著者
尾上 圭介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

漫才、落語の音声資料を収集して文字化し、これに既存の落語活字資料を加えて、その談話構造を分析した結果、次のような見解を得た。1.落語は、(1)演者による<素材紹介>行為と(2)演者による場全体の<共感形成>行為とが重層して成立するものであり、(1)と(2)の重層は<下げ>において集約的に見られるのみならず、落語のテクスト全体において見られる。2.漫才の談話論的構造も基本的にはこれと同じである。笑う対象としての<素材>は、ボケ側の発言内容や、そういう発言をすることによってそこに形成される一つの人間像、また二人の会話の進展そのものによって構成される。それを笑うべきことだとする場の<共感形成>は、ツッコミ側の発言によって実現される。3.場全体が笑うための<素材>を効率的に構成するために、漫才において長年にわたって練り上げられた会話の運びの型がいくつもあり、その中には(A)通常の日常会話の中にもあり得る運びのタイプと、(B)漫才を代表とするような笑いの話芸の中でしか現れないような運びのタイプとが認められる。4.大阪方言では、会話を笑いにもちこむための努力と工夫が通常の会話の中でも濃厚に為される傾向が強い。それは(B)タイプの会話が日常化していると言うこともできる。5.上記(4)のことの根底には笑いを求める大阪人の気質があるが、そのような言語行動上の顕著な傾向の背後には、大阪人の気持ちの動き方、発想様式、美意識にかかわる9個の特徴が指摘できる。
著者
尾上 圭介
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2005

博士論文
著者
尾上 圭介
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.63, pp.1-26, 1973-03-31 (Released:2010-11-26)
参考文献数
22

The present paper is an attempt to describe and reorganize the usage of Japanese particles wa and ga and to give it a theoretical interpretation.The author maintains that two elements are involved for sentence formation, i. e. Sentence Kernel and Sentence Frame. Wa is one realization of the Sentence Frame and thus completes sentence formation. Ga is only a component of the Sentence Kernel. A Sentence Kernel has the semantic function as a dictum, i. e. the core material of a Sentence. It is shown that the special constraint on the usage of “near-sentences”containing ga but not any Sentence Frame follows from this hypothesis.
著者
尾上 圭介
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

漫才を中心とする話芸とテレビドラマの会話の分析によって,以下のことが明らかになった。[1]ある言語表現が,聞き手に対して何らかの言語的反応(広義応答)を要求ないし期待するというのは,なにも質問(回答要求)表現に限ったことではない。聞き手に対する積極的な働きかけの意志を帯びた表現は,以下の13種に分類することができるが,(1)命令,(2)禁止,(3)要求,(4)依頼,(5)質問,(6)相手状況評価,(7)訴え,(8)注意喚起・教え,(9)宣言・宣告,(10)同意確認,(11)勧誘,(12)あいさつ,(13)呼びかけこのすべての種類の言語的働きかけに対して,聞き手はまず言語によって反応することが普通である。この中には,聞き手の言語的反応が,聞き手の反応の中心である場合から,反応の前ぶれ的一部分である場合(命令に対する応諾など)までの幅があり,また,無言による応答という場合さえあるが,概括すれば,上記13種類の言語的働きかけは,すべて,広義応答(言語的反応)を要求,ないし期待するものだと言える。[2]上記のほかに,(つまり聞き手に対する働きかけの発話でなくても)ディスコ-スの中で,聞き手が黙っていられなくなるようにしむけるという種類の発話ー反応の型が見られる。(1)長い発話を「ネ」で切って、そこまでの聞き手の理解を確認する.(2)意外な内容を唐突に持ち出して,聞き手からの説明催促,質問などを誘い出す.(3)話し手の困惑,喜びなどの情動を表明して,聞き手の反応を誘う。(4)判断や意志決定をめぐる躊躇・逡巡を表明して,相手の援助の発言を誘い出す.これらの発話も、広義応答(言語的反応)を要求するものと言える。
著者
尾上 圭介
出版者
至文堂
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1-13, 2006-10
著者
尾上 圭介
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.63, pp.1-26, 1973

The present paper is an attempt to describe and reorganize the usage of Japanese particles <I>wa</I> and ga and to give it a theoretical interpretation.<BR>The author maintains that two elements are involved for sentence formation, i. e. Sentence Kernel and Sentence Frame. <I>Wa</I> is one realization of the Sentence Frame and thus completes sentence formation. <I>Ga</I> is only a component of the Sentence Kernel. A Sentence Kernel has the semantic function as a dictum, i. e. the core material of a Sentence. It is shown that the special constraint on the usage of "near-sentences"containing <I>ga</I> but not any Sentence Frame follows from this hypothesis.
著者
尾上 圭介
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.63, pp.1-26, 1973

The present paper is an attempt to describe and reorganize the usage of Japanese particles <I>wa</I> and ga and to give it a theoretical interpretation.<BR>The author maintains that two elements are involved for sentence formation, i. e. Sentence Kernel and Sentence Frame. <I>Wa</I> is one realization of the Sentence Frame and thus completes sentence formation. <I>Ga</I> is only a component of the Sentence Kernel. A Sentence Kernel has the semantic function as a dictum, i. e. the core material of a Sentence. It is shown that the special constraint on the usage of &ldquo;near-sentences&rdquo;containing <I>ga</I> but not any Sentence Frame follows from this hypothesis.