著者
那須 義次 村濱 史郎 坂井 誠 山内 健生
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.89-97, 2007-12-25
参考文献数
33
被引用文献数
2

2002年から2006年にかけて,日本各地の鳥類の巣・ペリットおよび哺乳類の糞を調査し,ヒロズコガ科ヒロズコガ亜科に属する4種の蛾の発生を確認した.イガが島根県出雲市と大阪府河内長野市のツバメの巣,ウスグロイガが大阪府寝屋川市のハイタカのペリット,マエモンクロヒロズコガが愛媛県宇和島市のシジュウカラの巣,長野県飯綱町のノスリのペリット,小笠原諸島父島のイエネコの糞および鹿児島県奄美大島のイエネコかイヌの糞,アトキヒロズコガが和歌山県橋本市の雑木林に設置したハイタカのペリットを用いたトラップから羽化した.本報告は,日本においてシジュウカラの巣,鳥類のペリットおよび肉食哺乳類の糞から発生した蛾の初めての記録となった.幼虫はいずれも巣・ペリットおよび糞中のケラチン源(羽毛,毛など)を摂食していると考えられた.今回の調査結果と文献記録から市街地に造られたスズメ,コシアカツバメ,ツバメとカワラバトの巣が毛糸や毛織物害虫のイガの野外における重要な発生源であり,こられの巣からイガが家屋内に侵入することが推察された.
著者
首藤 祐介 山本 竜也 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.137-147, 2015-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

行動活性化療法は生活の中で強化される経験を増やす行動を活性化することを目的とした、抑うつのための構造化された短期療法である。本事例においては、大うつ病性障害により休職に至った29歳の男性に対して活動スケジュールと回避行動への介入を中心とした14回のセッションと2回のフォローアップ(1回45分)を実施した。その結果、活動が増加するとともに、Self-rating Depression Scale(SDS)の得点が65点から37点に減少していた。1年後もSDSの得点が37点であり、長期間効果が維持されることが明らかになった。このことから、行動活性化療法は回避行動や反すう、生活習慣の乱れによって抑うつ状態にあるクライアントに効果が期待でき、復職支援にも有効であると考えらえる。
著者
山本 竜也 首藤 祐介 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.247-256, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
20

本研究では、Reward Probability Index (RPI)日本語版を作成し、その信頼性・妥当性を検討した。研究協力者は、大学生392名(男性199名、女性191名、不明2名、平均年齢=19.61)であった。探索的因子分析の結果、RPI日本語版は、「報酬量」、「環境的抑制」、「報酬獲得スキル」の3因子、原版より1項目を削除した19項目から構成される尺度となった。RPI日本語版の内的一貫性(Cronbach’s α=.86)、および、再検査信頼性(級内相関係数=.88)は十分にあった。仮説検定では、RPI日本語版とBehavioral Activation for Depression Scale–Short FormやEnvironmental Reward Observation Scale、Beck Depression Inventory、Center for Epidemiologic Studies Depression Scaleとの相関係数は、仮説を満たしており、構成概念妥当性が確認された。したがって、RPI日本語版は報酬知覚を測定する尺度として、有用であると考えられた。
著者
木村 諭史 市井 雅哉 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.133-142, 2011-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、質問紙調査法により、外傷体験を有する大学生191名を対象に、外傷体験想起時の対処方略の柔軟性が外傷性ストレス反応に及ぼす影響について検討した。対処方略の柔軟性の定義は加藤(2001b)に従い、"失敗した対処方略の使用を断念すること"(基準G)、"新たな対処方略を使用すること"(基準N)の二つを基準とした。分析対象者を二つの基準に従って分類した結果、G-N群は41名、G-noN群は36名、noG-N群は49名、noG-noN群は65名であった。基準G(2)×基準N(2)の2要因共分散分析を行った結果、基準G×基準Nの交互作用がみられた。単純主効果を検討した結果、新たな対処方略を使用した場合、それまで用いていた対処方略を放棄した者は放棄しなかった者に比べて回避症状得点が有意に高い一方で、新たな対処方略を使用しなかった場合、それまで用いていた対処方略を放棄した者は放棄しなかった者に比べて回避症状得点が有意に低かった。以上のことから、本研究では、対処方略の柔軟i生に富むことが外傷性ストレス反応の悪化につながる可能性が示唆された。
著者
西山 佳子 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.145-154, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、日本版BDI-IIの精神症状測定学的有用性を953名の日本人大学生サンプルで検証した。クロンバックのα係数、Spearman-Brownの公式を用いた信頼係数はともに高く、日本版BDI-IIの高い信頼性が示された。Zung自己記入式うつ病スケール(SDS)、DysfunctionalAttitudeScaleForm-A(DAS-A)日本語版との相関係数はそれぞれ先行研究の結果に匹敵する、妥当なものであった。また、確証的因子分析によって、因子構造は身体的・感情的要素と認知的要素からなる2因子モデルに適合することが示された。これらの結果から、日本版BDI-IIは日本人大学生のうつ症状の重篤度を測定するのに適した尺度であることが示された。一方、項目分析および重症度分布から、大学生では日本版BDI-IIの得点が成人よりも高く出やすい傾向が示され、尺度得点だけで測定結果を成人同様に解釈することに疑問が呈された。
著者
長田 庸平 坂井 誠 黄 国華 広渡 俊哉
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.30-35, 2013-04-15

