- 著者
-
寺田 恵子
- 出版者
- 一般社団法人 日本助産学会
- 雑誌
- 日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.2, pp.268-276, 2016 (Released:2017-03-08)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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目 的 産後早期の褥婦の乳頭の硬度と乳頭長の基礎的データを得,授乳の状況を示すLATCHスコアとの関連について検討した。対象と方法 対象は母乳育児が可能な産後1~2日目の日本人女性394名で,調査内容は乳頭の硬度と乳頭長の測定とLATCHスコアの評価である。乳頭の硬度に関しては,主観的に測定し,3段階で分類した。乳頭長は,タイの先行研究で使用されたものと同じプラスチック注射器を加工した機器で測定した。協力施設の看護者には事前教育を行った。統計学的分析はWelchのt 検定,χ²検定を用い,授乳の状況を示す乳頭長のカットオフ値はROC曲線を用いて算出した。本研究は佐賀大学倫理委員会の承認を得た。結 果 11施設の331名(84%)を分析した。産後1~2日目の褥婦の乳頭の硬度は,初産群に比較して経産群の方が柔軟であった。乳頭長の平均値は12(SD 3.4)mmで,初産群が11(SD 3.2)mm,経産群が13(SD 3.2)mmで,経産群が長かった(p<.001)。平均LATCHスコアは,7.4(SD 1.9)点で,初産群が6.5(SD 1.7)点,経産群が8.0(SD 1.7)点で,経産群の得点が高かった(p<.001)。LATCHスコアと乳頭の硬度は関連性があり,硬が6.0(SD 1.8)点,中は7.5(SD 1.8)点,軟が8.2(SD 1.7)点で,柔軟性が高まるとLATCHスコアが高くなった。LATCHスコア8点以上の乳頭長のカットオフ値は11mmで,先行研究の褥婦の乳頭長のカットオフ値7mmに比べ4mm長かった。結 論 産後早期の褥婦の乳頭の硬度は,経産群が柔軟であり,乳頭長は,経産群が長かった。授乳が上手くいっている場合,乳頭長は11mm以上で,タイ人褥婦7mmに比べ長くなっていた。乳頭が柔軟な場合,LATCHスコアは高かった。測定者に対する乳頭とLATCHスコアの測定方法の教育の徹底,測定者間信頼性の確保の課題が残った。