著者
林 倫子 藤原 剛 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.187-197, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

現在の京都御苑周辺に歴史上設けられた数多くの園池へは,禁裏御用水が供給されていた.本研究では,広域的な導配水システムとしての禁裏御用水に着目し,その流路構造や付帯施設を歴史的資料を用いて明らかにした.その結果,禁裏御用水の4つの施設面の特徴とマネジメントルールを抽出し,禁裏御用水が水の安定供給に加えて上流の田畑と下流の園池での水の共用にも配慮していたことを示した.更に,各園池への導水経路を検証し,水の引き込み方の特徴として,相国寺開山塔庭園の特殊性と御溝水の自由度の高さを指摘した.
著者
林 倫子 神邊 和貴子 出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.246-254, 2010

本研究は,明治・大正期に鴨川の河川空間が官有地となり京都府の管理下にあった時期を取り上げ,官有地利用に関する行政文書など当時の史料の読み取りを通じて,料理屋・貸座敷営業者による先斗町の鴨川河岸地と堤外地の土地利用の仕組みを解明した.その結果,[1]当時の先斗町の鴨川官有地は,営業者にとって付加価値の高い場所として認識されていたこと,[2]先斗町の営業者は,河岸地を宅地として隣接する民有地と一体的に利用しており,その地先に当たる堤外には高床構造や床几構造を設け,それぞれ別の契約によって官有地を借用していたこと,[3]営業に用いる河川構造物は営業者が私費を持って設置・修繕を行っており,京都府は一定の節度を持ってその可否決定をなすことで鴨川の河川環境を管理していたことが明らかになった.
著者
柴田 昌幸 高森 頼雪 江川 優子 山口 智央 中川 慧人 中村 めぐみ 大江 啓史 成田 圭 田中 由理子 小林 倫子 三科 友二 三科 雅子 明石 雅博 笹本 貴広 土屋 昭彦 西川 稿 横田 亜矢 杉谷 雅彦 滝川 一 山中 正己
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.327-332, 2021-05-01 (Released:2021-05-14)
参考文献数
16

症例は38歳女性.X月1日に友人との食事会でマカダミアナッツを多量に摂取した.翌日から悪心・嘔吐が出現し,徐々に倦怠感,褐色尿,皮膚黄染も伴ってきた.症状改善ないためX月9日に前医受診し,急性肝炎と診断され入院.各種ウイルスマーカーや自己抗体は陰性で,画像検査で器質的異常も認めず入院後も肝機能は増悪した.X月15日に当院転院し,PTが40%未満に低下したためステロイドパルス療法を開始したが,意識障害も出現し状態は悪化した.血漿交換および持続緩徐式血液濾過透析を施行し,計6回の血漿交換後より肝機能は正常化傾向となった.集中治療を脱し,状態が安定してから肝生検を施行したが非特異的な組織像であり,マカダミアナッツのリンパ球刺激試験を実施したところ強陽性で薬物性肝障害と診断した.治療離脱後も問題なく経過し,第46病日に退院となった.食品から劇症肝炎に至り救命された症例は極めてまれであり報告する.
著者
林 倫子 篠原 知史 大坪 舞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.21-36, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
64
被引用文献数
1 1

本研究では,大阪中之島公園の起源ともいえる山崎ノ鼻「公園地」に着目する.「この『公園地』は,豊國神社境内地造営と一体的に,大阪府によって計画・整備された門前の盛り場であった」という仮説を設定し,この仮説に関する3つの傍証,すなわち(1) 境内の隣接地に「公園地」が必要とされた理由,(2)両事業の主体・時期の重なり,(3) 開設直後の「公園地」施設とその利用実態,を示した.さらにこの「公園地」の制度上の位置づけや公園制度との関係についても考察した.「公園地」は公共の管理する盛り場であるという意味で最初期の公園と同じ場所であったが,近代土地制度上は道路施設の一部として位置づけられていたこと,西洋的公園観の広まりとともに「仮公園」との併存を経て,正式な公園に編入されたことを示した.
著者
栢原 佑輔 林 倫子 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-12, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
42

1987(昭和62)年から実施された京都鴨川の戦後の鴨川改修計画においては,背後地との調和,河川空間からの眺望景観保全などが設計内で考慮されており,その景観設計に対する評価も高い.本研究ではこの鴨川改修計画に着目し,その改修計画における景観設計の内容の変遷を明らかにした.その成果として,1) 鴨川改修協議会において検討案(1)~(4)が提示されており,検討案(1)から検討案(2)にかけての基本設計の変化が景観設計の転換点であったこと,2) その際「鴨川らしい景観」の具体化が行われ,視覚面・空間面のなじみ,調和を考慮した景観設計へと変遷したこと,3) この設計変更には,協議会における議論や設計者の自由な発想が大きく寄与していたこと,が明らかとなった.
著者
林 倫子 神邊 和貴子 出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.246-254, 2010

本研究は,明治・大正期に鴨川の河川空間が官有地となり京都府の管理下にあった時期を取り上げ,官有地利用に関する行政文書など当時の史料の読み取りを通じて,料理屋・貸座敷営業者による先斗町の鴨川河岸地と堤外地の土地利用の仕組みを解明した.その結果,[1]当時の先斗町の鴨川官有地は,営業者にとって付加価値の高い場所として認識されていたこと,[2]先斗町の営業者は,河岸地を宅地として隣接する民有地と一体的に利用しており,その地先に当たる堤外には高床構造や床几構造を設け,それぞれ別の契約によって官有地を借用していたこと,[3]営業に用いる河川構造物は営業者が私費を持って設置・修繕を行っており,京都府は一定の節度を持ってその可否決定をなすことで鴨川の河川環境を管理していたことが明らかになった.
著者
林 倫子 林 孝弥 出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
土木学会
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13484346)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.59-65, 2009-06

