著者
若杉 葉子 戸原 玄 中根 綾子 後藤 志乃 大内 ゆかり 三串 伸哉 竹内 周平 高島 真穂 都島 千明 千葉 由美 植松 宏
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.109-117, 2008-08-31 (Released:2021-01-22)
参考文献数
64

現在行われている多くのスクリーニングテストは誤嚥のスクリーニングテストであり,不顕性誤嚥(SA)をスクリーニングすることは難しいとされている.今回,我々はクエン酸の吸入による咳テストを用いたSAのスクリーニングの有用性について検討を行った.対象は何らかの摂食・嚥下障害が疑われた18歳から100歳までの患者204名 (男性131名,女性73名,平均年齢69.90±11.70歳).超音波ネブライザより1.0重量%クエン酸生理食塩水溶液を経口より吸入させ,1分間での咳の回数を数える.5回以上であれば陰性 (正常),4回以下であれば陽性 (SA疑い)と判定し,VFもしくはVEの結果を基準とし,SAのスクリーニングの感度,特異度,有効度,陽性反応的中度,陰性反応的中度を計算した.咳テストによるSAのスクリーニングの結果は,感度0.87,特異度0.89,有効度0.89,陽性反応的中度0.74,陰性反応的中度0.95であった.次いで主要な原疾患別に咳テストの有用性を検討した.脳血管障害患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.76,特異度0.82,有効度0.79,陽性反応的中度0.73,陰性反応的中度0.84であった.頭頚部腫瘍患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度0.97,有効度0.98,陽性反応的中度0.93,陰性反応的中度1.00であった.神経筋疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.83,特異度0.84,有効度0.84,陽性反応的中度0.56,陰性反応的中度0.95であった.呼吸器疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.67,特異度0.81,有効度0.76,陽性反応的中度0.67,陰性反応的中度0.81であった.気管切開のある患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.71,特異度1.00,有効度0.78,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度0.50であった.認知症患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度1.00,有効度1.00,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度1.00であった.以上より,クエン酸吸入による咳テストはSAのスクリーニングに疾患によらず有用であると考えられた.
著者
枝広 あや子 平野 浩彦 山田 律子 千葉 由美 渡邊 裕
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.651-660, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
30
被引用文献数
4 11

目的:認知症高齢者では,食事の自立が低下することにより,食事量の減少,低栄養,脱水および免疫機能の低下,さらなる認知機能の低下や,誤嚥性肺炎および死亡率の上昇が起こることが知られている.しかし認知症高齢者の食行動障害の病態および重症度別把握は不十分であり,介護現場では食事の自立支援に苦慮している現状がある.そこで本研究は,認知症高齢者の多数を占めるアルツハイマー病(以下AD)と血管性認知症(以下VaD)を対象に,認知症の重症度別に食事に関する行動障害を比較分析することで,ADとVaDにおける食行動の特徴を明らかにすることを目的とした.方法:対象者は,施設入所の認知症高齢者計233名(AD150名,VaD83名)とした.対象者に対し食行動調査と認知機能検査,神経学的検査,生活機能調査,栄養学的調査(MNA-SF)を行い,AD,VaDの2群について食行動について詳細な検討を行った.結果:食事に関連した行動障害は重度認知症の者ほど増加する傾向がみられた.一方,「リンシング・ガーグリング困難」「嚥下障害の徴候」の認知症重症度別の出現頻度は,ADとVaDで違いがあった.軽度認知症ではVaDはADに比較して食事に関連した行動障害の出現頻度が高かった.ADでは食事開始困難や注意維持困難,巧緻性の低下等の認知機能障害の影響が大きい項目の出現が重度認知症において顕著にみられた.一方VaDの食事に関連した行動障害と嚥下障害は,認知症の重症度との関連は認めらず,軽度認知症でも神経脱落症状に起因した嚥下障害が認められた.結論:ADとVaDはどちらも認知症でありながら,食事に関連した行動障害の出現頻度が大きく異なっていた.認知症背景疾患や重症度による相違点を考慮した効果的な支援の確立が望まれる.
著者
西堀 眞弘 渡邊 憲 宮崎 安洋 田中 直文 荒川 真一 千葉 由美 二宮 彩子 大橋 久美子 田中 博 上村 健二 宮田 公佳 中口 俊哉 津村 徳道 三宅 洋一 滝脇 弘嗣 鬼頭 伸一郎 洪 博哲 橋本 憲幸
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.161-166, 2005-12-20
参考文献数
5
被引用文献数
2

