)。結婚年齢(オッズ比:OR=1.1,95%信頼区間(CI):1.02-1.22),月経困難症の既往有(OR=12.6, 95% CI=1.16-137.74),クラミジア感染症の既往有(OR=5.9 ,95% CI:1.68-20.77),月経不順の班往有(OR=2.8, 95% CI:1.17-6.77),過去に不妊予測有(OR=O.85, 95% CI:0.25-0.29),高卒後から結婚までの間にジュースなどの清涼飲料水を毎日飲むかについて「その通り」と回答(OR=2.0, 95% CI:1.31-2.91),結婚後から妊娠までの問にイライラしたときにおやつを食べることが多いかについて「その通り」と回答(OR=0.7, 95% CI:0.52-0.98)。以上よりライフコース選択や性の健康へのセルフアウェアネスの強化の重要性が示唆された。なお,上記の結果には関連の向きについて解釈の困難なものがあり,今後より詳細な検討が必要で壷ると考えられた。