著者
碓井 照子 小長谷 一之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.621-633, 1995-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2 6

Many studies are being conducted on the 1995 Hanshin-Awaji Earthquake from the earth science and architectural technological aspects, but urban structure is an important intervening factor link-ing causes and damages of an urban earthquake. This note will give a few insights from this point of view. The distribution of debris of collapsed structure clustered around (1) Suma-Nagata district, (2) Sanno-miya-Yamate district and (3) Nada-Higashinada district was analyzed; (1) and (3) are inner-city areas with many wooden houses, located 3 to 10 km from the central business district. Some network analyses are further performed usig GIS in the district of cluster (3). The number of arcs within a given road distance shows a characteristic decay caused by the earthquake, but its pat-tern varies by the distance band given. The fractal dimension of road network effectively summa-rizes this information. Calculation of the fractal dimension extracts many points either restricted by transportation facilities or river lines, or enclosed by debris as “dead ends”.
著者
小長谷 一之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.93-124, 1995-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
54

政治学者や社会学者の多くは,投票行動の集計結果(投票率,得票率)に現われる地域差を,投票性向の異なる社会階層の居住構成が,地域ごとに異なることに帰着させてきた(構成主義的アプローチ).ところが,地理学者が行なってきた諸外国の研究事例では,地域差のなかで,構成主義理論によっては説明できない部分がかなりあることがわかっている.この説明未了の部分の大半は,近隣効果と呼ばれる地域文脈的効果によるものと考えられる.近隣効果の発見は,過去30年の選挙地理学の最大の成果の1つである. 本稿では,京都市における1991年市議選の都市内地域における投票情報を分析し,次の3点を発見した.(1)有権者の階層構成の地域差は,投票率・得票率の地域差を説明できるほど大きくはない.(2)「地域別の投票率・得票率」は,地域ごとに変動し,その地域差パターンは構成主義モデルではほとんど説明できず,強い残差が残る(集計的近隣効果の存在).(3)「地域別かつ階層別の投票率・得票率」は,同じ階層について比較しても,地域ごとに変動し(非集計的近隣効果の存在),その地域差パターンは階層によらず,「地域別の投票率・得票率」の地域差パターンに類似する.この3つの現象は,普遍性をもち,たがいに密接に結びついていることがわかった.
著者
小長谷 一之
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.264-275, 1991-11-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2

近年のアメリカ都市構造に関するいくつかのデータや研究 (Pisarski, Orski, Cervero など) によれば, 1980年代が, 都市構造に大きな変化が生じた時期であったことを示す兆候がいくつも見られる。それらを総括すると, 1980年代は, 戦後の構造変容の基調をなしていた郊外化が, 決定的な段階を迎えるに至った時期であるといえる。その特徴としては, (1) オフィス (中枢管理) 部門の郊外化, および, (2) 郊外核の集積の2つが上げられよう。こうした都市構造の変化は都市交通の問題と深く関っているため, 特に都市交通地理学の分野で活発な議論がなされたきた。交通流動や都市圏の側面からニューイングランドをあつかった Plane は, 通勤流動を類型化した上で, 郊外への雇用の移転に伴い従来見られなかったような逆通勤や交差通勤が急増し, 都市構造が複雑化していることを示した。シカゴでも Sachs が, インナーシティ雇用の衰退と, 対照的な郊外核の成長の結果, 大規模な逆通勤が発生し, 交通混雑を引き起こしいることを指摘している。このように郊外雇用の中心となってきた郊外核は, Lineberger や Cervero などにより分類されその実態が把握された。その結果, (特に交通に関する) 都市問題の観点からは, 郊外核の集積度や機能混合性を高めることが重要であるとの見解が示されている。
著者
中村 敏 小長谷 一之
出版者
日本学術会議協力学術研究団体 総合観光学会
雑誌
総合観光研究 (ISSN:13488376)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.37-46, 2014 (Released:2021-05-07)
参考文献数
21

Recently tourist trains' (as sightseeing objectives themselves) development strategy become more and more important for the regeneration of local line area. However there may be the cases of such tourist trains, there are few comparative study and real evaluation of economic effect. In this study, text mining method is applied to newspaper data base, and 296 tourist trains are found. Existing 67 typical tourist trains are extracted and classified by 5 attracting factors. Accordingly JR Kyushu proved to take most actively the 'tourist trains' (as a sightseeing resources) development strategy, to run 9 famous tourist trains, Of which 'IBUSUKI NO TAMATEBAKO' seems most successful. The economic effect is evaluated about ‘IBUSUKI NO TAMATEBAKO' up to ¥ 6 billion.
著者
小長谷 一之
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.234-246, 1990-10-28 (Released:2017-04-27)
被引用文献数
1

