著者
小畑 郁男
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.127(2004-MUS-058), pp.1-6, 2004-12-12

楽曲の統一感は素材の同質性に、変化感は素材間の対照性に起因すると考えられる。旋律素材の同質性という視点から主要テーマの関係を分析していくことによって、ベートーヴェンの“ピアノソナタ第28番”の作品としての統一性について考察し、以下の3つの結論を得た。(1)第1楽章第1主題の冒頭にあり、楽曲全体を通して現れ、作品の統一に寄与する音程をレティ(R師i Rudolph)が提唱した概念「原細胞」によって説明することができる。(2)先行する主題の中に、後続する主題の要素、あるいはその源となる旋律素材が含まれている。(3)楽曲全体を3部分形式的な統一体として考えることができる。
著者
佐野 仁美 小畑 郁男
出版者
京都橘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、学生が主体的に旋律を表現できる力を養うための教授法を開発することである。楽譜と音楽表現との間には客観的な法則性があることの例証を通して、楽譜には書かれていない音楽表現を楽譜から読み取る方法を一般理論化した。また、音楽表現を楽譜上に視覚化していく方法を提案するとともに、理論をもとに、教員養成課程でよく用いられる楽曲を多く取り上げて、音楽表現の方法を例示した。最終年度には、まとめとして、一般の音楽愛好家を対象とした『究極の読譜術――こころに響く演奏のために――』を出版した。
著者
小畑 郁男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.123, pp.29-34, 2002-12-22
参考文献数
15
被引用文献数
1

多くの音楽様式が混在する現代においては、どのような音楽様式にも適用することができ、音楽の聴覚的な把握に貢献する中立的な音楽理論の必要性は高いといえる。このような状況を背景として、本報告では、量的に不協和度を算出する感覚的協和理論の作曲技法への三つの応用例が提示される。この12等分平均率を前提とする三つの例は、(1) 感覚的不協和度の差異による音高構成の設計、(2) 声部の澄明性の差異による音高構成の設計、そして (3)「R協和音列」に関する応用例である。R協和音列は、基準音を中心とした上下に対称的な音程構造を持ち、「和声二元論」を例証する音響現象である。Music today having a great variety of styles, new music theory that is based on auditory sense and able to apply to every musical style is needed. With the background of necessity for such new theory, three applications of sensory consonance theory to the design of pitch combination are presented based on the following three criteria. They are (1) difference of sensory dissonance, (2) the clearness of voice part in music, and (3) sensory consonance tone series, which consists of symmetrical interval structure centering around optional base tone and illustrates "Harmonic Dualism".