- 著者
-
小野 大輔
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
昨年度は、生物発光、多電極ディッシュを用い概日時計の中枢である視交叉上核(SCN)の分散培養を行い、個々の細胞の概日リズムにCRY1/CRY2が必要ではない事を明らかとした。さらにこれらの同時測定系を用い、脱同調したPer1発現リズムと同調した電気活動リズムがCry1-/-/Cry2-/-マウスのSCNに存在することを明らかとした。さらに最近Cryl-/-/Cry2-/-マウスのSCNのPER2::LUCに減衰していくリズムが認められ、一貫した結果が得られていない。これらの原因には測定系とマウスのageが考えられる。本年度はこの原因を検証するために、発達段階におけるSCNのPerl-luc,PER2::LUCのリズムを測定した。生後1日目(P1),P7,P14,P21,adult(8-16w)のマウスからSCNを切り出しメンブレン上で培養し、SCN全体の発光リズムを測定した所、P1,P7のCry1-/-/Cry2-/-マウスのSCNからはrobustなリズムが認められたが、このリズムはP14になると減弱し、P21,adultになると消失した。これらの結果はCry1-/-/Cry2-/-マウスのSCNのリズムは生後初期に出現し、離乳するP21付近で消失する事を示す。さらにこのリズムの消失は個々の細胞の脱同調である事を発光イメージングを用いる事で明らかとした。本研究結果はCRY1/CRY2に依存しない細胞間ネットワークが存在すること、そしてこのネットワークは離乳する生後3週間で消失する事を初めて示し、SCNの新たな細胞間ネットワークにCRY1/CRY2が関わっている事を明らかとした。