著者
二宮 嘉行 栁原 宏和 吉本 敦
出版者
FORMATH研究学会
雑誌
FORMATH (ISSN:21885729)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.43-56, 2007 (Released:2020-06-05)
参考文献数
15

林分内の間伐効果・競合効果・成長パターンの異質性などを検知する問題では, 非正則モデルに基づく分析が必要となるが, それらの分析手法には通常の統計理論を適用することはできない. 状況や検証したい仮説により使用する非正則モデルは異なり, 今までの非正則モデルに基づく分析では, それらのモデルごとに性質が議論されてきた. しかしながら, 近年それらを統一的に扱う理論が発展されつつある. 本論文では, 非正則モデルの主である局所錘モデルにおける検定問題に注目し,通常の検定とどう異なるかを説明し, 林分成長分析におけるその必要性について検討する.
著者
伊高 静 吉本 敦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

太陽パネル設置による発電は、二酸化炭素の排出量が非常に少ない自然エネルギーとして注目を集めている。一方、山林を伐採して太陽パネルを設置する地上型メガソーラーの急増については、景観の損失や、森林喪失による生態系への悪影響・土砂流出等が懸念されている。本研究は、山間地における太陽パネル設置の総合的な評価を可能にする判断材料を提供するため、それぞれの炭素量収支を明らかにする事を目的とした。具体的には、太陽パネル生産・運搬・設置・メンテナンス・パネル解体・廃棄にまつわる炭素収支を先行研究とメーカーからの聞き取り調査から明らかにした。さらに、太陽光発電に相当する電力を、化石燃料による発電に置き換え、その炭素量を明らかにした。また、仮想林分における施業による炭素収支を、数理最適化の手法を用いて算出した。収穫量・収穫頻度を制約条件に、樹齢に応じた炭素収支が、最小~最大になる解を、様々な施業パターンを想定して算出した。現実には、山間地利用における森林経営とソーラーパネル設置を総合的に判断することの難しさは、比較のための「物差し」が1つではないことにある。発表では、「炭素収支」という見地から議論したい。
著者
行武 潔 吉本 敦
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-98, 2002-09-30 (Released:2017-09-01)
参考文献数
23

本報告は国産材製材品とそれと競合する国内挽き米材製材品及びその他外材も含む製材品を対象に,東北,関東,北陸,中部,近畿,中国,四国,九州の8地域における木材需給構造の特徴を価格弾性値によって把握しようというものである。推定に際しては,各品目毎に需給の部分均衡モデルを作成し,推定結果の一致性が得られるよう2段階最小二乗法,3段階最小二乗法を用いて係数の推定を行った。また,それらの結果と普通最小二乗法により得られる推定結果とを比較検討した。分析の結果,製材品需要の価格弾性値については,全需給関数に関わる外生変数を操作変数推定に用いた2段階,3段階最小二乗法による推定結果が普通最小二乗法によるものよりも各地域とも価格弾性値が大きくなる結果となった。特に東北,関東,北陸,近畿,四国が2.0以上となった。また各地域とも国産材よりも米材の供給価格弾力性の方がより弾力的,即ち,国産材は市況に対する供給反応が敏感ではないことを示していることが分かった。この傾向は普通最小二乗法,2段階,3段階最小二乗法によった場合いずれも同様であった。
著者
行武 潔 HAVNES R. 吉本 敦 寺岡 行雄 加藤 隆 尾崎 統 HAYNES Richard TORRES Juan 伊藤 哲 EVISON David 庄司 功 斯波 恒正 CERDA Arcadi PAREDES Gonz BROOKS David HAYNES Richa 古井戸 宏通
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本年度は、これまでの研究成果を踏まえて37カ国からなる国際研究集会を開催した。1) まず、国産材は低廉・均質な外材に押されて市場競争力を失ってきていること、また、日本の造林費が他国の5〜10倍にも達していること、その結果、利用可能な林齢に達してきた人工林の伐採が遅れ手入れ不足となってきていること、国産材の生産増加が期待できず持続可能な経営が非常に困難となってきていることが指摘される。2) 近年の環太平洋地域の木材貿易をめぐる変化に、(1)世界的に環境保護の動きが強まる中で天然林材あるいは2次林材を主な原料基盤としてきた国々が、環境規制の強化による伐採量の大幅な減少や原料コストの上昇により丸太や製品輸出に占める比率を大きく後退させ始めたこと、(2)対照的に、チリやニュージーランド、南アフリカなど外来樹種の導入による短伐期の人工林資源の造成を進めてきた国々からの加工製品の輸出が、原料供給力の拡大と加工部門への積極的投資を背景として急速に増加し始めていることがあげられる。3) 国内8地域の製材市場と海外の輸出入モデルによる空間均衡モデルを構築してシミュレーション分析を行った。まず、輸送費用削減効果をみたが、国産材の供給増加はみられない。これは、国内各地域の国産材供給関数が全て価格に対して極めて非弾力的であるため、輸送コストを下げてもその効果が現れないことによる。次に、米材丸太輸入減少効果をみると、国産材製材の供給増加よりも製材輸入の増加をもたらす。これは環境保護等の影響で米材丸太輸入規制があっても、国産材供給の増加は期待できないことを物語っている。4) 森林セクターモデルの課題として、まず林業政策の性質を熟知して政策決定に関わる因子を結合し、モデルを修正・拡張することがモデル構築に必要不可欠であること、今後マルチ市場レベルでの空間均衡モデルの開発などが中心になってくることが示唆される。
著者
吉本 敦 庄司 功 尾張 敏章 加茂 憲一 二宮 嘉行 木島 真志 庄司 功 加茂 憲一 尾張 敏章 柳原 宏和 二宮 嘉行 佐々木 ノピア 木島 真志
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1992年の生物多様性条約採択以降、生態系保全政策のグローバルな影響への関心が高まっている。このような保全政策はある地域の政策が他の地域の生産活動に及ぼす影響を考慮しながら、地域レベルの生態系サービス(多次元的な財)の生産調整を行う必要がある。その結果、地域的あるいは国際的に効果的・効率的かつ実行可能な保全政策を展開することが可能となる。本研究では、トルコ、韓国、日本を中心に、森林資源から供与される多次元的な財の中で、特に生息地供与機能、侵略的外来種防止機能、美的景観供与機能を特定するモデルを開発し、森林資源・生態系管理に対する時空間最適化モデルの構築により、それら機能を定量的に明らかにした。