著者
大辻 一也 小泉 亜希子 小林 なつみ 鈴木 真理 古川 奈々 久須美 明子 小林 豊和
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-20, 2016-04-09 (Released:2016-06-01)
参考文献数
6

ボディコンディションスコア(BCS)は犬や猫の栄養診断法として、臨床ではよく使われる方法である。アメリカ動物病院協会は2010年にBCSを栄養診断のスクリーニングの一つとして取り入れた。日本動物病院協会もこれを受け入れた。さらに世界小動物獣医協会はBCSを栄養診断の世界標準にすることを決めた。このようにBCSはイヌやネコの栄養診断法としてオーソライズされたにもかかわらず、診断者によるばらつきは避けられない。そこで、われわれはBCS診断の精度を上げることを目的に、BCSモデル(モデル)を作成した。モデルは人工的に成型した模擬肋骨の上に、各種ゴム素材を積層しBCS1~5になるように調整し作成した。被毛の代替えとして起毛した布を使用した。実験にはBCSの異なる24頭のイヌを使用した。動物看護学を学ぶ学生にイヌを触診させ、モデルの有無によって、BCS 値のばらつきに違いが出るか否かを検討した。その結果、BCS3およびBCS4と診断されたイヌ群において、モデルを使用して診断した方が、モデル無しで診断した方に比較して、ばらつきは統計的に有意に減少した。BCS2は対象個体数が少なく統計処理が不可能であった。BCS1とBCS5の個体は被験犬の中に含まれなかった。今後、個体数を増やし検討する予定である。また、BCSはモデル有の方が無しに比較して、スコアが高く診断される傾向があった。この点に関しては、モデルの改良が必要と思われた。さらに、一般のイヌの飼い主に、モデルを用いて飼い犬のBCS測定をさせ、モデルの印象について調査した。その結果、モデルが飼い犬の栄養診断に役立ったかとの質問に対しては、約80%の飼い主が役立ったと回答した。さらに、モデルを使うことで、うまく診断できたかと言う質問に対して、約65%の飼い主がうまく診断できたと回答した。以上の結果、このモデルは改良が必要であるが、獣医療従事者のみならず、イヌやネコの飼い主の栄養診断にも有用であることが示唆された。
著者
宮崎 勝己 小林 豊 鳥羽 光晴 土屋 仁
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ : 日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
no.28, pp.45-54, 2010-02-20
被引用文献数
3

The biology of Nymphonella tapetis Ohshima, 1927, a pycnogonid endoparasitic on some bivalves, is reviewed. After the first discovery of this species from Hakata Bay, Fukuoka in 1926, there were scattered records of N. tapetis from several places in Japan before 2007, but they were on a small scale. In April 2007, N. tapetis appeared suddenly in the commercial bivalve, Ruditapes philippinarum and several other bivalves on the Banzu Tidal Flat in Tokyo Bay. The spread of the parasite was explosive, and caused a mass mortality of the bivalves in the area. Adults of the pycnogonid live freely on or just under the surface of sandy bottoms, and show nocturnal activity. The hatching larva is a typical protonymphon larva. The larva enters the host bivalve, attaches to various soft parts, and feeds on the body fluid of the host. The number of parasites in one host ranges from one to over 60. At least eight different developmental stages can be distinguished in the parasitic larvae and juveniles. Adults leave the host probably just after the maturation molt. The adult male receives one egg-mass onto his ovigers after each mating, and one male can bear up to seven egg-masses. Several experiments were undertaken to attempt to eradicate or reduce the number of N. tapetis, but no effective method has yet been found. Three species of the genus Nymphonella have been described from Japan, the Mediterranean, and southern Africa. They are very similar in morphology, which leads to potential taxonomic confusion.
著者
水野 崇志 高 済峯 小林 豊樹 鹿子 木英毅 中島 祥介
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.161-165, 2002-02-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は78歳の女性.昭和61年よりB型慢性肝炎で経過観察されており, 平成8年8月頃より, 200μg//dl前後の高アンモニア血症を伴う肝性昏睡が頻回に出現.精査の結果, 上腸間膜静脈瘤の形成と, 下大静脈への短絡を認めた.脳症は内科的治療に抵抗性で, 平成11年4月22日, 短絡路遮断目的に手術を施行.上腸間膜静脈は門脈本管流入部付近より径2cm大の静脈瘤を形成, 末梢側は右卵巣静脈を介して下大静脈へと短絡していた.短絡路の試験的クランプによる門脈圧の上昇が160mmH@S22@E2Oから240mmH@S22@E2Oに留まることを確認した後, 短絡路の遮断および静脈瘤の切除を施行した.ドップラーUSにて門脈血流量は術前に比較して著明に改善し, 術後に血中アンモニア値は50μg/dl以下に低下, 肝性脳症も完全に消失した.肝血流量の増加によると思われる肝予備能の改善も見られ, 現在元気に日常生活を送っている.