著者
栢原 佑輔 林 倫子 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-12, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
42

1987(昭和62)年から実施された京都鴨川の戦後の鴨川改修計画においては,背後地との調和,河川空間からの眺望景観保全などが設計内で考慮されており,その景観設計に対する評価も高い.本研究ではこの鴨川改修計画に着目し,その改修計画における景観設計の内容の変遷を明らかにした.その成果として,1) 鴨川改修協議会において検討案(1)~(4)が提示されており,検討案(1)から検討案(2)にかけての基本設計の変化が景観設計の転換点であったこと,2) その際「鴨川らしい景観」の具体化が行われ,視覚面・空間面のなじみ,調和を考慮した景観設計へと変遷したこと,3) この設計変更には,協議会における議論や設計者の自由な発想が大きく寄与していたこと,が明らかとなった.
著者
木下 朋大 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_1-II_8, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,都市のみどり回廊の分析評価指標を提案すると共に,それら評価手法を用いて緑・オープンスペース分野の政策的インプリケーションを見出すことである.第一に,空間分布・配置構造から地域の拠点となるみどりの回廊性を分析する為,みどりの近接性指数(GA)と連担性指数(GS)を,第二に,歩行空間に沿った生活動線上のみどりの回廊性を分析する為,歩行経路選好性指数(UWT)を提案した.神戸市住吉川周辺地域でのケーススタディを通して,(1)既存公園の比較的近く(誘致範囲の3倍以内)であれば小規模であっても公園を創出することでみどりの近接性が高まること,(2)ある公園を行動の起点とし,人々の移動ベクトルを外向きと仮定したとき,既存公園の誘致範囲(250m)毎に複数の公園を設置することで,みどりの連担性は大きく向上すること,(3)快適性や安全性とトレードオフ関係にあると考えられる最短性や安全性を損なわない経路を創出することが,街路整備を通してみどりの回廊を形成する上で留意する点であることを確認した.
著者
寺田 光宏 石垣 泰輔 尾崎 平 戸田 圭一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_1363-I_1368, 2019

<p> 近年,大雨による浸水被害が増加しており,大阪や東京等の都市部では,地下浸水が発生する可能性がある.浸水対策が十分でない場合,地下鉄に侵入した洪水が地下鉄のトンネルを通って広がることになる.本論文では,地下鉄利用者のための避難リードタイムを,排水システム,地上及び地下空間を含む数値モデルを用いて調査した.地下鉄における浸水被害者の数を数値的に推定し,地下鉄駅の脆弱性について議論した.その結果から,避難リードタイムと各駅の浸水に対する脆弱性が示された.これらの結果は,地下鉄事業者が避難計画を立てるために重要である.</p>
著者
寺田 光宏 石垣 泰輔 尾崎 平 戸田 圭一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1465-I_1470, 2018

東京,名古屋,大阪等,日本の低地の都市にはたくさんの地下鉄と地下駅が存在する.本論文では,数値解析を用い,大阪中心部の地下街,地下駅,15本の地下鉄路線を含む内水氾濫の解析を実施した.氾濫解析結果から,氾濫水が地下鉄トンネル内を迅速に広がることがわかった.特に,新路線のなにわ筋線において,梅田地区から新大阪駅へと氾濫水は広がることが確認できた.また,大野処理区では十三駅や新大阪駅周辺で浸水が発生することが確認できた.
著者
山口 徹也 森川 雄貴 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_229-II_236, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
12

本研究では,電力負荷平準化による需要家の経済的便益という側面に着目して,電力負荷とPV出力の2つの変動を表すモデルを適用し,PV・BTシステムを設置・稼働した場合の費用効果を算定するモデルを構築した.産業工場の屋根にPVを設置し,BTからの放電をピークカットに用いた場合のパフォーマンスを表すモデルを用い,確率分布を推計し,分析評価を行った.現在のPV,BT価格を前提とした費用効果算定では,総支払額の削減には程遠いという結果となった.PVは現在価格の0.50倍になってもそれを導入することの費用効果がプラスに転じることはないが,BTの現在価格の0.8倍より下がると費用効果がプラスに転じる点が初めて現れた.PVとBTを組み合わせて導入する場合,価格低下が進むにつれて,需要家に費用効果がマイナスになることなく導入できるPVの容量が大きくなることがわかった.また,契約電力超過確率10%程度まで許容すれば,超過による罰則金を支払い,契約電力を削減した利得を多く得られなくとも,PV・BT容量を抑えて,導入費用を低減させる方が費用効果が大きくなることがわかった.
著者
森川 雄貴 野田 圭祐 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.II_239-II_246, 2013 (Released:2014-03-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究では,街区・地区レベルでのPV-BTシステム導入による費用効果を算定するモデルを構築し,街区・地区レベルの電力需給マネジメントの単位(空間と用途)を変えることによる負荷平準化効果の違いを定量化することを目的とした.神戸市旧居留地区を対象に検討した結果,以下の4点の結論を得た.1)PV-BTを0.17[kW/100m2]導入し,地区全体で電力マネジメントを実施することによる最大電力負荷の低減効果は,導入前に対して1.2%程度であった.この低減効果はPV-BT導入量に関わるため,評価尺度をPV-BT導入量に対する削減率で表現すると70%程度と大きな効果が見られた.2)PV-BT導入量を変化させた場合の年間純便益は,地区へのPV-BT合計導入量が単位面積当たり0.25[kW/100m2]程度で最大となり,それ以上は低下する.3)用途混合度が異なる街区別のピーク負荷低減効果を明らかにしたとこら,住居系の混合割合が高い場合,住居系のピーク生起時刻が事務所系・商業系と離れているためにPV-BTによるピーク負荷低減効果が相対的に小さくなる.4)事務所系と商業系のみが混合している街区では,電力需要が標準偏差分だけ大きくなる方に変移した場合,BTによるピーク負荷低減効果は相対的に高くなる.