著者
小谷 昌
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.7-13_2, 1968

昭和30年夏, 琵琶湖湖南水域において, H. S型精密測深機を使用して湖沼調査を実施し, 湖底地形・底質・水中植生・湖岸構造物など陸水地理的な内容を総合的にあらわした, 1万分1湖沼図琵琶湖湖南水域I・IIの2図葉を作成した。基本測量にもとづく湖沼図の第1号であるが, 同年3月には筆者らの指導のもとに静岡県が浜名湖の深浅測量図を作成した。これも同種の音響測深機を使用し, 音響測深法による完全な公共測量の形式をそなえた最初のものであった。<BR>敗戦のもたらした深刻な食糧工・エネルギー資源不足の対策と, 荒廃した国土の災害保全を推進するため国土総合開発法が制定されたのは昭和25年5月であった。<BR>湖沼図がこのような時代的背景のもとに, 河川・湖沼など, 基本図の空白部を埋める目的以外に, 国土総合開発計画の基本的な資料として十分その効果を発揮できるよう, 設計上の考慮がはらわれていることはすでにのべた。<BR>このようにきわめて明快な目的設定のもとに湖沼図像のアウトラインの素描がおこなわれた。等深線であらわされる湖底地形は単なる湖水の深浅や, 水面下の土地の凹凸の忠実な表現ではなく, 地形営力 (湖水の運動など) の総和であり, 底質や水中植生と密接な関係を有し, 水産生物環境の重要な部分をしめている。漁港や舟溜り, 漁業組合などの図上表示は漁労および流通の拠点を, 揚水ポンプ場と関連水路の分布は湖水の逆水灌漑 (農業用水) 地域をそれぞれあらわすものである。<BR>湖沼図の構成要素のうちもっとも基本的な等深線については如上の目的に適合させるため, 従来の挿入法によらず, 測線のネットワークから音測記録の解析, 等深線の図化にいたる新らしい作業システムを考案し, 机上実験による方法論の確立をこころみた。次いで予備設計, 現地作業の工程を経て琵琶湖湖南水域の湖沼図の試作図を完成印刷した。試作図は直ちに各省, 県, その他関係諸機関および大学などに配布し, アンケートをとり, 一方学識経験者および水資源開発担当官15名による意見聴取会を開催し, ユーザーの立場における試作図の検討をおこなった。<BR>ヒアリングおよびアンケートの結果はユーザーの側から試作図に対する補足的な要望と, 読図理解の難易という二点に関する再検討資料として活用し, 予備設計の部分的な修正をおこなった。とくに湖沼図はその性質上対象ユーザーの想定階層をきわめ広範にとってあるため, 図の構成要素を重点的にしぼり, 図の"読み易さ"に相当の比重をかけ, いたずらに煩瑣になることをさけた。<BR>しかし湖沼図は縮尺の制約をうけ, 多用途という基本図的性格をもつものである以上, ヒアリングやアンケートの結果をそのまま反映させるわけにはいかない。たとえば透明度や水色・水質など流動性に富み周年観測を必要とするもの, あるいは水産生物の自然繁殖地点とその優先種などの表示の希望が出されたが, これは明らかに湖沼図とは別個な調査研究の体系に属するものである。また図式の構成やレイアウトなど少なくともカルトグラフィーの範ちゆうに属する事項についても, もとよりヒアリングやアンケートの対象にはしなかった。
著者
陶山 久司 上田 康仁 松波 馨士 中崎 博文 松本 慎吾 中本 成紀 重岡 靖 小西 龍也 清水 英治 牧野 晴彦 千酌 浩樹 龍河 敏行 小谷 昌広 森田 正人 倉井 淳 武田 賢一 澄川 崇
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.403-405, 2009
参考文献数
4

背景.内視鏡的腫瘍切除に先行して経皮的動脈塞栓術(TAE)を行った気管原発腺様嚢胞癌の1例を報告する.症例.84歳,男性.気管内腫瘍の切除目的で当院に紹介となった.気管内腫瘍は前医で既に腺様嚢胞癌と診断されていた.胸部造影CTでは造影剤に濃染する腫瘤だったこと,前医での生検時に出血の制御が困難だったことから処置前にTAEを追加した.腫瘍の栄養血管は右内胸動脈の縦隔枝で腫瘍濃染を認めた.右内胸動脈縦隔枝を塞栓した後,全身麻酔下で硬性鏡を用いて腫瘍を摘除した.結語.今回の報告例では,呼吸器インターベンションに先行して行うTAEは大量出血制御目的のオプションになりうると考えられた.
著者
小谷 昌司
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

脂肪酸結合蛋白は長鎖脂肪酸の細胞内転送に関わるものと考えられているが、この蛋白質が等電点電気泳動などで多数の分子種に分離されることから、翻訳後の修飾が多型の原因となっているとともに、これが機能と密接な関係にあること予想された。我々はラット肝脂肪酸結合蛋白について、今回アラキドン酸を特異的に結合しているもっとも酸性な分子種は、アスパラギン105がイソアスパラギン酸となった新規の修飾であることを構造解析の結果同定した。また、この修飾をうけた蛋白質のリガンド結合能・プロテアーゼ感受性などの機能変化を検討し、その生理的意義の解明とこの翻訳後修飾反応に関わる細胞内因子の検索をおこなった。まず、試験管内でのイソアスパラギン酸の生成を試み、0.5M炭酸ナトリウム緩衝液中で保温するとイソアスパラギン酸105をもつ分子種が高収率で生成することがわかった。蛋白質の内部で生じるこのイソアスパラギン酸結合の検出のためメチル化とLiBH_4による還元でこれをイソホモセリンとして同定する方法を考案し、さらに、PTC化による高感度化を検討し一定の成果をえた。また、この蛋白質を細胞内因子検索のための基質とするため抗体を作成し、等電点電気泳動とウェスタンブロットの組み合わせによる検出方法を確立した。また脂肪酸をはずした蛋白質を炭酸イオン存在下で保温すると別の酸性の分子種が定量的に生成することが観察された。この分子種を分取し構造解析した結果、N末端から2番目のアスパラギンが脱アミドしたものであることが明らかになり、リガンド結合と脱アミド反応との関連を示唆する結果を得た。一方、ラット肝脂肪酸結合蛋白のシステイン69に遊離のシステインが混合ジスルフィドを形成した新しい分子種を見いだし、機能の解析を行った。また、ラット皮膚から新規に単離した脂肪酸結合蛋白質は分子内に5個の半シスチン残基をもつこれまでに見られないものでSS結合と脂肪酸結合能との関連を検討した。