著者
前久保 博士 松嶋 喬 長瀬 清 小林 紀夫 大屋 隆介 白井 修 柏木 道彦 大谷 宣人 平井 堅博 武田 茂 田村 康史 上畠 泰 洞田 克己 武田 良一 小林 正伸 小山 稔 吉田 義一 山崎 康夫 斉藤 永仁 吉田 純一 白石 忠雄 岡田 文彦
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.912-918, 1979
被引用文献数
1

肝予備能力判定のための検査法として注目されつつあるグルカゴン負荷後の血漿cAMP濃度の経時的変動な観察した,グルカゴンは生理食塩水に溶解後1μg/kgな経静脈的に投与し,投与前,10, 15, 20, 30分後に採血し血漿cAMP濃度を測定した.健康成人,回復期の急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変とも負荷10分後に血漿cAMP濃度は最高となり以後漸次低下した.空腹時血漿cAMP濃度は健康成人に比べて肝硬変で高く,慢性肝炎でも高い例が多かったが,各症例の差が大きく診断的意義は少なかった.グルカゴン負荷後の血漿cAMP濃度は,肝硬変で10分後健康成人に比べて上昇は少なかったがその差は有意でなく,また慢性肝炎では健康成人に比べて高い例が多かった.したがってグルカゴン負荷10分後の血漿cAMP濃度の空腹時濃度に対する比を算出すると肝硬変では健康成人に比べて有意に低く慢性肝炎では高かったので,両疾患の鑑別に本試験が有用と考えられた.
著者
小林 正伸 小林 隆彦 進藤 正信
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

膵癌細胞株を用いて,DNA microarray法にて多くの遺伝子産物の発現が亢進することを見出した.その中で,アドレノメジュリンという血管拡張因子とされていた遺伝子に着目してアドレノメジュリンアンタゴニストペプチドを腫瘍内に注入する実験を行ったところ,完全に腫瘍が退縮した病理標本上は,太い血管の新生が抑制されており,血流不足となって退縮した可能性が考えられた.今後はNaked DNAにてアドレノメジュリンアンタゴニスト発現ベクターを用いた遺伝子治療の検討が必要になる.さらに,従来の我々の研究成果で膵癌細胞にHIF-1αが恒常的に発現していたという結果を考えると,HIF-1の機能阻害が膵癌の増殖を抑制する可能性が考えられた.そこでHIF-1の機能を阻害することによって膵癌の治療が可能か検討した.その結果,dominant negative HIF-1αの導入によって生体内腫瘍増殖が抑制され,その機序として嫌気性代謝機構の阻害が主な機構であることを見出した.血管新生にはそれほどの差を認めなかった.試験管内での検討でも,アポトーシスに対する感受性が増加していることを明らかにできた.以上の結果は,膵癌の生体内増殖にHIF-1の機能が重要であることを示唆しており,HIF-1を標的とする治療法の可能性を示唆している.今後もHIF-1の下流にて細胞を低酸素環境や低栄養環境から守ろうとする適応応答機構を明らかにし,それを標的とすることで,癌特異的な治療法の開発が可能と考えられた.