著者
行武 潔 吉本 敦
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-98, 2002-09-30 (Released:2017-09-01)
参考文献数
23

本報告は国産材製材品とそれと競合する国内挽き米材製材品及びその他外材も含む製材品を対象に,東北,関東,北陸,中部,近畿,中国,四国,九州の8地域における木材需給構造の特徴を価格弾性値によって把握しようというものである。推定に際しては,各品目毎に需給の部分均衡モデルを作成し,推定結果の一致性が得られるよう2段階最小二乗法,3段階最小二乗法を用いて係数の推定を行った。また,それらの結果と普通最小二乗法により得られる推定結果とを比較検討した。分析の結果,製材品需要の価格弾性値については,全需給関数に関わる外生変数を操作変数推定に用いた2段階,3段階最小二乗法による推定結果が普通最小二乗法によるものよりも各地域とも価格弾性値が大きくなる結果となった。特に東北,関東,北陸,近畿,四国が2.0以上となった。また各地域とも国産材よりも米材の供給価格弾力性の方がより弾力的,即ち,国産材は市況に対する供給反応が敏感ではないことを示していることが分かった。この傾向は普通最小二乗法,2段階,3段階最小二乗法によった場合いずれも同様であった。
著者
行武 潔 HAVNES R. 吉本 敦 寺岡 行雄 加藤 隆 尾崎 統 HAYNES Richard TORRES Juan 伊藤 哲 EVISON David 庄司 功 斯波 恒正 CERDA Arcadi PAREDES Gonz BROOKS David HAYNES Richa 古井戸 宏通
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本年度は、これまでの研究成果を踏まえて37カ国からなる国際研究集会を開催した。1) まず、国産材は低廉・均質な外材に押されて市場競争力を失ってきていること、また、日本の造林費が他国の5〜10倍にも達していること、その結果、利用可能な林齢に達してきた人工林の伐採が遅れ手入れ不足となってきていること、国産材の生産増加が期待できず持続可能な経営が非常に困難となってきていることが指摘される。2) 近年の環太平洋地域の木材貿易をめぐる変化に、(1)世界的に環境保護の動きが強まる中で天然林材あるいは2次林材を主な原料基盤としてきた国々が、環境規制の強化による伐採量の大幅な減少や原料コストの上昇により丸太や製品輸出に占める比率を大きく後退させ始めたこと、(2)対照的に、チリやニュージーランド、南アフリカなど外来樹種の導入による短伐期の人工林資源の造成を進めてきた国々からの加工製品の輸出が、原料供給力の拡大と加工部門への積極的投資を背景として急速に増加し始めていることがあげられる。3) 国内8地域の製材市場と海外の輸出入モデルによる空間均衡モデルを構築してシミュレーション分析を行った。まず、輸送費用削減効果をみたが、国産材の供給増加はみられない。これは、国内各地域の国産材供給関数が全て価格に対して極めて非弾力的であるため、輸送コストを下げてもその効果が現れないことによる。次に、米材丸太輸入減少効果をみると、国産材製材の供給増加よりも製材輸入の増加をもたらす。これは環境保護等の影響で米材丸太輸入規制があっても、国産材供給の増加は期待できないことを物語っている。4) 森林セクターモデルの課題として、まず林業政策の性質を熟知して政策決定に関わる因子を結合し、モデルを修正・拡張することがモデル構築に必要不可欠であること、今後マルチ市場レベルでの空間均衡モデルの開発などが中心になってくることが示唆される。