著者
小橋 浅哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.427-435, 2005-10-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

紙類に含まれる放射能のレベルを知るため, 我が国で製造された雑誌, 新聞, コピー用紙等の紙類について天然放射性核種 (226Ra, 228Ra, 228Th及び40K) の放射能をγ線スペクトロメトリにより定量した。また, それらの放射性核種の源を明らかにするため, 試料のX線回折測定を行った。文庫本の226Ra, 228Ra, 228Th, 40Kの平均含有量は, それぞれ6.4, 21.5, 23.7, 18.8Bqkg-1であった。他の種類の試料については, それらの核種の含有量は, 文庫本並みかそれ以下であった。228Thの濃度は, 228Raの濃度よりいくぶん高かった。紙類の製造過程において原料から228Raが228Thより優先的に水に溶出したのであろう。天然放射性核種の濃度は互いに相関していた。X線回折測定の結果は, 試料にはカオリナイト, 滑石及び方解石が含まれることを示した。試料のカオリナイト含有量は, 天然放射性核種の濃度と相関があり, このことは, 紙類に含まれている天然放射性核種の大部分は, 紙類の填料又は塗工用顔料として用いられているカオリナイトによりもたらされていることを示している。データの回帰分析の結果は, 填料用カオリナイトの天然放射能含有量は, 顔料用カオリナイトの天然放射能含有量より高いことを示した。
著者
小橋 浅哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.92-95, 1997-02-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1 3

The radioactivities of the naturally occurring radionuclides (226Ra, 228Ra, 228Th and 40K) and a fallout nuclide (137Cs) in newspapers issued during 1990s in Japan and information business papers were determined by gamma-ray spectrometry to obtain information on radioactivity level of papers and the sources of radionuclides contained in papers. The concentrations of the naturally occurring radionuclides in the newspapers were low, whereas the 228Ra and 228Th contents of an information business paper were as high as 30 Bq kg-1. Perhaps the thorium series nuclides contained in this information business paper was present in the kaolinite filler used in the paper. 137Cs was detected in all the newspapers, while the radionuclide was not detected in the information business papers. The 137Cs concentration in the newspaper ranged from 0.1 to 0.2 Bq kg-1. Mechanical pulp was the main constituent of the newspapers, and 137Cs in the newspapers was maybe brought with the mechanical pulp which kept a part of fallout 137Cs contained in the material wood. The data obtained in this work may be useful to estimate radioactivity released from incinerators to the environment by burning waste paper.
著者
小橋 浅哉 谷川 勝至
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

紙は、植物を原料として製造されるパルプを主な成分としている。紙類に含まれる放射能のレベルや紙類をめぐる放射性核種の動態を明らかにするため次のような研究を行った。1 書籍中の^<137>Cs濃度の発行年に伴う変化は、^<137>Csフォールアウト降下量の年変化のパターンによく似ている。その原因を明らかにするために、国内で1960年代に印刷された書籍について、中身と表紙に分けて^<137>Csの含有量を測定した。中身はほとんど^<137>Csを含んでいなかった(0.2 Bq kg^<-1>以下)。表紙については、芯材の板紙が稲わらを原料とする黄ボールのものは^<137>Cs濃度が高く(1.0-5.7 Bq kg^<-1>)、チップボールのものには^<137>Csは検出されず、半黄ボールのものは両者の中間の濃度を示した(0.2-1.0 Bq kg^<-1>)。このことから書籍に含まれる^<137>Csは、ほとんど稲わらから来たことがわかった。書籍中の^<137>Cs濃度と^<137>Csフォールアウト降下量の年変化の類似は、稲わらの^<137>Cs含有量の年変化および1960年代半ばからの表紙の板紙の種類の変化により説明できる。2 国内で1990年代に発行された新聞および情報用紙について、天然放射性核種(^<226>Ra、^<228>Ra、^<228>Th、^<40>K)およびフォールアウト核種(^<137>Cs)の放射能を定量した。新聞試料中の天然放射性核種の濃度は低かった。情報用紙の一つには、30 Bq kg^<-1>もの濃度の^<228>Raおよび^<228>Thを含んでおり、これらの核種は、填料のカオリナイトによってもたらされたと推定された。^<137>Csは、情報用紙においては検出されなかったが、新聞については全試料において検出された(0.1-0.2 Bq kg^<-1>)。新聞用紙については、使用されている機械パルプに原料木材に含まれていたフォールアウトの^<137>Csの一部が残っているため、^<137>Csが検出されたと推定された。紙類に含まれる放射能の測定データをもとに、紙類の燃焼に伴いごみ焼却場から排出される放射能の影響について、石炭との比較により考察した。
著者
小橋 浅哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.275-280, 2011 (Released:2011-07-29)
参考文献数
14

雑誌,新聞等の紙類の灰に含まれる天然放射性核種(226Ra,228Ra,228Th及び40K)の濃度を,紙類中のそれらの濃度及び灰分量から決定した。34試料の灰に含まれる226Ra,228Ra,228Th及び40Kの平均濃度は,それぞれ27,68,75及び75Bq kg-1であった。環境中における紙類の灰からのγ線の有害性を評価するために,各灰試料のラジウム当量を計算した。コピー用紙の一つは,602Bq kg-1という高いラジウム当量を示した。しかし,ラジウム当量の平均値は,140Bq kg-1であり,環境的な健康問題を起こすレベルではなかった。
著者
下浦 享 小橋 浅哉 小池 真 中村 尚 川邉 正樹 永田 俊 三谷 啓志 井尻 憲一 山本 昌宏
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.6-11, 2011-05

「原子核とその安定性」/「放射線と半減期」/「原子核分裂」/「セシウム137およびヨウ素131の環境化学」/「放射線に関する単位」/「大気中の物質拡散」/「海洋中の物質拡散」/「生態系における濃縮(生物濃縮)」/「放射線の生物影響」/「体外被曝と体内被曝」/「土壌中の汚染物質の拡散の数理と予測」