Robinson(1986)はアトモンヒロズコガMorophaga bucephalaとその近縁種であるM. vadonella,M. soror,M. cremnarchaの計4種をbucephala種群としてグルーピングした.その後,Ponomarenko & Park(1996)は韓国京畿道でアトモンヒロズコガに近縁なM. parabucephalaを新種として記載した.どの種も前翅の後方に茶色い大きな斑紋を有し,種によってその斑紋の形状がわずかであるが異なっている.交尾器の形状は上記の近縁種間で顕著に異なるが,成虫の斑紋が互いによく似ているため国内でも交尾器の形状に基づいた分類学的な情報が必要であると考えた.著者らは国内各地の「アトモンヒロズコガ」とされている標本を解剖し,交尾器を観察した.その結果,北海道から八重山までのほとんどの地域で得られた個体はM. bucephalaであることを確認したが,大分県日田市産の交尾器の形状がM. bucephalaとは顕著に異なり,朝鮮半島に分布するM. parabucephalaと同定できた.国内ではこの種を大分県日田市のみで確認したが,国外では朝鮮半島の他に中国広東省南嶺山脈でも確認した.なお,本種の雌交尾器を初めて図示した.1.Morophaga parabucephala Ponomarenko & Park,1996(新称) ニセアトモンヒロズコガ(Figs 1a, 2a, 3a-h) 前翅後縁の暗褐色斑の基部の幅が狭く,外縁が蛇行する.雄交尾器のバルバの後縁は直線状,サックスは細く,エデアグスは非常に細長い.雌交尾器の交尾口周辺の縁は中央で切れ込む.分布:九州(大分県);韓国(京畿道),中国(広東省)寄主:不明 2.Morophaga bucephala(Snellen,1884) アトモンヒロズコガ(Figs 1b, 2b, 4a-h) 前翅後縁の暗褐色斑の基部の幅が広く,基部が丸みを帯びる.雄交尾器のバルバの後縁は強く窪み,サックスはやや幅広く,エデアグスは細長い.雌交尾器の交尾口周辺の縁はより強く切れ込む.分布:北海道,本州,四国,九州;ロシア,中国,韓国,インド,ビルマ,マレーシア,スラウェシ島,ニューギニア島.寄主:カワラタケ(サルノコシカケ科)から得られた記録がある.
著者
坂井 誠
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
人文学部紀要 (ISSN:09159584)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.23-48, 2004-03

