著者
寺田 和憲 川合 直裕 山田 誠二 伊藤 昭
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

縁起担ぎとは,真の因果が存在しないにもかかわらず,特定の行為を行うことで良い結果を期待することである.本研究では,縁起担ぎを探索と搾取のトレードオフの観点からモデル化し,心理実験によって,以前に行われたタスクの成功率が高い場合には,たとえ明らかにタスクの成否に関係なくても無意識に同一の行動を選択し,成功率が低い場合には,異なる行動を選択する傾向があることを検証した.
著者
伊藤 昭 寺田 和憲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

心を読むことに基づくコミュニケーションを計算機に実装可能なアルゴリズムとして検討した。主要な成果は、次のとおりである。1.心を読むコミュニケーションの発生要件を「非零和ゲーム状況=利害が完全には一致しないが協調を必要とする状況」と定式化し、人工的にその状況を生成することで、嘘やだましを含む心を読むことによるコミュニケーションを創発させた。2.人が(人工物を含む)対話相手に心属性を付与する条件を、外見要因、行動要因の2面から調査した。また、心を読むことによるコミュニケーションの創発におけるメタ信号を役割を、身振りをコミュニケーションメディアとして用いて分析した。
著者
寺田 和憲 岩瀬 寛 伊藤 昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.117-127, 2012-01-01
被引用文献数
2

哲学者Dennettは人間が他者の振舞いを理解し予測するために意図,設計,物理の三つのスタンスを使い分けているとし,哲学的論考によってその妥当性を示した.しかし,人間が本当にそのようなスタンスを使い分けているかどうかは定かではなく心理学的研究によってその存在が証明されているわけではない.そこで,本研究では,スタンスを科学的に定義し,実際に振舞い理解において用いられているかどうかを検証するために三つの心理実験を行った.まず,Dennettのスタンスをアニメーション化し,アニメーションに対する被験者の印象記述を分析することで,振舞い理解のための四つの言語的概念カテゴリーを明らかにした.次に,60個の様々な対象の振舞いを参照基準として用いることで,四つのうち三つの言語的概念カテゴリーがDennettのスタンスと近いものであることが分かった.しかし,Dennettの主張のような原理帰属による理解がなされているという直接的証拠は得られなかった.議論から,実際の振舞い理解においては振舞いの性質が注目され,意図,決定,受動,複雑の四つの概念的カテゴリー化が行われていると結論づけた.
著者
伊藤 昭 寺田 和憲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.「心を読む」ことをアルゴリズムとしてとらえ、利害の輻輳する状況下での人の「心を読む」行動の分析と、学習アルゴリズムとしての実現手法の研究を行った。具体的には、協調と競合が絡み合った問題として1・2・5じゃんけんや3カード問題を作成し、相手がこちらの行動を読むことを予想して、それを自己の目的を達成のために利用するという、再帰的な心を読む行動の発現を調べた。また上記と並行して、自己の利益を最大化することと矛盾しない形で、最適な行動を計算機が自動的に生成(学習)するアルゴリズムを検討した。その結果、履歴を考慮した適切な学習アルゴリズムを用いることで、利益が輻輳する状況下で、双方が納得できる良い解を発見できることを示した。2.コミュニケーションにおける視線や表情の果たす役割に注目し、そのメカニズムの解明と人とロボットのコミュニケーションへの応用を目指した研究を行った。具体的には、人の視線方向を検出し、また自ら視線を制御できるロボットと人とのインタラクション実験を通して人の振る舞いを分析、視線を適切に制御することで、人がロボットに対して「意図スタンス」を取りやすくなることを確認した。また表情を単に基本表情に分類するのではなく、表情を目の動きを含めて顔の与える「心の状態」へのメッセージととらえ、その検出方法を検討した。3.人工物を「心を持つもの」とみなして、その意図を読むことでコミュニケーションを実現することを目指した研究を行った。最初のステップとして、Dennettの物理、設計、意図スタンスの分類に従い、人のとるスタンスの評価方法を検討した。具体的には、自律移動椅子、自律移動立方体を用いて、人がそのような未知な物体と出会ったとき、どのように行動するのかを観察、分析して、人の採るスタンスを評価すると共に、人が人工物に対して意図スタンスをとるための条件を明らかにした。