マルチスペクトルイメージングは医用画像の色再現の問題を解決できるだけでなく,さまざまな方面への応用により医療に飛躍的な進歩をもたらす画期的な技術である.しかし,あまりに多様な可能性が存在するため,個々の応用形態の実現に至る道筋にはいくつもの分かれ道があり,少しでもアプローチを間違えると行き止まりになってしまう.著者らはマーケティング的な視点からこの迷路のような医療市場に一定の法則を見い出し,それを基に成功の可能性が高い2つのアプローチ法を明らかにした.すなわち各ピクセルに分光反射率を記録できる分光画像技術と,見え方が実物にきわめて近い実物色画像である.前者は人間の視覚能力を超えた形態学的診断につながる技術であり,後者はデジタル画像に基づく形態学的診断の精度向上につながる技術である.なお,前者は多くの開発資源を必要とし,ごく限られた症例において,きわめて画期的な医学的効果を発揮する一方,後者の医学的効果は一定の範囲に留まるものの,必要となる開発資源が比較的少なく,かつ広範な臨床現場において膨大な利用機会が見込まれる.
著者
岡本 玲子 塩見 美抄 鳩野 洋子 岩本 里織 中山 貴美子 尾島 俊之 別所 遊子 千葉 由美 井上 清美
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.60-67, 2007-03-30
被引用文献数
9

本研究の目的は,今特に強化が必要な行政保健師の専門能力を明らかにすることである.データは,(1)学識経験者を対象としたフォーカスグループディスカッション(n=7)と,(2)保健師と関係他職種を対象とした個別面接(n=9)により収集した.専門能力は,研究者によるデータの解釈・分析によって抽出・精選した.専門能力の妥当性と優先度の検討は,(3)全国の現任保健師研修担当者への郵送質問紙調査により行った.(1)(2)を分析した結果,専門能力は次の5つにまとめられた.すなわち,a)住民の健康・幸福の公平を護る能力,b)住民の力量を高める能力,c)政策や社会資源を創出する能力,d)活動の必要性と成果を見せる能力,e)専門性を確立・開発する能力である.(3)の調査(n=225)では,a)〜 e)の専門能力は,被調査者の9割以上の賛同を得た.また,7割の者が優先度が高いとした専門能力は,c)d)であった.結果より,今回抽出した専門能力は,今特に強化が必要なものとしてコンセンサスを得られた.今後保健師がこれらの能力を獲得できるよう,とりわけ優先度の高い専門能力について,我々は早急に教育プログラムの開発や教育体制の整備を行っていく必要がある.
著者
千葉 由美 山田 律子 市村 久美子 戸原 玄 石田 瞭 平野 浩彦 植田 耕一郎 唐帆 健浩 徳永 友里 植松 宏 森田 定雄
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

摂食・嚥下障害は高齢者をはじめ脳血管疾患、変性疾患、がんなどの発症および治療に伴い発生する症状である。2次合併症の誤嚥性肺炎は、全肺炎の半数以上を占め、死因となる。本プロジェクトでは、評価法や管理システムにおける課題を見出し、改善点を示すことを目的に進めてきた。これまで複数病院における誤嚥性肺炎の発生率を見るとともに、病院管理の在り方について管理者と病棟で実態調査などを行った。現在、最終分析を進めている。