- 著者
-
小野嵜 菊夫
林 秀敏
瀧井 猛将
- 出版者
- 名古屋市立大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
関節リウマチ(RA)は、原因不明の多発性関節炎を主体とする進行性炎症性疾患である。種々の研究から、関節滑膜細胞から産生されるIL-1が本疾患に重要な役割を果たしていることが明らかにされている。極めて興味深いことに、西欧では17世紀までは関節リウマチ(RA)の記載はなかった。今日、タバコとRAの関係が疫学的に証明されている。タバコはアメリカ大陸発見後にアメリカから西欧に取り入れられた。本研究は、タバコの成分や化学物質とRAとの関係を明らかにすることを目的とする。コラーゲン誘導性の関節炎(CIA)モデルを用いて、タバコの煙抽出物(CSC : cigarette smoke condensate)が関節炎の発症を増強するか検討した。実験は、DBA/1Jマウスに、不完全アジユバントに溶かした抗原(ウシII型コラーゲン)+結核死菌で初回免疫し、3週間後に抗原のみを投与し、関節の腫脹を測定するものである。初回感作時に抗原のみ、抗原+主流煙CSC、抗原+結核死菌、抗原+結核死菌+CSCの組み台わせで検討した。その結果、抗原のみに比べ、抗原+CSCで関節の腫脹が強まる傾向が見られた。また、抗原+結核死菌にくらべ抗原+結核死菌+CSCで、関節の腫脹の発生が早まる傾向が見られた。また、ヒトRA患者由来線維芽細胞様滑膜細胞株MH7Aをin vitro培養下、主流煙、副流煙で刺激したところ、共に用量依存的にIL-1α,IL-1β,IL-6,IL-8のmRNAの発現が誘導された。以上の結果は、Realtime PCR法を用いて確認された。また、TNFα刺激によるこれらサイトカインのタンパクの発現もCSC添加により増強された。また、多環芳香属化合物(Ah)の受容体(AhR)アンタゴニスト、α-ナフトフラボンを用いた実験により、これらサイトカインmRNAの誘導は部分的にAhRに依存的していること、IL-1α,IL-1β,IL-8 mRNAの発現誘導には新規蛋白質の合成が必要であることが明らかになった。