著者
小玉 徹
出版者
大阪市立大学経済研究会
雑誌
季刊経済研究 = The quarterly journal of economic studies (ISSN:03871789)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-30, 1999-06

I 住宅政策と都市計画 : 筆者は別稿で, 欧米の住宅政策をユニタリー・モデルとデュアリスト・モデルの2つに分類するケメニーの論旨を紹介した. 前者はノンプロフィットの原価賃貸(cost renting, 家賃を経常費補填に必要なレベルに設定)と民間賃貸とが競合し, かつ併存しうる市場メカニズムを有するのにたいし, 後者は利潤目的の借家市場に依拠しながらも, 結果的には住宅テニュアを持家とマージナルな公営賃貸に収束させてしまう, というのである. ……
著者
小玉 徹 矢作 弘 北原 徹也 小長谷 一之 佐々木 雅幸 大場 茂明 桧谷 美恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究代表は、2007年3月、「大不況以来で最悪の10年間」と表現されるニューヨークの深刻なホームレス問題について調査(自費)した。そこで明らかになったことは、1996年の福祉改革によるワークフェアへの移行により、住宅への補助が削減されるとともにジェントリフィケーションの影響で家賃が上昇し、ワークファーストを強いられたワーキングプアとなった母子世帯がシェルターでの生活を余儀なくされている、という事態であった。これに対してローカルな福祉システムが作動しているドイツでは、高い失業率にもかかわらず、失業扶助、社会扶助、住宅手当によりソーシャル・ミックスが維持されてきた。しかしながら2005年以降、ハルツ改革によりワークフェアへと移行したことで、住宅手当、就労支援の両方にかかわる変更がなされ、都市での社会的分離の進行が危惧されていることが、最近、刊行された論考で指摘されている(Kafner S.,2007,"Housing allowances in Germany".in Kemp P.A.ed.Housing allowances in comparative perspective,The Policy Press).。なおドイツでは1999年以降、問題地域の対応プログラムとして社会的都市(soziale stadt、全国200カ所)がスタートしている。ニューディール・コミュニティ、都市再生会社によるイギリスのインナーシティ再生では、ニュー・エコノミーによる雇用の拡大、住宅、雇用、小売り、コミュニティ・サービスとレジャー施設のコンパクトな配置、さまざまな住宅テニュアの混合によるソーシャル・ミックスが意図されている。しかしながらこうした主張は、物理的な改変が社会問題の解決につながる、というニュー・アーバニズムに依拠している。
著者
小玉 徹
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

工業化からポスト工業化時代への移行は、中心市街地のアメニティ向上にむけた都市再生を促すとともに、空間的な社会的排除という問題を生起させる。本研究は、労働市場政策と住宅政策について、アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダの比較検討から、都市における社会的排除への対応を類型化した。これにより日本の置かれている問題状況を明らかにし、社会的包摂を組み込んだあるべき都市再生のあり方を提示した。