著者
行武 潔 HAVNES R. 吉本 敦 寺岡 行雄 加藤 隆 尾崎 統 HAYNES Richard TORRES Juan 伊藤 哲 EVISON David 庄司 功 斯波 恒正 CERDA Arcadi PAREDES Gonz BROOKS David HAYNES Richa 古井戸 宏通
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本年度は、これまでの研究成果を踏まえて37カ国からなる国際研究集会を開催した。1) まず、国産材は低廉・均質な外材に押されて市場競争力を失ってきていること、また、日本の造林費が他国の5〜10倍にも達していること、その結果、利用可能な林齢に達してきた人工林の伐採が遅れ手入れ不足となってきていること、国産材の生産増加が期待できず持続可能な経営が非常に困難となってきていることが指摘される。2) 近年の環太平洋地域の木材貿易をめぐる変化に、(1)世界的に環境保護の動きが強まる中で天然林材あるいは2次林材を主な原料基盤としてきた国々が、環境規制の強化による伐採量の大幅な減少や原料コストの上昇により丸太や製品輸出に占める比率を大きく後退させ始めたこと、(2)対照的に、チリやニュージーランド、南アフリカなど外来樹種の導入による短伐期の人工林資源の造成を進めてきた国々からの加工製品の輸出が、原料供給力の拡大と加工部門への積極的投資を背景として急速に増加し始めていることがあげられる。3) 国内8地域の製材市場と海外の輸出入モデルによる空間均衡モデルを構築してシミュレーション分析を行った。まず、輸送費用削減効果をみたが、国産材の供給増加はみられない。これは、国内各地域の国産材供給関数が全て価格に対して極めて非弾力的であるため、輸送コストを下げてもその効果が現れないことによる。次に、米材丸太輸入減少効果をみると、国産材製材の供給増加よりも製材輸入の増加をもたらす。これは環境保護等の影響で米材丸太輸入規制があっても、国産材供給の増加は期待できないことを物語っている。4) 森林セクターモデルの課題として、まず林業政策の性質を熟知して政策決定に関わる因子を結合し、モデルを修正・拡張することがモデル構築に必要不可欠であること、今後マルチ市場レベルでの空間均衡モデルの開発などが中心になってくることが示唆される。
著者
竹内 郁雄 永岩 健一 寺岡 行雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.390-394, 2007-12-01
被引用文献数
1 1

鹿児島県北部のヒノキ4林分で,台風による落葉量を調査した。調査地城には2004年に5個の台風が接近し,森林に最も強い影響を与えたのは台風18号で,瞬間最大風速40m/s以上の東および南西の強風をもたらした。落下した落葉枝の長さは,4林分とも10cm未満のものが大部分で,20cm以上はわずかであった。落葉量は,南西向き斜面のP1,P2でそれぞれ1.0,0.8t/ha,北向き斜面のP3,P4でそれぞれ0.7,0.2t/haであった。4林分の落枝量は,落莫量の7〜15%と少なかった。林分での落葉量は,斜面方位や風上側の保護山体の有無などによる風速の強さを反映したものと推察された。落葉量が多かったP1,P2林分で現存量の調査を行った。台風前の葉現存量はP1,P2でそれぞれ13.8,15.5t/haと推定された。台風前の葉現存量に対する落葉量の割合はP1が7.5%,P2が5.1%であった。このように,ヒノキ林では台風による幹折れなどの顕著な被害発生がなくても,落葉被害が発生することがわかった。