著者
寒川 光
雑誌
ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.57-64, 2013-12-31

数値計算は浮動小数点演算によって実装されてきた.そのためアルゴリズムは,丸め誤差を制御する方法を取り入れつつ発達した.一方,有理数計算は,計算機科学の黎明期から研究されてきたが,数値計算には,計算機の性能が不十分であったため,実用的な製品としての実装は少ない.初代スパコン CRAY-1 と現在最速のスパコンを比較すると 1 億倍以上の性能差がある.並列システムの計算能力の発展が続くなら,浮動小数点演算による数値計算は,徐々に有理数演算に置き換えられてゆく可能性がある.有理数計算は正確な計算結果を提供するので,現在の数値計算のアルゴリズムの内,丸め誤差の影響を制御する部分は不要になる.浮動小数点計算では主流である 「直交化を基礎とする解法」 は,有理数計算では桁数が膨大になるため,直接的な解法に劣る.このため有理数計算による数値計算アルゴリズムのメニューは,浮動小数点演算用のものと異なる.本論文では,線形代数計算を有理数計算で行うためのプログラミング環境を,多桁整数演算を実現する階層,有理数演算を実現する階層の上に,BLAS に対応する 「有理数 BLAS」 階層を構築することで,既存の浮動小数点計算用のプログラムを,有理数計算環境に移行する方法を提案する.
著者
播磨 洋子 永田 憲司 寒川 光治 澤田 敏
出版者
近畿脳腫瘍病理検討会
雑誌
Oncologyの進歩 (ISSN:09176969)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.12-16, 2001 (Released:2012-10-29)
参考文献数
20

Studies of loss of heterozygosity (LOH) in cervical carcinoma have reported a high frequency of allelic deletions affecting 3p21.3,6p21.2,17p13.1, and 18q21.2. Our study explored whether human papilloma virus (HPV)and LOH on chromosome 3p21.3,6p21.2,17p13.1, and 18q21.2 are associated with treatment outcome in patients with cervical cancer after radiotherapy. A total of 65 patients with cervical cancer (stage I-ive patients, II-eight, III-34, IV-16, recurrence-two) were included in this study. Tumors and normal DNA were analyzed by polymerase chain reaction (PCR) for genetic losses at ten polymorphic microsatellite loci. The presence of HPV and its type were analyzed by PCR-based assay using the consensus primers for L1 and E6 region. Chromosomes 3p21.3,6p21.2,17p13. land 18q21.2 were involved in the LOH in 23.1%,41.5%%,33.8%, and 23.1% of the informative carcinomas, respectively. HPV-positive tumors were found in 73.8% of the patients. Overall survival was significantly worse for the patients with LOH on chromosome 6p21.2 and 18q21.2 as compared to those without LOH (P=0.006, and P=0.007, respectively). The HPV-negative patients survived significantly shorter compared to the HPV-positive patients in the overall survival (P=0.01). The results of this study suggest that absence of HPV infection, LOH on 6p21.2, and LOH on 18q21.2 are the most important determinants of outcome of patients with cervical carcinoma after radiotherapy.
著者
寒川 光
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.1183-1192, 1992-10-15
被引用文献数
6

スーパスカラ計算機では算術演算 性能が従来のスカラ計算機に比して飛躍的に強化された.その結果データ移動(ロード/ストア命令)の計算時間に占める比率が増大した.計算速度を考慮するプログラムは計算順序を変更しデータ移動を削減する方法で 大きなチューニング効果をあげられる場合がある.この方法はFortranプログラムからは透過なレジスタへのロード命令の実行やキャッシュヘのデータのステージングの回数を 媒介的な方法(計算密度 キャッシュ利用密度)で把え 計算機の個性に合わせた最適化を狙うものである.行列行列積和の例題では約3倍という大幅なチューニング効果を達成した.この方法をプログラミング技法の問題としてでは江く 線形代数計算の問題として ブロック化された定式化で記述すると ベクトル計算機や階層型記憶装置をもつ計算機にも応用することができ 見通しが良くなる.
著者
寒川 光
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. ハイパフォーマンスコンピューティングシステム (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.1-9, 2001-08-15

ガウス超幾何級数_2F_1(3/2, 3/2;3;x)を数値評価する問題は, グリーン関数法や境界要素法によって軸対称問題を解く場合に重要になる.通常の数値解析の教科書や数学公式集のように, この式を完全楕円積分の第1種と第2種を用いて計算すると, 両者の打ち消しあいのために精度が損なわれる区間が現れる.本論文はこの問題の解決方法を2つ提案する.Hastings公式と同形の式に基づく最良近似法と高精度テーブル法である.これにより精度が改善され, 後者の方法ではさらに高速化も達成される.
著者
寒川 光
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.38, pp.43-48, 1999-05-14

完全楕円積分は,グリーン関数法や境界要素法で軸対称問題を解く場合,数値解析プログラムの主要なカーネルとして現れる.代表的な計算法として,対数関数を経由するHastings公式を用いるものと,算術幾何平均を用いるものがある.本稿では高速計算に焦点をあてる.はじめに上記の方法の精度と速度について述べ,次に区間分割してテーブル駆動型を用いる高速計算法を提案し,最後に完全楕円積分の第1種と第2種が特殊が形で結合したグリーン関数の応用例について述べる.この例では完全楕円積分を独立に計算しても,第1種と第2種が打消しあうため,特別な配慮が必要になる.Complete elliptic integral appears as a major kernal of numerical analysis programs, in which Green function method or boundary element method is applied on axis-symmetric problems. Two typical methods are used, minimax approximation of Hastings form using logarithmic function and arithmetic-geometric mean method. In this paper we focus on high-performance computation of the integral. At first accuracy and performance of the above two methods are described, then a fast method by table driven algorithm is proposed, and finally an application of Green function is described. In this application, since complete elliptic integrals of the first kind and the second kind cancel their precisions each other, special treatment for accuracy is required.