Kamigamo Shake-machi in Kyoto has a historic water system consisted of canal network and old ponds in residential sites of Shinto priests. This study aims to clarify its transition since the Meiji era. The location of canals and ponds were investigated chronologically through the reference of old maps and a series of interviews with inhabitants in Shake-machi today. The major results are the followings: a) Water supplied by water system in Kamigamo Shake-machi has been used for domestic use and irrigation use. b) There were a total of 50 ponds supplied from water system. c) Today the water is supplied to only about half of 50 ponds. d) Seven ponds were constructed after the Meiji era. e) The number of surviving ponds varies from area to area. It depends on the development control and feature of water system.
著者
林 倫子 濱田 美知瑠
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.409-412, 2023-03-31 (Released:2023-05-12)
参考文献数
22

This study focuses on the "Jingu Forest Management Plan" of Ise Jingu Shrine formulated in 1923, and clarifies the zoning method of shrine forests in the plan and the origin of the landscape conservation philosophy on which the plan was based, especially the values that emphasize the view of the shrine forest from the outside of the shrine area. As a result, it was found that the shrine forest zoning method of the plan was very similar to the management method of Shintairin (sacred shrine forest), which was discussed in the "Shaji Fuchirin Ron (Management Theory of Shrine and Temple Forest)" by Honda Seiroku, and was considered to be the origin of the zoning method. The landscape conservation philosophy as the basis for shrine forest zoning of the plan was different from the forest management concept of the 1912 shrine forest survey report. Rather, it is thought to have been created under the influence of the shrine city planning that was underway at the same time, and it is possible that the zoning of the Jingu Shrine forest was a milestone in protection of the view from the city area to the Jingu Shrine, with a view toward the future designation of the adjacent mountainous area as scenic districts.
著者
林 倫子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.26-36, 2015 (Released:2015-04-20)
参考文献数
105

明治期までの鴨川納涼では,今日見られるような高床納涼席が沿岸に設置されるだけでなく,中州や橋の下など川中全体に盛り場としての納涼場が形成されていた.本研究では,納涼営業に関する制度面,物理環境面に着目して伝統的な納涼場の廃止までの変遷を追い,鴨川納涼場の変質をもたらした要因について考察した.その成果は以下のとおりである:1)官有地借用制度の変更と規制の強化が行われ,2)鴨川運河工事に伴う河床掘削で出店が敬遠され,構造規制の議論も始まった.3)それと同時に納涼場は徐々に衰退し,博覧会的要素導入という再興策も講じられたものの定着しなかった.
著者
林 倫子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.53-67, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
90
被引用文献数
2

宇治川電気株式会社(宇治電)による宇治川水力発電事業第一期工事では,初期の設計変更により水槽と水圧鉄管が平等院の宇治川対岸にあたる仏徳山(隣の朝日山含む,宮山とも表記される)の山腹に設けられることとなり,景勝地宇治の風致毀損が問題となったものの,本多静六による「風致復旧設計」により解決を見た.本研究では,同工事における風致対策の検討過程を明らかにした.その結果,宇治の風致対策として,本多案とは異なる方針や具体的手法が宇治電や地元保勝会より提案されていたこと,また大森鍾一京都府知事の意向が強く反映されて風致対策が決定されていたことが明らかとなった.
著者
林 倫子 神邊 和貴子 出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.246-254, 2010 (Released:2010-05-20)
参考文献数
23

本研究は,明治・大正期に鴨川の河川空間が官有地となり京都府の管理下にあった時期を取り上げ,官有地利用に関する行政文書など当時の史料の読み取りを通じて,料理屋・貸座敷営業者による先斗町の鴨川河岸地と堤外地の土地利用の仕組みを解明した.その結果,[1]当時の先斗町の鴨川官有地は,営業者にとって付加価値の高い場所として認識されていたこと,[2]先斗町の営業者は,河岸地を宅地として隣接する民有地と一体的に利用しており,その地先に当たる堤外には高床構造や床几構造を設け,それぞれ別の契約によって官有地を借用していたこと,[3]営業に用いる河川構造物は営業者が私費を持って設置・修繕を行っており,京都府は一定の節度を持ってその可否決定をなすことで鴨川の河川環境を管理していたことが明らかになった.
著者
林 倫子 森 彩乃 大窪 健之 金 度源
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.99-109, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
20

水システムは地域の社会基盤として不可欠のものであり,その地域の生活や生業,そして景観を特徴づけるものである.本研究では,ヒアリング調査をもとに,現役の古式水道である交野市倉治の「取り水」の歴史と現在の利用実態を明らかにした.その際には,高島市勝野をはじめとする他地域の古式水道と比較しつつ,システムの特徴を地域横断的視点でも記述した.主な成果として,歴史に関しては,竹管や松材を利用した初期の取り水施設とその維持管理に関する地域知,施設と運営組織の近代化過程が確認された.現在の利用実態に関しては,住居内利用の場合,水質に対する意識に応じて利用用途に差が見られたこと,供給量の少なさと不安定さを克服するために貯水設備や上水道のバックアップ設備を住宅に備えていることが明らかとなった.