著者
永田 紘樹 小松 俊文 シュリージン ボリス 石田 直人 佐藤 正
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.59-69, 2015-02-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
74
被引用文献数
2 2

島根県西部に分布する下部ジュラ系樋口層群の調査を行い,樋口層群を新たに下位より尾路地谷層と樋口谷層に区分した.尾路地谷層は,礫岩,砂岩,泥岩からなり,二枚貝化石のOxytoma sp.や“Pleuromya” sp.を産出する.樋口谷層は,軟体動物化石を含む暗灰色泥岩を主体とする.樋口谷層からは,6属6種の二枚貝化石,Kolymonectes staeschei,Palmoxytoma cygnipes,Ryderia texturata,Pseudomytiloides matsumotoi,Oxytoma sp., “Pleuromya” sp.が産出する.本層群の二枚貝化石群は,ロシアやカナダ北部に分布する下部ジュラ系から産する北方系のフォーナであるK. staescheiやP. cygnipesを含み,典型的なテチス系の種を含まない特徴がある.
著者
石田 直人 吉安 裕
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-68, 2004-06-25

ナベブタムシAphelocheirus vittatusとトゲナベブタムシA.nawaeの生活環を前者は京都市の鴨川(賀茂川)で,後者は兵庫県三田市の武庫川での野外調査と京都市下鴨での飼育実験に基づいて考察した.ナベブタムシは調査河川の中流域では1年で1世代であるが,上流域では2年で1世代と考えられる.トゲナベブタムシも武庫川(中流域)では1年で1世代と推定される.両種とも成虫の寿命は少なくとも1年はあり,雌成虫は春期〜初秋に産卵すると思われる.ナベブタムシを長日(15時間照明9時間暗期)の3温度区で飼育し,卵から羽化までの発育所要日数から算出した有効積算温量は1,789日度(発育零点:10.2℃)で,トゲナベブタムシの長日4温度区での飼育結果から算出したそれは2,000日度(発育零点:8.2℃)であった.この2種の生活環は類似していた.また,本研究における2種の調査地の環境は,基本的に底質が中礫を含む砂質および細礫の河川で,pH値が7-10の溶存酸素が多く,流れが比較的速い場所であり,この2種の生息環境に顕著な違いはみいだせなかった.それらの地点には水生植物が生育し,ナベブタムシ類の餌となる他の底生無脊椎動物も豊富であった.
著者
石田 直人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.83-94, 2007 (Released:2007-10-16)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2

九州西部,五木北部地域の黒瀬川帯に分布する整然相砕屑岩類において,上部三畳系の上位を覆う下部ジュラ系が見出された.研究地域の上部三畳系は二枚貝化石によりCarnian階とされており,坂本地域の松求麻層に対比される.三畳系の上位を覆うジュラ系は,放散虫化石に基づくとHettangian階を含む可能性が高い.本研究ではこの下部ジュラ系を平沢津谷層と命名した.平沢津谷層は下部の粗粒砂岩厚層を主とする部分と上部の黒色泥岩を主とする部分から構成される.松求麻層と平沢津谷層の境界には上部三畳系Norian階およびRhaetian階の欠如が認められ,また境界を介して上下の地層の姿勢には差がないことから,三畳系-ジュラ系境界の関係は平行不整合と判断される.
著者
太田 亨 今井 智文 石田 直人 坂 幸恭
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.588-593, 2012
被引用文献数
2

This study re-examines the depositional age, lithostratigraphy, and distribution of Mesozoic sedimentary formations in the section of the Kurosegawa Belt that outcrops in the Toba area, eastern Shima Peninsula, Mie Prefecture, Japan. In this area, Mesozoic successions are divided into the Jurassic Shiranezaki Formation and the Cretaceous Matsuo Group. We collected Bajocian and Callovian–Oxfordian age radiolarians from the Shiranezaki Formation and Valanginian–Barremian age radiolarians from the Matsuo Group. The lithology and age constraints provided by these collected radiolarians suggest that part of the previously defined Matsuo Group actually forms part of the Shiranezaki Formation, with this formation being stratigraphically overlain by the Matsuo Group across a disconformity.
著者
亀高 正男 菅森 義晃 石田 直人 松井 和夫 岸本 弘樹 梅田 孝行 東 篤義 山根 博 杉森 辰次 魚住 誠司 永田 高弘 松場 康二 桑島 靖枝 岩森 暁如 金谷 賢生
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.11, pp.793-820, 2019-11-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
152
被引用文献数
1

舞鶴-小浜地域の5万分の1精度の地質図を新たに作成し,上林川断層の破砕帯の観察結果などと合わせて,超丹波帯と丹波帯の地質構造発達史を検討した.超丹波帯は後期ペルム紀〜三畳紀(?)付加体の上月層・大飯層・氷上層に,丹波帯はジュラ紀付加体の周山・雲ヶ畑・灰屋・鶴ヶ岡・由良川の5つのコンプレックスと古屋層に区分される.これらの地質体は衝上断層によって境され,大局的には北に向かって構造的上位かつ古い地質体が分布するパイルナップ構造を形成している.超丹波帯および丹波帯は東西~北西-南東走向で西〜北西に傾斜した軸を持つ半波長数kmの褶曲構造を形成している.この褶曲構造を切って北東-南西方向に,左横ずれカタクレーサイト帯を伴う地質断層としての上林川断層が延びている.活断層としての上林川断層は右横ずれ成分が卓越し,より古い地質断層の一部が横ずれインバージョンによって再活動していることが判明した.
著者
内野 隆之 石田 直人
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.25-39, 2017-04-05 (Released:2017-04-12)
参考文献数
46
被引用文献数
2

三重県志摩半島の秩父累帯南帯には,中期~後期ジュラ紀付加体からなる築地層群と中期ジュラ紀~前期白亜紀浅海層からなる今浦層群が分布する.5万分の1地質図幅「鳥羽」を作成する過程で,両層群の泥岩から中期及び後期ジュラ紀の放散虫化石を見出し,多くの化石種を基に,より精度の高い堆積年代を示すことができた.築地層群の泥岩はカロビアン期前半~中頃を,そして今浦層群の泥岩はバトニアン期中頃~カロビアン期後半,カロビアン期後半~オックスフォーディアン期中頃,チトニアン期前半という3つの時代を示すことが明らかになった.これらの時代はこれまで報告されていた年代データの範囲に収まる.