著者
猪谷 富雄 小川 正巳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-147, 2004 (Released:2004-09-29)
参考文献数
110
被引用文献数
14 26

赤米とは, 糠層にタンニン系赤色色素を持つイネの種類であり, わが国においては日本型とインド型の2種の赤米が栽培されてきた. 日本型の赤米は古くから日本に渡来し, 7~8世紀には全国各地で栽培されたことが平城京跡などから出土する木簡から推測されている. 14~15世紀には中国からインド型の赤米もわが国へ渡来し, 「大唐米」などと呼ばれ, 近世に至るまでかなりの規模で栽培されていた. 早熟で不良環境や病害虫に強い大唐米は, 最盛期の江戸時代には関東から北陸地方以西において広く栽培され, 特に低湿地や新たに開発された新田などに適していた. 明治時代に入るとこれらの赤米は徐々に駆除され, わが国の水田から姿を消す道を辿った. 例外として, 日本型の赤米の一部が神聖視され, 神社の神田などで連綿と栽培されてきたもの, 雑草化して栽培品種に混生してきたものなどがある. 約20年前から, 赤米は小規模ながら栽培が復活し, 日本各地で歴史や環境を考える教育や地域起こしの素材として利用されている. また, 赤米は抗酸化活性を持つポリフェノールを含む機能性食品としても注目されている. わが国における赤米栽培の歴史と赤米を取り巻く最近の研究状況などについて, 以下の順に概要を述べる. (1)赤米を含む有色米の定義と分類, (2)赤米の赤色系色素, (3)赤米の栽培の歴史, (4)残存した赤米, (5)赤米など有色米が有する新機能, (6)赤米の育種などに関する最近の情勢.
著者
小川 正巳 猪谷 富雄
出版者
県立広島大学
雑誌
生命環境学術誌 (ISSN:1883650X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-71, 2011-03

わが国の陸稲(おかぼ/りくとう) の文化史の考察の一つとして陸稲という作物名の別名(地方名/方言/俗語) について文献学的調査を行った。今日の陸稲という呼称に対して、中世以降多くの別名が全国各地で使用されてきた。江戸時代の陸稲の主な呼称には3種類あり、関東中心のオカボ系、九州中心のノイネ系そして北陸地方をはじめ全国的にハタケイネ系があった。近年に採録された陸稲の地方名(方言) には野稲・畑稲(畠稲)・岡穂・岡稲・旱稲・イギリス・けしね・とうぼし・はいもんなど多数の名称が確認できた。それらの地方名の背景には当該地の歴史などが深く刻み込まれているものがあった。
著者
小川 正巳 太田 保夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.499-505, 1973-12-30
被引用文献数
1

This investigation was conducted on rice seedlings to elucidate the plant growth-regulating properties of 3-hydroxy-5-methyl isoxazole which is an effective fungicide against the damping-off organism of rice seedlings. The results obtained are summarized as follows: 1) The promotion of root growth by 3-hydroxy-5-methyl isoxazole was assumed to be mediated by its metabolite (N-β-glucoside) in plants. 2) The formation and development of lateral roots and root hairs were accelerated in the early seedling stage. The root growth was vigorously promoted by 3-hydroxy-5-methyl isoxazole in the later seedling stage. 3) The rooting ability and root activity (oxidizing or reducing activity of roots) were enhanced by 3-hydroxy-5-methyl isoxazole.
著者
小川 正巳 猪谷 富雄
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.1084-1089, 2012-11
著者
猪谷 富雄 小川 正巳
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-147, 2004-06-05
参考文献数
110
被引用文献数
6

赤米とは、糠層にタンニン系赤色色素を持つイネの種類であり、わが国においては日本型とインド型の2種の赤米が栽培されてきた。日本型の赤米は古くから日本に渡来し、7-8世紀には全国各地で栽培されたことが平城京跡などから出土する木簡から推測されている。14-15世紀には中国からインド型の赤米もわが国へ渡来し、「大唐米」などと呼ばれ、近世に至るまでかなりの規模で栽培されていた。早熟で不良環境や病害虫に強い大唐米は、最盛期の江戸時代には関東から北陸地方以西において広く栽培され、特に低湿地や新たに開発された新田などに適していた。明治時代に入るとこれらの赤米は徐々に駆除され、わが国の水田から姿を消す道を辿った。例外として、日本型の赤米の一部が神聖視され、神社の神田などで連綿と栽培されてきたもの、雑草化して栽培品種に混生してきたものなどがある。約20年前から、赤米は小規模ながら栽培が復活し、日本各地で歴史や環境を考える教育や地域起こしの素材として利用されている。また、赤米は抗酸化活性を持つポリフェノールを含むこ機能性食品としても注目されている。わが国における赤まい栽培の歴史と赤米を取り巻く最近の研究状況などについて、以下の順に概要を述べる。(1)赤米を含む有色米の定義と分類、(2)赤米の赤色系色素、(3)赤米の栽培の歴史、(4)残存した赤米、(5)赤米など有色米が有する新機能、(6)赤米の育種などに関する最近の情勢。