When it comes to economics, President George W. Bush is purported to be a believer in neo-liberalism, which embraces both individual liberty in economic activities and minimal intervention by the government in the national economy. Neo-liberalism, as exemplified by supply-side economics, reared its head as anti-Keynesian doctrine and grew even stronger just before former President Ronald Reagan took office in the early 1980s. Under the Bush administration, three tax reduction packages have been put forward times since 2001, based on proposals introduced by the president, modeled after Reagan's policies and typically featuring both huge tax cuts and increased defense spending. When we take a careful look at Bush's policies including this series of tax relief packages, we find that most of them were introduced chiefly to stimulate the national economy on a short-term basis, reflecting Keynes and Keynesian doctrine rather than the more long-term perspective of neo-liberal supplyside structural reform. It appears that Bush, preoccupied with his goal of re-election in 2004, has been fundamentally adopting the eclecticism he has attributed to neo-liberalism in introducing his policies, including tax cuts, in spite of their Keynesian features. If the huge budget deficit continues, it will have a negative impact on the national economy in the future, particularly if Bush reverts to being as economic neo-liberalist and political conservative, and makes a strong effort to revise the sunset rovisions that exist in the tax relief packages. It is quite probable that the U. S. economy will in the long run inevitably confront the downward pressure under the influence of either higher long-term interest rates triggered by a larger budget deficit, through the repeal of sunsets, or a relatively heavier tax burden on U. S. citizens.
著者
守上 祐樹 藤森 明 久米井 真衣 灰原 博子 岡田 志緒子 溝渕 憲子 坂井 誠 中西 健
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.187-190, 2016 (Released:2016-02-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

血流量 (QB) とTMPの関係を明らかにする目的で, 血液透析 (HD) および前希釈オンライン血液透析濾過 (OHDF) の際, 血液側入口圧 (PBi), 血液側出口圧 (PBo), 透析液側入口圧 (PDi), 透析液側出口圧 (PDo) の4点の圧を測定した. 透析液流量は500mL/分とし, 血液流量 (QB) を100mL/分から250mL/分まで変化させTMPの変動を観察した. 5種類の計算式でTMPを算出し比較した. TMPの値は計算法によって大きく異なった. QBを上昇させた場合, HD条件ではすべての計算法でTMPは低下した. 一方, 前希釈OHDFではPBiを測定した計算法でTMPは上昇, その他の計算法では低下した. QBを上昇させると血液側の圧損失が増大するため, PBiを測定しなければ計算上のTMPの誤差が大きくなるものと考えられた. QB上昇の際, HDでは剪断速度の上昇のためTMPは低下し, 前希釈OHDFではQBの上昇により希釈率が低下したためTMPが上昇したと考えられた.
著者
蔵本 築 桑子 賢司 松下 哲 三船 順一郎 坂井 誠 岩崎 勤 賀来 俊 峰 雅宣 村上 元孝
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.267-273, 1978-05-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
16
被引用文献数
5

脳出血, 脳梗塞に伴う心電図変化の成因を検討する目的で, 発作前1カ月内及び発作後の心電図, 臨床検査成績が得られ, 剖検上確認された老年者脳出血18例, 脳梗塞29例について, 発作前後の心電図, 臨床検査成績, 血圧の変化, 剖検による冠狭窄度, 脳病変の部位, 大きさ等を対比検討した.発作前後の心電図変化は脳出血88.9%, 脳梗塞89.7%に認められST, T変化がそれぞれ61.1%, 69.0%と高頻度に見られ, 高度な虚血性変化は脳梗塞で多く見られた. 不整脈は脳出血55.6%, 脳梗塞41.4%に見られ, 発作時の心房細動出現は脳梗塞にのみ10.3%に見られた. 期外収縮は脳出血に多く上室性22.1%, 心室性11.1%, 脳梗塞ではそれぞれ10.3%, 3.4%であった.脳卒中発作前後のヘマトクリット上昇は脳梗塞で大きい傾向があり, 虚血性ST, T変化を示した群では脳出血2.44±0.57, 脳梗塞6.04±1.74の上昇を示し, 著明なヘマトクリットの上昇による冠微小循環の障害が虚血性ST, T変化を斉すことを示唆した.脳卒中発作時の収縮期血圧上昇は脳出血では52.5±8.9mmHgで心電図変化の程度に拘らず200mmHg以上の高値を示したが脳梗塞では8.7±10.4とその変動は僅かで血圧上昇が心電図変化の原因とはいえなかった.冠動脈狭窄の程度は脳出血, 脳梗塞共各心電図変化群の間に狭窄指数の差が見られず, 虚血性心電図変化が太い冠動脈の狭窄によるものではないことを示した. 一方心筋梗塞の合併は脳出血5.6%に比し脳梗塞で50.0%と有意に高頻度であった.脳病変の部位, 大きさでは外側型脳出血に虚血性ST, T変化の多い傾向が見られたが, 脳梗塞では中大脳動脈領域の梗塞に於ても心電図変化に一定の傾向はなく, 部位による特徴は認められなかった. また両群共病巣の大きさと心電図変化には一定の傾向は見られなかった.脳出血, 脳梗塞の虚血性心電図変化は病巣の部位, 大きさ, 冠硬化, 血圧上昇等とは関連が認められず, ヘマトクリット上昇による冠微小循環の障害がその一因と考えられた.
著者
坂井 誠 濱松 晶彦 久保木 謙二 蔵本 築 黒澤 晋一郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.447-455, 1994-06-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