Formerly, I have pointed out that recent developmental stages of Geography of Urban Transportation can be classified into three fields (Konagaya, 1990), focusing on the relationships between urban structure and three transport elements (mode, establishment, flow) (Fig. 1). Here I reexamined the relationship between urban structure and transport mode, because there are a few but important studies in recent research works. Adams (1970), Kirby and Lambert (1985), Muller (1981, 1982) have studied the influence of transport mode on the structure of urban quarter. Then they have found that prevailing transport mode have changed the structure of urban quarter. So urban quarter can be classified according to four different prevailing transport modes (Fig. 2). They termed four periods that these prevailing transport modes were dominant as 'Urban transport eras'. I have explained these topics in chapter II. Most impotant mode transformation in America was that of transit to auto in 1930's and 1940's (from II Urban transport era to III Urban transport era). Snell (1974), Whitt (1982), Yago (1984) have confirmed the fact that this transfomation was due to 'The Great Transportation Conspiracy's by automobile companies, which had ultimately made American cities into large energy consumers. I have traced this tendency in chapter III. The history of urban transportation policy, planning and study after the World War II are divided into three periods (Fig. 3): In the first period, highway investment is the largest objective, and large scale aggregate analyses are developed. In the second, transit planning revives, and small scale disaggregate analyses are developed. In the third, transit planning tends to be reduced.
著者
小長谷 一之
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.93-124, 1995
被引用文献数
4

政治学者や社会学者の多くは,投票行動の集計結果(投票率,得票率)に現われる地域差を,投票性向の異なる社会階層の居住構成が,地域ごとに異なることに帰着させてきた(構成主義的アプローチ).ところが,地理学者が行なってきた諸外国の研究事例では,地域差のなかで,構成主義理論によっては説明できない部分がかなりあることがわかっている.この説明未了の部分の大半は,近隣効果と呼ばれる地域文脈的効果によるものと考えられる.近隣効果の発見は,過去30年の選挙地理学の最大の成果の1つである.<br> 本稿では,京都市における1991年市議選の都市内地域における投票情報を分析し,次の3点を発見した.(1)有権者の階層構成の地域差は,投票率・得票率の地域差を説明できるほど大きくはない.(2)「地域別の投票率・得票率」は,地域ごとに変動し,その地域差パターンは構成主義モデルではほとんど説明できず,強い残差が残る(集計的近隣効果の存在).(3)「地域別かつ階層別の投票率・得票率」は,同じ階層について比較しても,地域ごとに変動し(非集計的近隣効果の存在),その地域差パターンは階層によらず,「地域別の投票率・得票率」の地域差パターンに類似する.この3つの現象は,普遍性をもち,たがいに密接に結びついていることがわかった.
著者
小玉 徹 矢作 弘 北原 徹也 小長谷 一之 佐々木 雅幸 大場 茂明 桧谷 美恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究代表は、2007年3月、「大不況以来で最悪の10年間」と表現されるニューヨークの深刻なホームレス問題について調査(自費)した。そこで明らかになったことは、1996年の福祉改革によるワークフェアへの移行により、住宅への補助が削減されるとともにジェントリフィケーションの影響で家賃が上昇し、ワークファーストを強いられたワーキングプアとなった母子世帯がシェルターでの生活を余儀なくされている、という事態であった。これに対してローカルな福祉システムが作動しているドイツでは、高い失業率にもかかわらず、失業扶助、社会扶助、住宅手当によりソーシャル・ミックスが維持されてきた。しかしながら2005年以降、ハルツ改革によりワークフェアへと移行したことで、住宅手当、就労支援の両方にかかわる変更がなされ、都市での社会的分離の進行が危惧されていることが、最近、刊行された論考で指摘されている(Kafner S.,2007,"Housing allowances in Germany".in Kemp P.A.ed.Housing allowances in comparative perspective,The Policy Press).。なおドイツでは1999年以降、問題地域の対応プログラムとして社会的都市(soziale stadt、全国200カ所)がスタートしている。ニューディール・コミュニティ、都市再生会社によるイギリスのインナーシティ再生では、ニュー・エコノミーによる雇用の拡大、住宅、雇用、小売り、コミュニティ・サービスとレジャー施設のコンパクトな配置、さまざまな住宅テニュアの混合によるソーシャル・ミックスが意図されている。しかしながらこうした主張は、物理的な改変が社会問題の解決につながる、というニュー・アーバニズムに依拠している。