心房細動による塞栓症の一次予防の観点から老年者心房細動40例 (固定性33例, 発作性7例, 平均年齢76歳, 基礎疾患: 弁膜症15例, 非弁膜症25例) を対象に経食道心エコー (TEE) 法による心房内血栓の検出と凝固線溶分子マーカーの動態, 血栓のワーファリン溶解効果について検討した. 凝固線溶分子マーカーとして以下の9項目を測定した. FDP-E, Thrombin-ATIII複合体 (TAT), Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1), α2PI複合体 (PIC), D-dimer, t-PA, free tPA, tPA・PAI-1複合体, Prothrombin fragment 1+2. また, 動脈硬化性疾患を有しない洞調律21例 (平均年齢75歳) を対照として同様にこれらのマーカーを測定した.TEEにて左房内血栓は心房細動例中14例, 35% (心耳内8例, 心房内6例) に認められ, 弁膜症 (57% vs 27%), 心房内モヤモヤエコー (79% vs 42%) を血栓を認めない例に比し高頻度に有した. 左房径, 左室収縮能と血栓の有無には関連がなかった. 心房内および大動脈壁在血栓 (6例) を有する例は対照群に比しFDP-E, D-dimer, PICの有意の上昇を認め, マーカー9項目中4項目以上の異常を有する頻度が高かった. マーカーからみた心房内と大動脈血栓に対する sensitivity 90%, specificity 65%, predictive accuracy 72%. 左房内に大血栓を有する6例中4例ではワーファリン投与後, 血栓の消失と凝固線溶分子マーカーの正常化を認めたが, 血栓非溶解例でも凝固線溶分子マーカーは低下した. 血栓非溶解例のワーファリン投与前のtPA, PAI-1, tPA・PAI-1複合体値は溶解例に比べ高かった.以上より, 心房内血栓例は凝固線溶分子マーカーの異常を有し, TEEによる心房内および大動脈壁在血栓の検出と凝固線溶分子マーカー測定の組合わせは心房細動例における塞栓症発現ならびに血栓のワーファリン溶解効果を早期にスクリーニングしうる可能性がある.
著者
古川 健亮 谷 聡 福田 昌輝 西澤 昭彦 坂井 誠 森田 宗孝 今西 築 山下 順平 北澤 荘平 老籾 宗忠
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.160-163, 1999-02-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
6

症例は25歳女性.右下腹部に手拳大の腫瘤を認め入院.虫垂炎に併発した腹腔内膿瘍を疑い,右半結腸切断術を行ったが,切除標本にて腸結核と診断された.その後,抗結核療法を開始し,1カ月後には炎症所見の改善と残存潰瘍の消失を確認した.最近の結核が種々の医療基盤の変遷によって特異な形で出現することもあると考えられ,本例では腹腔内膿瘍による腹部腫瘤を初発症状とした貴重な1例として報告した.
著者
蔵本 築 松下 哲 三船 順一郎 坂井 誠 村上 元孝
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.115-120, 1977-03-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

老年者肺炎12例に於て肺炎と同時または稍遅れて前壁中隔硬塞を思わせる心電図変化を認めた. すなわちV1-V3, V4のQSまたはrの減高, ST上昇, 冠性Tが出現し, 肺炎の軽快と共に異常Qは約一週間, 陰性Tは1カ月以内に正常化し, その後剖検し得た8例にはいずれも前壁中隔硬塞を認めなかった. 臨床所見では狭心痛はなく, 呼吸困難, 咳痰, チアノーゼ, 意識障害等が見られ, 肺炎は2葉以上にわたる広範な病巣を示し, 胸膜癒着または胸水を伴った. 検査所見ではGOTの軽度上昇を4例に認めたにすぎず, BUNの一過性上昇, CRP強陽性, PO2低下と共にヘマトクリットは全例4~9%の著明な上昇を示した.剖検し得た8例では肺気腫を6例, 気管支炎を7例に, 剖検時肺炎を6例に認めた. 陳旧性後壁硬塞及び後壁心外膜下出血を各1例に認めた. 左冠動脈前下行枝の50%以上狭窄を7例に認め, 心筋小胼胝を5例に認めた.急性心筋硬塞様心電図の発現機序として慢性肺疾患によるQRS軸の後方偏位, 肺炎に伴う急性右心負荷, hypoxia, 中等度の冠硬化などの上にヘマトクリット, 血液粘度の上昇等が加わって心筋に広範な一過性虚血性変化を来たすものと考えた.
著者
坂井 誠
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
恵泉女学園大学人文学部紀要 (ISSN:09159584)
巻号頁・発行日
no.14, pp.19-42, 2002-01

It was once conventional wisdom among economists that a small increase in the minimum wage would result in a small reduction in the employment of teenagers and unskilled workers. In fact, however, the effect of minimum wages upon employment has been an unsolved question for the last several decades. In the mid-1990s this issue attracted a considerable amount of attention with the emergence in academic circles of some remarkable research which challenged conventional beliefs. This report tries to review both the characteristics and the problems of the current minimum wage system by analyzing the effect on employment of minimum wage increases, seen simultaneously from a theoretical and an empirical viewpoint. First, the effects of minimum wage hike on the employment are not uniform; both negative and positive results are possible, depending on the economic circumstances at the time. In this regard, the issue is still left unresolved. Second, minimum wage increases change the distribution of wages in such a way that low-income households, devoid of attractiveness as a labor force, receive a smaller share of the pie. The higher minimum wage is not bringing about the results that it was primarily designed to deliver early in the last century. Third, paradoxically, the idea of forming more flexible labor markets without tight wage regulations seems to be a reasonable way to create diverse low-wage markets and increase employment opportunities. For example, if the greater number of local governments begins to set their minimum wages lower than the federal regulations, it may be effective in supporting low-income households, including former welfare recipients.
著者
福田 光男 有川 千登勢 村上 多恵子 坂井 誠 岩見 知弘 吉野 京子 大塚 亜希子 竹田 英子 中垣 晴男 野口 俊英
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.101-110, 2004 (Released:2005-09-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3

本研究は, 口臭外来を受診した756名の患者の問診票を分析することにより, 口臭を主訴とする患者の心理的背景を読み取り, 患者対応を的確にすることを目的とした。口臭を意識したきっかけは, 63.6%が 「人に指摘されて」であり, 「人の仕草や態度で」33.7%, 「自分で気がついた」33.5%であった。口臭を指摘した相手は, 配偶者, 子供, 友人の順であった。口臭を感じる時間帯は 「起床時」が最も多く, 「一日中」「空腹時」「仕事中」「疲労時」と続いた。口臭を意識する時として 「対話中」が最も多く, ついで 「対話中の相手の態度を見た」「常に」「混んだ場所や狭い場所にいる」であった。口臭のため困ることでは 「話をするとき」が最も多く, ついで 「消極的になる」「人と一緒に行動できない」「物事に集中できない」の順であった。口臭に関する相談相手がいないと回答した人が半数以上みられた。また, 人からの指摘はなく自分で口臭に気づいたというケースでは, 人に口臭を指摘されて来院したケースより, 「消極的になる」「人と一緒に行動できない」「物事に集中できない」などの回答が有意に多かったことから, より生活上の制約を感じていることが示唆された。以上より口臭を主訴とする患者を診察する場合, 口臭を他人の態度や自分で気づいたと訴えるケースや, 相談相手がいないケースに, 患者の心理的背景まで考慮した対応が必要となってくると推察される。